高校野球は現在、地方大会の真っ最中。甲子園出場を目指して、全国各地で球児たちは熱戦を繰り広げている。その球児たちのなかで、最も注目を集めている選手の一人が、名門・早稲田実業(西東京)の1年生・清宮幸太郎だ。なぜ注目されているのか? その生い立ちとともに紹介しよう。
1999(平成11)年5月25日、東京都で生まれた清宮幸太郎は、小学2年生の時に軟式野球チーム「オール麻布」で本格的に野球をはじめた。4年生時には「東京北砂リトル」に移り硬式野球へ転向。2012年8月のリトル世界選手権に出場して、世界中から注目を浴びるようになった。
それもそのはず、4番・エースとして打っては特大本塁打、投げては130キロに迫るストレートを武器に三振の山を築いた清宮。5試合で3本塁打を放ち、チームの世界一に大きく貢献。米国の解説者が「和製ベーブ・ルースだ!」と叫び、伝説の強打者を引き合いに出すほど、その活躍は世界に衝撃を与えた。
中学に進んだ後は「調布リトルシニア」で打者に専念。全国優勝を果たした後、鳴り物入りで今春、早稲田実業学校に入学した。日本球界の将来を担う可能性を持つ、逸材中の逸材である。
野球の実力もさることながら、清宮幸太郎の家族構成も話題を集めている。父はラグビーのトップリーグ・ヤマハ発動機ジュビロの清宮克幸監督。学生時代は早稲田大ラグビー部で活躍し、当時からリーダーシップを発揮し、チーム牽引してきた。後に早稲田大ラグビー部監督に就任し、5年間で3度の日本一に導いた名将でもある。母の幸世さんは、慶應義塾大のゴルフ部で主将を務めたスポーツウーマン。祖父の幸一さん(克幸氏の父)は、過去にプロ野球界でドラフト候補に名前があがったこともあるという。
13歳の時には183センチ93キロと、プロ野球選手クラスの体躯を誇っていた清宮幸太郎の立派な体格は、そんな家族構成にも理由があったかもしれない。また、両親の考え方から、幼いうちに数多くのスポーツを経験。ラグビーはもちろん、水泳やテニス、陸上、スキー、相撲などなどに触れながら、最も力を発揮できたのが野球だった。
5歳の時にはバッティングセンターでホームランのボードにぶち当て、小学1年生時には130キロのマシンを打ち返すなど、数々の伝説を持っている。前述したリトル時代には、通算132本ものホームランをかっ飛ばしているのだ。
今春、都大会で高校野球デビューを果たした清宮幸太郎は、4月9日の駒大高戦で決勝タイムリーを放つなど、6日に入学式を終えたばかりの1年生とは思えない活躍ぶりで全国の高校野球ファンにその名を知らしめた。
その噂を聞きつけ、準々決勝・関東一高との試合が行われた神宮第二球場には、ほぼ満員の5500人もの観客が訪れた。そこで、高校初本塁打となる、一時逆転となる3ランを放った。
その春以上のフィーバーが予想されるのが、今夏の西東京大会だ。7月4日に開会式が行われた際は、主催社側も異例の措置。混乱を避けるため、球場への出入りは特別通路を使用し、開会式終了後は特別に、報道陣向けに異例の囲み取材の時間も設けられた。
その清宮幸太郎が出場する早稲田実業の初戦の相手は東大和南高。7月16日、八王子市民球場で9時プレイボール予定だ。果たして、1年生ながら大注目を集める清宮幸太郎がどんな夏を演出するか、初戦から目が離せない。