ひと昔前に比べて選手寿命が伸びているとはいえ、30代後半まで現役を続けるのは簡単ではない。
そんななか、投手の「36歳・酉年男」の筆頭として挙げたいのが和田毅(ソフトバンク)。昨季は、メジャーからプロ野球復帰直後に最多勝と最高勝率のタイトルを獲得。今季も期待したい。
今オフには同じ「松坂世代」の新垣渚(元ヤクルト)、久保裕也(元DeNA)ら同級生が次々と引退していったが、和田に至っては衰える気配がない。新垣と久保がともに5月生まれだったことを考えると、「早生まれ」が功を奏しているのかもしれない。
「松坂世代」の酉年選手では、館山昌平(ヤクルト)も気になる。昨季はシーズン開幕後、早々に手術をしたことで登板数は10試合、勝ち星は1勝(4敗)に留まった。
館山の結果は体調次第。それだけに術後に投げることができたのは、今季に向けてのいい傾向と見ていいだろう。石川雅規に次ぐヤクルトのベテランとして、まだまだ存在感を発揮してもらいたい。
また4月以降に生まれた酉年の投手のなかで、気になるのが岸田護(オリックス)。昨季は開幕戦から打ち込まれて、16試合で防御率7.90と散々な成績に終わった。
2010年から2015年にかけて、毎年30試合以上に登板した勤続疲労が出てきたのかもしれない。しかし今季は年男の運気に乗って、心機一転の巻き返しを見せてほしい。
年男の野手で筆頭注目株は糸井嘉男(阪神)だろう。2015年に6年間続いていた打率3割台が途切れ、盗塁数も激減。急激な成績の下降に「終わったか?」と思う向きもあったが、昨季は35歳にして盗塁王を獲得。ド派手な復活劇をやってのけた。
節目の年に着目するなら、年男となる今季に復活劇をずらしてほしかったが、それはドラマを狙い過ぎか。とはいえFAで移った新天地・阪神でどこまで活躍できるか。鳥のように飛ぶスーパーマン・糸井から、まだまだ目が離せない。
そして、同じく阪神で年男を迎える鳥谷敬も、今季見ておくべき選手の1人。
昨季の鳥谷は、本塁打と盗塁こそ2015年を上回ったものの、打率や出塁率、安打数などほかの部門では軒並み数字を落とした。信じられないエラーを繰り返すなど守備も怪しくなってきただけに、今季次第では去就問題に発展する可能性もゼロではないだろう。
連続試合出場は辛うじて続けているが、結果を出せないベテランを使い続けるのも難しい。しかし幸い(?)にも成績をV字回復させた糸井が移籍してきたのだから、彼を参考にしない手はない。復活を期す!
一方、パ・リーグの酉年野手では、田中賢介(日本ハム)が今季もどこまでやれるか見てみたい。メジャーから1年で復帰すると、定位置の二塁手へすっぽりと収まり、昨季はフル出場も達成。スタッツ的にもまだまだ元気だ。
日本ハムはほかのポジションにどんどん若手が台頭しているが、二塁手はなかなか代替わりできていない。しかし、田中にはいい意味で「空気を読まないベテラン」になって、若手にとっての高いハードルであり続けてほしい。そのためにも、年男が契機になりますように。
36歳というと、世間一般では中堅・働き盛りというイメージだが、プロ野球界ではいいベテラン。とはいえ、和田や糸井のようにガンガン活躍する選手もいるわけだから、まだまだ働いて、たくさんお金を稼ごう。
年男は12年に1度しかない記念の年。それだけに今季は老け込むことなく、前向きな気持ちでプレーしてほしい。
ちなみにメジャーへ目を移すと、岩隈久志(マリナーズ)と川崎宗則(カブス)の名前も挙がる。アメリカに年男という概念はないので、彼らにはテレビを通して、日本からめでたい「酉の念」を送ろうと思う。
文=森田真悟(もりた・しんご)