本来であれば、高校野球の春の熱戦をお伝えする本連載。しかし、新型コロナウイルスの影響でほとんど動きのない春になってしまった。
あらためて今回も高校野球界の現状を追っていきたい。
5月6日、山口県高野連は夏の山口大会の無観客開催を発表した(夏の甲子園で予定通りの日程で開催される場合)。夏の無観客開催は全国で初めての決定になる。
追って、5月7日、日本高野連が全国一律で夏の大会の無観客開催を各地の高野連に要請する方針であることが報じられた。
トップダウンの指示に至っていないのは、現在各高野連に「収入ゼロ」の場合の開催の可否、開催方法の算出を要請しているからだ。
他競技に比べて資金が潤沢な高校野球界といえど、地域ごとに財政バランスは異なる。日本高野連では5月20日に夏の甲子園の運営委員会を開く予定だが、そこで決定される方針は各都道府県高野連の試算次第になってきそうだ。
5月11日、感染者の少ない一部の県では学校が再開され、ようやく新学年・新学期が動き出した。
地域によって活動の規模は異なるが、各地の教育委員会は基本的に「1日2時間」を活動上限とし、「練習試合は近場限定」の方針を続々と発表している。
これまで高校の部活動はスポーツ省が定めたガイドラインのグレーゾーン上にあったが、公立校を中心に「1日2時間・休日3時間・週2日休養」の遵守が求められるようになりそうだ。
練習の自粛、短縮により、懸念されるのは球児の体力面の問題だ。かねてより、酷暑による熱中症が多発していたが、練習を満足にできない状況で、球児たちが夏の大会の暑さに耐えられるかは甚だ疑問だ。
仮に無観客が全国一律で決まったとしても、試合間の施設の消毒などが必要なケースもあり、時間的な問題も生じる。
今夏に限り、7回制という検討を始めてもいいのではないだろうか。7回制にすれば、1日にできる試合数も増え、経費削減にもつながるはずだ。
「高校野球は9イニング」が常識だが、中学野球や高校女子硬式野球などを見れば、7イニングでも十分に試合として成立することは明らかだ。無観客でも夏の大会がすんなり実施されるとは思えないが、やることを前提に動くのであれば、抜本的な「特例」を検討するしかないだろう。
文=落合初春(おちあい・もとはる)