ポストシーズンが始まったプロ野球は残すところあとわずかとなった。今シーズンも予想以上の活躍を見せたチームや個人は多い。独断ではあるが、連載企画「新発見! 野球太郎的成功&失敗の法則」の第3回では、ベテランの古巣復帰と、「3割、30本、100打点」をテーマに成功の法則を探ってみた。
昨シーズン96敗、借金51と大きく負け越したヤクルトが、今シーズンは2位に躍進。本拠地・神宮球場でCSファーストステージを戦ったが、その要因は複数ある。
セ・パ交流戦で球団史上初の最高勝率を勝ち取る原動力となった石山泰稚、近藤一樹ら中継ぎ陣の奮闘。3度目のトリプルスリーを達成した山田哲人の復調、バレンティンの活躍。また、小川淳司監督をはじめ宮本慎也ヘッドコーチ、石井琢朗打撃コーチ、河田雄祐外野守備走塁コーチら新しくチームに加わった首脳陣の手腕。それこそ挙げればキリがない。
そのなかでも、最も大きかったのが7年ぶりに復帰した青木宣親の存在だろう。打率.327にキャリアハイとなる67打点の成績はもちろん、強いリーダーシップでチームを引っ張った。やはり、メジャーリーグで結果を出したレジェンドの古巣復帰は大きな力となったはずだ。
過去、青木のようにベテランとなってから古巣へ復帰し、チームを蘇らせたケースは他にもある。今シーズン、チーム史上初のセ・リーグ3連覇を達成した広島もそうだ。
2015年にFAでチームを去った黒田博樹、新井貴浩が復帰。成績はもちろん、精神的支柱として若手を引っ張った。その成果もあり2016年に5年ぶりの優勝を決めた広島は、黄金時代を迎えている。
松井稼頭央も今シーズンから古巣の西武に復帰。手続き上のコーチ登録はなくなったものの、テクニカルコーチ兼任として、辻発彦監督と選手の間に立ちチームを支えてきた。もちろん、選手達たちの活躍があってこその今シーズンのリーグ優勝だが、ベテランの松井がチームに与えた影響は大きい。
このようにベテランが晩年に古巣のチームへ復帰することで、チームが生き返るケースは多いのだ。来シーズンは岩隈久志がマリナーズを退団し、楽天へ復帰が濃厚。今シーズンの青木のように最下位に沈んだチームを押し上げることができるだろうか。
高橋由伸監督が辞任を発表したシーズン最終盤、巨人ナインは奮起。10月4日の広島戦で菅野智之が9回完封、11奪三振と圧倒した。菅野は200イニング、200奪三振を記録し、防御率、最多勝利も獲得。CSではCS史上初のノーヒットノーランも達成した。
野手では岡本和真が10月9日の最終戦で2本塁打、3打点とチームの勝利に大きく貢献。同時に「3割、30本塁打、100打点」を達成。22歳の岡本は史上最年少での同記録達成となった。
なお、23歳のシーズンでは王貞治(巨人、1963年)、門田博光(南海、1971年)、掛布雅之(阪神、1978年)、山田哲人(ヤクルト、2015年)が「3割、30本塁打、100打点」を記録している。また、100打点の達成者となると、この4人に松井秀喜(巨人、1997年)、浅村栄斗(西武、2013年)が加わる。名を連ねているのは最高峰の選手ばかりだ。そんな選手たちを上回った岡本の将来は約束されたものと言ってもいいのではないだろうか。
岡本は、11月に開催される日米野球のメンバーに選出。メジャーリーガー相手に本塁打が期待されている。今シーズン、「巨人軍・第89代4番」となった岡本が日本の4番へと成長する日は近いかもしれない。
文=勝田聡(かつた・さとし)