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終戦記念日前に知っておきたい、秘密に包まれた戦時下の高校野球史

 明日8月15日は終戦記念日。特に今年は戦後70年という節目の年であることから、例年以上に感慨深い思いでいる人も多いのではないだろうか。熱戦が続く甲子園大会も、正午になると試合が一時中断されて戦没者への黙祷をささげることが恒例となっている。

 夏の甲子園と戦争の関係は思った以上に深い。第二次世界大戦が始まる直前からその影響を受けて大会が中止になったり、戦後は野球どころではない状態でも関係者の熱意ある行動によって開催にこぎつけたりと、あまり知られていない話がたくさんあるのだ。当時の資料などを元に、戦前・戦後の甲子園史を振り返ってみよう。


【1941年:理由は明かされずに夏の甲子園が突然の中止】

 第27回夏の甲子園も例年通り、8月13日開幕の本大会出場をかけて各地方大会が行われていた。ところが、1937年より始まった日中戦争の戦局が深刻になり、国民生活にも様々な規制が与えられるようになった。

 そして7月中旬、文部省次官通達で「学生生徒のスポーツの全国大会を禁止する」ことに。ほとんどの地方で予選が行われていた最中で大会中止の発表があったのだから、選手や関係者の落胆ぶりは想像に難くない。

 しかも、その禁止にする理由は、戦争に絡んだ情報を外部に流さないようにする「防諜施策」の一環で、当時ハッキリと明かされなかった。本当の理由は、この年の夏、満州で大規模な軍事演習を実施するために日本全国で大規模な交通規制を行う必要があったから。たまたま夏の甲子園とタイミングが重なったために大会が犠牲になったのだった。

【1946年:暗黒の時代を経て、食料も道具も無いなかで甲子園大会再開】

 日中戦争が第二次世界大戦と名を変え、ますます戦況が激しくなった1942年、学生野球界にも大変動が起きた。春のセンバツも夏の甲子園も文部省の指令で中止となったのだ。その代わりに文部省主催の「学徒体育振興会大会」なる競技会が開催された。ただ、この大会も実施されたのはこの年1年のみ。以降は国内での野球大会は全て中止となり、日本は1945年8月15日の終戦を迎えた。

 野球どころではなかった暗黒時代を乗り越え、戦後第1回目、第28回となる夏の甲子園が開催されたのは1946年8月15日と、敗戦からちょうど1年後のこと。甲子園球場は米国の占領軍に接収されて使用できなかったため、西宮球場での開催となった。

 しかしながら、どのチームもバットもない、ボールもない、さらには食料もない、という異常な状況。ユニフォームは戦前のモノを真似て選手が自作し、バットはチームに2、3本あれば良いほう。スパイクは普通の靴にサッカー用の靴底を縫い付けて使用する選手もいた。西宮球場付近の関西学院大の寮に選手村が作られ、各チームは米などの食料を持参して現地入り。勝ったチームは滞在期間が長くなって食料が底をつくことを心配するなど、現在では考えられない過酷な状況。それでも、選手たちは野球ができる喜びを噛み締めて全力プレーを披露した。

【1948年:中絶状態から復興へ! 正式名称も変更される】

 1946年に実施された学制改革によって六・三・三制の学校体系が確立し、中等学校が高等学校に改称された。これを受けて1947年の第29回大会「全国中等学校優勝大会」はこの年で終了。1948年には現在の正式名称である「全国高等学校野球選手権大会」と改められ、第30回大会が行われた。

 戦後3回目の大会も食糧難、道具不足などは続いていた。出場校の選手たちは甲子園球場のスタンドの下の狭い部屋に寝泊まりし、食料を持ち寄るなど“耐乏生活”のなかで連日、甲子園で試合を行った。負けたチームは残った食料を勝ったチームに無償で与えるなど、敵同士が助け合いながら大会は歴史を紡いでいったのだ。


 戦前から戦後にかけての“激動”の時代、多くの人々が犠牲になり、そして助け合いがあったからこそ、高校野球は今年、誕生から100年の節目を迎えられたのは間違いない。夏の甲子園で8月15日正午に試合を中断して黙祷を捧げるようになったのは1963年から。サイレンの音が真夏の甲子園球場に響き渡り、選手や監督、そしてスタンドの大観衆も一同に立ち上がって黙祷する……。幼い頃からずっと見てきた光景だが、これからも甲子園大会が続く限り継続して欲しい。

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