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金属バット導入後初のノーヒットノーランは工藤公康。落球劇に絡んでいた糸原健斗〜夏の甲子園トリビア

文=勝田聡

金属バット導入後初のノーヒットノーランは工藤公康。落球劇に絡んでいた糸原健斗〜夏の甲子園トリビア
 49地区の代表が出揃い、いよいよ夏の甲子園が始まる。101回目を迎える甲子園大会には選手、学校にまつわるエピソードやトリビアがあり、話題には事欠かない。今回は夏の甲子園にまつわるトリビアを紹介する。

金属バット導入後、初のノーヒットノーランを記録したのは?


 夏の甲子園でノーヒットノーランは23回生まれている。昨年の100回大会までに23回ということは単純計算で4年に1回程度達成されるということだ。

 しかし、歴史を紐解くと近年、その数は少ない。最後に夏の甲子園でノーヒットノーランを達成したのは横浜高の松坂大輔(中日)で、それは1998年のことである。20年以上にも渡り、偉業が生まれていないことになる。

 大きな要因の一つには金属バットの導入が考えられる。今となっては当たり前の金属バットだが、甲子園の舞台で解禁されたのは1974年のこと。それ以降は松坂を含め、5人しか達成していない。このことからも金属バット導入後のノーヒットノーランがいかに難しいかが、よくわかる。

 なお、金属バット導入後に初めてノーヒットノーランを達成したのは、名古屋電気高(現・愛工大名電高)の工藤公康(元西武ほか)だ。1981年夏の大会初戦で、工藤は長崎西高相手に偉業を達成。一気に注目を浴びる存在となった。

 金属バット導入後に夏の甲子園でノーヒットノーランを初めて達成したのは工藤、これを憶えておきたい。

菊池雄星は春の敵を夏で討つ


 今シーズンからMLBに移籍した菊池雄星(マリナーズ)は、花巻東高時代から大きく注目されていた。その要因は2009年春の甲子園における準優勝だ。菊池は決勝で清峰高の今村猛(広島)と投げ合い0対1と惜敗。しかし“敗れて尚、強し”の印象を与え岩手に戻った。

 迎えた同年夏の甲子園。リベンジすべき相手の清峰高、そして今村の姿はなかった。長崎大会で敗れ去っていたのだ。今村率いる清峰高を下し、甲子園の舞台にやってきたのは長崎日大高だった。エースは今シーズンも広島で活躍する大瀬良大地である。

 菊池は“春の甲子園で敗れた今村を破った大瀬良”と甲子園の初戦で激突した。大瀬良は7回途中4失点、菊池は完投するも5失点。両投手ともに打ち込まれた。試合は花巻東高が8対5で勝利。菊池は直接ではないが、今村にリベンジを果たしたのである。

 2009年夏の甲子園ではこのような“縁のある試合”が行われていたのである。あれから10年たった今、菊池は海を渡り、大瀬良と今村は広島でチームを支えている。

 ライバルたちの歴史を紐解くのも面白い。

開星対仙台育英でヒーローになりそこねた男


 開星高時代に「ジャイアン」と呼ばれ、プロ入り後はソフトバンク、そしてDeNAでプレーした白根尚貴。この白根が全国的に有名になったのは、2010年夏の甲子園3回戦のことだった。多くの高校野球ファンが記憶している落球劇。そう、開星高対仙台育英高の試合である。

 実はこの試合で後のプロ野球選手がもう一人、劇的な場面に絡んでいた。阪神で主将を務める糸原健斗だ。

 落球劇の起きたこの試合の9回を振り返る。開星高が5対3と2点のリードで迎えた9回表。マウンド上の白根は1点を失い、尚も2死満塁とピンチが続く。

 この場面で白根は次打者を平凡な中飛に打ち取った、かに見えた。現に白根はガッツポーズを繰り出していたこともそれを物語っている。しかし、中堅手がまさかの落球。2者が生還し5対6と逆転を許してしまう。

 1点を追いかける形となった開星高は、その裏2死一、二塁とチャンスをつくる。この局面で打席に入ったのが糸原だった。糸原は左中間へ長打性の大きなあたり。抜ければ逆転サヨナラだったが、左翼手が渾身のダイビングキャッチ。ボールはグラブに収まり、仙台育英高が勝利したのである。

 この試合は開星高の白根と中堅手、そして仙台育英高の左翼手の3人がクローズアップされることが多い。ガッツポーズ、落球、チームを救うダイビングキャッチと考えれば、当然かもしれない。最後の最後にあわやサヨナラの打球を放ったのが、糸原だったことは忘れられがちである。

 高校時代に甲子園でサヨナラ打を放つことができなかった糸原は、プロ入り後に2度のサヨナラ打を放っている。みごとに高校時代の無念をプロの舞台で果たしたのである。

文=勝田聡(かつた・さとし)

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