正捕手にして主将の嶋基宏の故障離脱は、過去2年、楽天がBクラスに沈んだ要因の1つになっていた。
2015年は嶋が離脱した17試合でチームは勝率.313と大きく失速。昨シーズンは代役の足立祐一が奮闘したが、それでも不在の43試合で勝率.442だった。
それだけに今回の離脱は、投打のかみ合う好調・楽天にとって「正念場」になりそうだ。
今シーズンの嶋は2月のキャンプで右ふくらはぎを痛め、3月にはWBCを涙の出場辞退。オープン戦も7試合の出場にとどまり、調整不足が心配された。
しかし、開幕戦からは扇の要としてスタメンマスクをかぶり続け、投手陣の好投を引き出し、主将として快進撃を支えてきた。
打順は主に9番を任され、下位からの流れを作る重要な差配を担っている。2番から外国人トリオを並べる超攻撃的打線にあって、右打ち、犠打、粘り打ちなど「小技のデパート」というべき嶋の渋い働きが、とにかく光るのだ。
12犠打は両リーグ最多。そのうち11犠打を2球目以内に確実に決める優れた精度で、バント成功率は92.3%の高さを誇っている。早々に2本のスクイズも決めた(バント安打を含む)。
投手戦になった4月15日の日本ハム戦では、スコアレスの均衡を破る先制のスクイズを決め、ゲームを動かしている。
出塁率ももの凄いことになっている! お得意の待球姿勢での粘り打ちと確かな選球眼は今シーズンも健在だ。
打率はリーグ28位の.217ながら、出塁率は同11位の.393。安打以外の出塁率を表す「IsoD」は、柳田悠岐(ソフトバンク)の.198に続く同2位の.176という好成績を記録している。
73打席で選んだ四球は、三振7個を上回る14個(押し出しの四球2個を含む)。そのうち11個は一度もバットを振らずに一塁に歩いている。後ろに茂木栄五郎、ペゲーロが控えているためか、相手投手が嶋に対して投げにくそうにするシーンが目立つのだ。
象徴すべきシーンが、4対2で勝利した4月25日のロッテ戦で見られた。1点を返され、2対1と1点差に詰め寄られた直後の4回のこと。ロッテの先発・西野勇士の前に2者が凡退。2死無走者でまわった打席だった。
嶋はここで一度もバットを振らず、フルカウントから四球をもぎ取って出塁。後続の茂木も同じくバットを振らず四球を選ぶと、2死一、二塁でペゲーロの適時打を呼び込んだ。
攻守で重要な役どころを担っていた嶋の離脱は確かに痛い。しかし、梨田昌孝監督が言うように、みんなでフォローし合い、主将の復帰を待ちたい。
(成績は5月1日現在)
文=柴川友次
NHK大河「真田丸」で盛り上がった信州上田に在住。真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドに見える楽天応援の野球ブロガー。各種記録や指標等で楽天の魅力や特徴を定点観測するブログを運営中。