プロ野球は早くも勝負どころとなる後半戦へと突入。3カ月も経たないうちに、リーグ優勝が決まり、クライマックスシリーズ、そして日本シリーズへと進んでいく。
一方で、結果を残せなかった選手たちは、日本一に向けた勝負とは違う緊張感と戦うことになる。戦力外通告である。ドラフトやその他の補強など、来シーズンの新戦力考えると、各チーム10名前後が戦力外となり、チームを去ることになる。
本特集「崖っぷちからの逆襲〜オレは戦力外候補じゃない!」では、戦力外通告の可能性がありそうではあるが、「いや、まだやれる!」という選手を、エールを込めて独断で取り上げてみたい。今回は野手編。
2015年にリーグ優勝を果たしたヤクルト。その後は5位、6位と2年連続でBクラスに沈み、今シーズンはセ・パ交流戦こそ最高勝率だったが、現在は最下位争いと低迷している。そのなかで野手陣を見ると山田哲人を除き、若手といえる世代は不在だ。とくに外野陣は青木宣親が1982年生まれの36歳、バレンティン、雄平、坂口智隆が1984年生まれの34歳と高齢化が進んでいる。
ただ、彼らに顕著な衰えが見られるわけではないので、今シーズンは彼らを中心にして十分に戦えるだろう。しかし、来シーズン以降を考えると心許ないのは確かだ。ここ3年のドラフトを見ると山崎晃太朗(2015年5位)、塩見泰隆(2017年4位)と2人の外野手を指名しており、チームとしてもこの2人の突き上げで、世代交代を進める形が理想だろう。
そんなヤクルトの外野陣のなかで、本来であればレギュラーとして定着し、バリバリ働いていなければならない選手がいる。上田剛史と比屋根渉だ。
今シーズンの起用法を見ると上田は守備固め、代走、代打で試合終盤のワンピースとして機能している。打撃面は打率.200と物足りないが、守備・走塁面を考えると1軍での出場機会はまだまだありそう。戦力外候補とは言えない。
心配なのは比屋根である。2015年にキャリア最高となる84試合に出場し、「1番・中堅」としてリーグ優勝にも貢献した。しかし、それ以降は出番を減らし、今シーズンは未だに1軍出場がない。2軍ではスタメンで出場しており、故障しているわけではない。
ただ、2軍での成績は決して悪くない。58試合で打率.284を記録しており、出塁率は.405だ。規定には到達していないものの、この出塁率は15試合以上の出場では、谷内亮太(.423)に次いでチーム2位。高出塁率を武器に後半戦での昇格を果たし、爆発してほしいものである。1番・比屋根、2番・川端、3番・山田哲の並びで初回から得点を奪うシーンに期待したい。
プロ野球選手は幾多もの試練を乗り越えてここまでやってきた。その試練はアマチュア時代だけでなく、プロに入ってからもやってくる。桂依央利(中日)もプロ入り後に試練に見舞われた一人だ。
桂は2013年のドラフト3位で大阪商業大から中日に入団し、谷繁元信(元中日)の後釜候補として期待されていた。しかし、入団後にイップスを発症し、キャッチボールもままならない状態にまで落ち込んでしまう。しかし、逃げ出さずに立ち向かった桂はイップスを克服。2年目の2015年には1軍で47試合に出場。プロ初本塁打も放っている。翌2016年も59試合に出場し、ようやく道が拓けてきた。
だが、2年目を終えた2016年の秋季キャンプ中に左膝半月板の損傷で手術を受けることに。翌2017年は1軍での出場機会は訪れなかった。傷が癒え、勝負の5年目となる今シーズンはFAで大野奨太が日本ハムから加入。開幕から1軍昇格の機会に恵まれなかったが、ようやく7月7日に1軍初昇格。ここから、第二、第三捕手の立場からレギュラーを目指したい。
選手数が少なく、経験を要する捕手は、ほかのポジションと比べると戦力外にはなりにくいかもしれない。だが、残留を確実なものとするためにもチャンスをモノにしたい。
かつては中心選手として活躍してきたものの、ベテランとなり出番が減少。瀬戸際に追い込まれた選手もいる。大松尚逸(ヤクルト)、吉村裕基(ソフトバンク)はその代表格だろう。
大松はロッテで左の大砲として活躍したものの、アキレス腱断裂の大ケガをしたことも影響し、昨シーズンからヤクルトへ移籍した。打率こそ.162と奮わなかったが、貴重な左の代打として94試合に出場。劇的なサヨナラ本塁打も放っている。しかし、今シーズンは1軍での出場はない。疲れが見え始める夏場に左の代打の切り札としてもう一度、神宮の舞台で活躍することを期待したい。
吉村も大松と同様だ。2016年には78試合に出場し、206打席を与えられていたが、昨シーズンは8試合の出場に留まり、今シーズンの1軍昇格はない。ベテランとして、代打の切り札として、再び1軍に戻ることはできるだろうか。まずは2軍で結果を残し、チャンスをつかみみたい。
崖っぷちに立つ選手は、若手もベテランも結果を残せないと10月の声を聞くのが怖いだろう。そんな心配が杞憂となるような後半戦の活躍を期待したい。
(※成績は7月16日現在)
文=勝田聡(かつた・さとし)