2019年シーズンの巨人は原辰徳監督が2015年シーズン以来4年ぶりに監督へ復帰したこともあり、昨シーズンオフから積極的に動いた。その甲斐もあり、2014年以来5年ぶりにリーグ優勝を果たし、日本シリーズにも出場。ソフトバンクに4連敗を喫したものの、最低限の目標はクリアしたと言っていいだろう。
そんな巨人の今シーズンを中心とした、ここ数年の編成を本誌『野球太郎』の持木編集長とカバティ西山に話を聞きながら、「日本人選手獲得」「外国人選手獲得」「育成状況」のカテゴリーごとに採点してみた。
(※「日本人選手獲得」「外国人選手獲得」は2018年オフから2019年シーズンが対象)
巨人は昨シーズンのオフに広島から国内FA権を行使した丸佳浩をロッテとの争奪戦の上、獲得に成功。丸は全143試合に出場し、主軸としてリーグ優勝に大きく貢献した。
西武からFAで移籍してきた炭谷銀仁朗は骨折による離脱もあったが、小林誠司や大城卓三と併用されながら58試合に出場し、まずまずの成績を残している。
ドラフト組では1位の高橋優貴が5勝、6位の戸郷翔征が1勝をマーク。戸郷は高卒新人の6位指名ながら、クライマックスシリーズのファイナルステージで先発を任され、日本シリーズでも中継ぎとして起用された。
これらの結果に対し、持木編集長は「採点となると、岩隈(久志)、中島(宏之)、炭谷をどう考えていたかに左右されますよね。1軍の戦力として見ていたとしたら、年俸を考えるとマイナスです。結果を残せていませんから。でも、数字に表れない部分でチームを引っ張ったり、経験を伝えるという意味での貢献を期待していたなら、よかったのかもしれません。それにしても高額年俸ですけど」と考え方次第でどちらにも取れると考えている。
カバディ西山は「全体で見たら丸が入り優勝したので100点ですけど、個々で見たらどうなんでしょうか…」と全体で見るか個で見るかで大きく変わるとのこと。
たしかに全体で見るか、個でみるかで巨人の採点は難しい。しかし、丸が入ったことでリーグ優勝を果たした事実がある。そのため100点とした。
■巨人の日本人選手獲得/2018年ドラフト
1位:高橋優貴(投手/八戸学院大)
18試合/5勝7敗/93回/奪三振89/与四球48/防御率3.19
2位:増田陸(内野手/明秀学園日立高)
1軍出場なし
3位:直江大輔(投手/松商学園高)
1軍出場なし
4位:横川凱(投手/大阪桐蔭高)
1軍出場なし
5位:松井義弥(内野手/折尾愛真高)
1軍出場なし
6位:戸郷翔征(投手/聖心ウルスラ学園高)
2試合/1勝0敗/8.2回/奪三振11/与四球3/防御率2.08
育成1位:山下航汰(外野手/健大高崎高)
12試合/打率.167(12打数2安打)/0本塁打/0打点/0盗塁
育成2位:平井快青(投手/岐阜第一高)
1軍出場なし
育成3位:沼田翔平(投手/旭川大高)
1軍出場なし
育成育4位:黒田響生(内野手/敦賀気比高)
1軍出場なし
■巨人の日本人選手獲得/その他
岩隈久志(投手)※マリナーズ自由契約
1軍出場なし
山下亜文(投手)※ソフトバンク戦力外
1軍出場なし
炭谷銀仁朗(捕手)※西武からFA
58試合/打率.262(126打数33安打)/6本塁打/26打点/0盗塁
中島宏之(内野手)※オリックスを自由契約
43試合/打率.148(54打数8安打)/1本塁打/5打点/1盗塁
丸佳浩(外野手)※広島からFA
143試合/打率.292(535打数156安打)/27本塁打/89打点/12盗塁
今シーズンの巨人は守護神候補としてクック、大砲候補としてビヤヌエバを獲得した。しかし、クックはクローザーとしての真価を発揮する前に戦線離脱。
そのため、シーズン半ばにデラロサを補強することになった。デラロサは中継ぎとして起用され、最終的にはクローザーへ昇格。途中加入ということもあり実働期間は短かったものの、大崩れすることなく防御率も2点台前半と期待に応えたと言っていい。
野手のビヤヌエバは73試合の出場に留まり、結果を残すにはいたらなかった。
持木編集長は「デラロサは穴埋めにしかなってないので、全体的に見るとマイナスになってしまいますよね」と感じている。
デラロサの獲得があったことで優勝に大きく近づいたのは間違いない。しかし、クックがそもそも結果を残していたら獲得に動くことはなかったはず。そういった意味では、手放しでよかったとは言えない。
■巨人の新外国人選手
クック(投手)
13試合/0勝2敗6S/15回/奪三振9/与四球6/防御率4.80
デラロサ(投手)
26試合/1勝0敗8S 5H/24回/奪三振32/与四球5/防御率2.25
ビヤヌエバ(内野手)
73試合/打率.223(202打数45安打)/8本塁打/24打点/2盗塁
今シーズンで見ると育成から支配下登録された育成1位の山下航汰、ドラフト6位の戸郷が高卒1年目ながら揃って1軍デビューを果たした。もちろんバリバリの戦力としてではないが、来シーズン以降に向けての光になったことは間違いないだろう。
ほかにも増田大輝や若林晃弘らがキャリアハイの成績を残し、控え選手として戦力になってきた。ソフトバンクを見てもわかるとおり、控え選手の充実は日本一を目指す上で重要事項。そういった意味では戦力は整ってきていると言っていい。
しかし、活躍し始めたのはドラフト下位のいわば伏兵選手たちで、本来、活躍してもらわなければドラフト上位の選手たちは少し寂しい。
持木編集長も「確かに“育成してる感”はすごく感じられます。昨年は岡本(和真)もブレイクしましたし。でも、本来は主軸として活躍しなければならない、その他のドラフト1位、2位の選手たちの育成が進んでないのは物足りないです。鍬原(拓也)など頑張って欲しいのですが」とドラフト上位の選手たちの育成が進んでいないことを懸念している。
かつての巨人はFA選手の獲得ばかりで、育成を疎かにしていると揶揄されることも多かった。しかし、近年はその傾向も減り、自前の選手を育てあげることも増えてきた。現在、伸び悩んでいるドラフト上位でポテンシャルがあるはずの選手たちが開花すれば、常勝軍団となる日は近そうだ。
文=勝田聡(かつた・さとし)