夏の甲子園の余韻が残る9月頭、宮崎県で第12回BFA U-18アジア選手権が開催された。高校3年生にとっては国体があるものの、最後の真剣勝負といってもいい大会。すなわち、ドラフト前の最後のアピール場となる。この大会で日本代表の面々はどのような働きを見せたのか。「プロで通用するか」という観点から振り返ってみたい。まずは投手編。
この大会でもっとも注目を集めたのは吉田輝星(金足農)だろう。吉田は3戦目となった韓国戦に初登板。豪快な投球が期待されたが、初回に四球と失策の走者を置き、3ラン本塁打を浴びてしまう。しかし、その後は立ち直って5回3失点、被安打2、奪三振5、与四球2の内容でマウンドを降りた。試合は初回に失った3点が日本代表に重くのしかかり、吉田は敗戦投手となってしまう。
続く台湾戦では中継ぎとして5回を投げ2失点、被安打4、奪三振2、与四球1の内容で再び敗戦投手となっている。
ストレートは140キロ台後半。このストレートを軸にスライダー、スプリットを駆使する投球術はまるでプロのよう。高校生ということもあり、細かい制球力はまだまだ足りないが、力で押し切る投球ができるのは強み。また、ストレートも場面によって球速を変えているように見受けられる。いわゆる、「ギアを入れる」投球だ。
力のいれ具合を場面によってコントロールし、なおかつ抑え込むことができる投手はそういない。プロ志望届を出せば、間違いなく上位で指名されるはずだ。プロか進学かで揺れており、その動向は注目が集まる。
吉田とともに投手陣の軸として起用されたのが柿木蓮(大阪桐蔭)だ。3試合に登板し、9回1/3で失ったのはわずか1点と、その実力を見せた。
140キロ台前半から中盤のストレートとスライダーを中心に組み立てたが、唯一の失点となった台湾戦ではスライダーを狙い打たれてしまう。許した4安打の内、実に3安打がスライダーだった。クセを見破られていたのか、たまたまなのかはわからない。どちらにせよ、スライダーを打たれたという事実が残っている。どのように改良していくかが、今後の鍵となりそうだ。
二刀流として注目を浴びた根尾昂(大阪桐蔭高)は2試合に登板。自己最速となる150キロを記録するなど、2試合とも無失点で切り抜けた。試合後のコメントでは、プロでも二刀流でプレーしたいという意思を示唆した。甲子園直後は「ショートで勝負したい」と発言していたが、この変化によって、野手での指名を考えている球団はどう動くだろうか。
夏の甲子園前に発表された一次候補には選ばれていなかったが、甲子園での活躍が目にとまり、代表入りを果たしたのが渡邉勇太朗(浦和学院)だ。大谷翔平(エンゼルス)を彷彿とさせる長身と投球フォーム、そして150キロに迫るストレートが武器だ。
スリランカ戦に先発した渡邉は140キロ前半のストレートとスライダーのほぼ2球種で3回を無失点、6奪三振と結果を残した。ストレートはまだバラツキがあるものの、球威でねじ伏せている。すでにプロ志望を明言しているが、先発として長いイニングを投げきるためには、通用する球種を増やしたいところ。全体的に粗削りなため「のびしろ」は大きく、ポテンシャルは高そうだ。
今大会の高校日本代表チームは惜しくも3位に終わってしまい、選手は不完全燃焼の思いがあるかもしれない。しかし、その悔しさをバネにプロ、大学、社会人とそれぞれが進む次のステージで飛躍することを期待したい。
■日本投手陣成績
吉田輝星(金足農)
2試合/0勝2敗/11回/7奪三振/防御率3.27
野尻幸輝(木更津総合)
1試合/0勝0敗/3回/7奪三振/防御率0.00
渡邉勇太朗(浦和学院)
1試合/0勝0敗/3回/6奪三振/防御率0.00
板川佳矢(横浜)
2試合/0勝0敗/1.2回/2奪三振/防御率5.40
山田龍聖(高岡商)
1試合/1勝0敗/2回/4奪三振/防御率0.00
奥川恭伸(星稜)※2年
2試合/0勝0敗/2回/5奪三振/防御率0.00
柿木蓮(大阪桐蔭)
3試合/1勝0敗/9.1回/9奪三振/防御率0.96
根尾昂(大阪桐蔭)
2試合/0勝0敗/2回/3奪三振/防御率0.00
市川悠太(明徳義塾)
1試合/1勝0敗/1回/3奪三振/防御率0.00
文=勝田聡(かつた・さとし)