新型コロナウイルスの影響でほとんどのスポーツは延期、中止を余儀なくされている。4月最初の週末にも球春は訪れず、プロ野球もJリーグもF1もない寂しい休日になった方も多いのではないだろうか。
外出を自粛する野球ファンも多いであろう今だからこそ、ガッツリと読みたい野球漫画を紹介しよう。
(原作:神尾龍、監修:加藤潔、作画:中原裕/小学館/全44巻)
監督視点の高校野球漫画を切り拓いた一作。元インチキセールスマンの主人公・鳩ヶ谷圭輔が母校・彩珠学院高校の監督に就任し、野球部再建を目指すストーリー。
アンチ・スポ根的な匂いをひしひしと感じる作品で、主にチーム作りや戦略に重きが置かれている。心の機微、勝負の機微の表現はとことん精細。野球の見方が変わる名作だ。
(作:三田紀房/講談社/全25巻)
代表作『ドラゴン桜』で有名な三田紀房先生が手掛けた高校野球漫画。主人公でありエースかつキャプテンの七嶋裕之が野球部のファンの老人から1000万円を託され、それを元手に甲子園を目指すストーリー。
お金の使い道ももちろん見所だが、オッと思わせるのは、主人公が無能監督・ガーソ(曽我部公俊)に振り回されるところだろう。リスクを取らず、石になってしまったり、相手の名将に対抗しようとスタンドプレーに出たり、名誉欲に走ったり、とにかく読者をイライラさせる主役級の名脇役だ。
相手校には実在の高校のモチーフにしたと思しきチームや名将も登場。フィクションながら、2000年以降の高校野球シーンが綿密に描かれている。
(原作:森高夕次、作画:足立金太郎/講談社/既刊計39巻)
2011年に産声を上げ、今や大作となったプロ野球漫画。主人公・凡田夏之介は高卒8年目、年俸1800万円の左の中継ぎ投手。「グラウンドには銭が埋まっている」が信条の「地味な男」である。現実的なプロ野球界での渡世術を中心に物語は幕を開ける。
この地味なストーリーが支持を集めたのは、圧倒的な取材量を背景とする「リアル感」だ。王道の野球漫画とは異なり、主人公・凡田夏之介にはいいときもあれば、悪いときもある。防御率2点台を目指したり、先発転向に失敗したり、過投によってトミー・ジョン手術に追い込まれたり、光があれば影もある。
第1部が全17巻、第2部が全15巻、そして現在「グラゼニ 〜パ・リーグ編〜」は『週刊モーニング』で連載中で、1月23日に最新刊となる7巻が発売された。連載当初は26歳だった凡田は34歳を迎えるシーズンに入った。大河といえる野球漫画になっている。
文=落合初春(おちあい・もとはる)