昨季、涌井秀章(ロッテ)が3暴投を記録し、通算暴投数が74に。2017年終了時点の歴代12位から、一気に8位タイまでジャンプアップした。
暴投と、(いい意味での)荒れ球は紙一重で、捕手が止められないほどの悪球は、あるときには打者に恐怖を与える武器となり、またあるときには自滅のきっかけともなってしまう。
そんな暴投使い(?)たちの歴代ランキングは以下の通り。
■NPB暴投ランキング10傑
1位:村田兆治(元ロッテ)/148暴投
2位:石井一久(元ヤクルトほか)/115暴投
3位:新垣渚(元ソフトバンクほか)/101暴投
4位:前田幸長(元ロッテほか)/84暴投
5位:工藤公康(元西武ほか)/81暴投
6位:川口和久(元広島ほか)/79暴投
7位:槙原寛己(元巨人)/75暴投
8位:星野伸之(元オリックスほか)/74暴投
8位:伊良部秀輝(元ロッテほか)/74暴投
8位:涌井秀章(ロッテ)/74暴投
(※記録はNPBでのもの)
ほかを引き離してダントツの「暴投王」は村田兆治(元ロッテ)だ。村田といえばフォーク。ときに指のかかりが悪くて暴投となってしまったこともあっただろうが、落差が鋭すぎて捕手が止められず暴投と判定されたケースも少なくなかったはず。与死球、与四球のランキングはともに歴代8位であることから、決して制球難ではなかったことがわかる。
なお、上記のベストテン投手のなかで、200勝を突破しているのは村田(215勝)と工藤公康(224勝)のみで、最多勝と最優秀防御率のタイトルを両方獲得したことがあるのは、村田と伊良部秀輝の2人だけ。やはり歴史的な名投手だ。こだわりを持っていた184完投は、歴代16位タイでもある。
2位の石井一久(元ヤクルトほか)は、メジャーでも4年間で22の暴投をかましており、日米トータルでは137となる。あと何年か現役を続けていたら村田を抜いていたかもしれない。
スピードがあって荒れ球のサウスポー。しかし、強烈なスライダーがあるので腰が引けていては勝負にならない。打席で恐怖を感じつつ石井と対峙していた左打者は多かったようだ。
3位の新垣渚(元ソフトバンクほか)は、150キロ超のストレートと、鋭く曲がるスライダー、落差のあるフォークが持ち味で、それらを駆使し2年目の2004年には177奪三振でタイトルも獲得している。
しかし、パワーがあり余っていたせいか、コントロールに苦しむようになり、2007年には年間25暴投(2007年)の日本記録を達成してしまう。引っ掛けるようなワンバン投球や、すっぽ抜けの高投などが目についた。
なお、年間暴投数の2位は石井の20(1998年)で、3位は村田の17(1990年、ほかに酒井弘樹[元近鉄ほか]も1996年に17暴投を記録)。やはり村田、石井、新垣の3投手が「暴投三銃士」ということになりそうだ。
ちなみに、NPBの暴投数ランキング40位までの投手(全41人)のうち、何イニングに1回、暴投を放っているかを計算してみると、1位は約101イニングに1球の金田正一(元国鉄ほか、通算55暴投)となる。2位の梶本隆夫(元阪急、通算53暴投)が約79イニングに1球なので、ダントツで暴投しない、という素晴らしい数字。どんなランキングにも顔を出してくるカネやん恐るべし、だ。
「暴投三銃士」は、村田がワースト12位で約23イニングに1回、石井がワースト6位で約19イニングに1回、新垣がワースト2位で約11イニングに1回。最下位(=隠れ暴投王)は、永川勝浩(広島、同53暴投)で約10イニングに1回となった。永川は12月で38歳となったが、今シーズンも現役を続行。2015年以降は暴投ゼロが続いており、今後のパフォーマンス次第で、さらなる数値改善が可能。隠れ暴投王からの脱出に期待したい。
文=藤山剣(ふじやま・けん)