自責点1の好投も実らず敗戦投手となった今永は、「エースと呼ばれる存在になるには、1対0の試合を投げ勝たないと。負けた投手の名は残らない」とコメント。
開幕直後(4月5日)のコメントだが、プロ入りしたばかりとは思えない、ルーキー離れした言葉の力を披露した。
開幕から好投を続けるも、味方の援護なく連敗した状況についてのコメント。
「味方の援護がなかった」ことを言い訳にしてもいいのは、完璧な仕事をした投手だけ、という今永の志の高さが感じられる。
4月29日の阪神戦、6回を3安打に抑えるも2失点で敗戦。相手投手も自軍中継ぎ陣も粘投するなか、踏ん張りきれなかった試合で残したのがこのコメントだった。
自身の悔しさだけで我を失わず、周りを評価できる客観性が素晴らしい。
シーズン開始当初からの惜敗が続くなか、プロ初勝利を収めた日のコメント。
自身との内なる戦いに勝利した結果、試合に勝利できた、というそれまでの今永の苦しみや葛藤が感じられる秀逸な言葉だ。
「この日の勝利はたまたまの方が強い。でも、たまたま勝っても続かない」という趣旨を述べたコメント中の言葉。
勝利には理由がある。本当に勝てる投手であるからには、その理由を説明できなければいけない、という意味を表している。勝利や投球に対する理想の高さがうかがえる言葉だ。
8月14日、広島戦で喫した惜敗を振り返ってのコメント。
交流戦後、2軍での調整が続き、焦りもあっただろう。そんな停滞を吹っ切るように、今永は8月7日の中日戦で勝利。その勝利を受けて「人生を変える試合と位置づけていた」と語っていた。
ちょっとおおげさに聞こえるが、今永が常に自身の投手人生と向き合っている様がみてとれる。
その翌週、惜敗した後に残したコメントがこの「ルーキーにしては頑張ったね、ではいけない」だった。
ルーキーイヤーをそこそこで終わらせたくない。そう自分を厳しく律する姿勢が感じられるコメントである。なんとか勝ち星を2ケタに乗せ、新人王を手中に収めてもらいたい。
文=元井靖行(もとい・やすゆき)