広島は丸佳浩の巨人へのFA流出もあり、セ・リーグ4連覇を逃す悔しいシーズンとなった。しかし、そのなかでもドラフト1位の小園海斗が1年目から躍動。若い投手陣も育ちつつあり、明るい話題もあった。
そんな広島の今シーズンを中心とした、こ数年の編成を本誌『野球太郎』の持木編集長とカバティ西山に話を聞きながら、「日本人選手獲得」「外国人選手獲得」「育成状況」のカテゴリーごとに採点してみた。
(※「日本人選手獲得」「外国人選手獲得」は2018年オフから2019年シーズンが対象)
広島はドラフト1位の小園海斗が高卒1年目ながら58試合に出場。将来の正遊撃手候補としてではなく、後半戦では不振の田中広輔に変わって「戦力として」スタメンを任された。また、2位の島内颯太郎は苦しみながらも中継ぎとして25試合に登板。投球回数以上の三振を奪っており、能力の片鱗は見せた。
ドラフトで指名した7名(育成のぞく)のうち、1年目から1軍で出場したのは上位の2名だけ。これだけ見ると、物足りなく映るかもしれないが、小園を含めて高校生が5名。将来性を重視していたことを考えると、決して悪い人数ではないだろう。
一方、丸佳浩の人的補償で加入した長野久義は序盤から苦しんだ。終盤では4番を任されるなど、打率.250(180打数45安打)と持ち直したが、期待していた成績には程遠い。
一方で想像以上の活躍を見せたのが、福井優也(楽天)とのトレードで加入した菊池保則だろう。楽天ではおもに先発として起用されていたが、中継ぎとして開花。キャリアハイとなる58試合に登板して防御率は2.80と3点台を切った。また、開幕から一度も2軍に降格しなかった点も評価できる。
持木編集長は「ドラフトの上位2人、とくに小園は期待以上の働きです。島内も想像以上だったのではないかと思います。長野はマイナスかもしれませんが、それ以外は悪くないですよね」と日本人選手の補強に関しては高評価だった。
■広島の日本人選手獲得/2018年ドラフト
1位:小園海斗(内野手/報徳学園高)
58試合/打率.213(188打数40安打)/4本塁打/16打点/1盗塁
2位:島内颯太郎(投手/九州共立大)
25試合/0勝0敗/28.2回/奪三振33/与四球19/防御率4.40
3位:林晃汰(内野手/智辯和歌山高)
1軍出場なし
4位:中神拓都(内野手/市岐阜商高)
1軍出場なし
5位:田中法彦(投手/菰野高)
1軍出場なし
6位:正隨優弥(外野手/亜細亜大)
1軍出場なし
7位:羽月隆太郎(内野手/神村学園高)
1軍出場なし
育成1位:大盛穂(外野手/静岡産業大)
1軍出場なし
■広島の日本人選手獲得/その他
菊池保則(投手) ※楽天とのトレード
58試合/1勝3敗15H/61回/奪三振43/与四球23/防御率2.80
長野久義(外野手) ※丸佳浩のFA移籍にともなう人的補償
72試合/打率.250(180打数45安打)/5本塁打/20打点/0盗塁
三好匠(内野手) ※楽天とのトレード
43試合/打率.182(77打数14安打)/2本塁打/7打点/1盗塁
外国人選手はレグナルトが中継ぎとして機能した。楽な場面での起用で結果を残し、シーズン半ば以降は緊迫した場面での登板も増えた。打ち込まれるシーンもあったが、シーズンを通して52試合に登板。そのなかで防御率3.34はまずまずの結果と言っていいだろう。
ローレンスは外国人枠の問題もあり、1軍での起用は1試合のみ。その試合では打ち込まれ、戦力としては機能していない。育成から上がってきたモンティージャ、サンタナの2人も出場試合数が少なく判断が難しい。
レグナルトをのぞく新獲得外国人選手の出場試合数が少ないのは、薬物が発覚したバティスタを含め、ジョンソン、フランスアといった核となる外国人選手が残留していたからだ。
持木編集長は「バティスタやジョンソンそしてフランスアというベースとなる外国人選手がいるので、新外国人選手には穴埋め的な存在を期待していたということですよね。そういう意味ではレグナルトが50試合以上に投げたというのは狙い通りでしょう」と評価は高い。
新獲得外国人選手にエースや主砲の役割を求めていたのであれば、外れという評価になるが、あくまでも求めていたのはサブ的な存在。そういう意味ではレグナルトが機能したため悪くなかった。
■広島の外国人選手獲得
レグナルト(投手)
52試合/6勝3敗 15H/59.1回/奪三振67/与四球34/防御率3.34
ローレンス(投手)
1試合/0勝1敗/5回/奪三振3/与四球4/防御率10.80
モンティージャ(投手)
2試合/0勝2敗/4.1回/奪三振8/与四球4/防御率14.54
サンタナ(内野手)
13試合/打率.182(33打数6安打)/0本塁打/5打点/0盗塁
投手陣では昨シーズンまで伸び悩んでいた中村恭平が開花した。途中離脱はあったものの、左の中継ぎとして43試合に登板。44回1/3を投げて58奪三振は充分すぎる数字。先発では床田寛樹が先発ローテーションに定着した。また、アドゥワ誠や遠藤淳志と高卒の若手投手も次々に1軍で結果を残している。
野手陣では138試合出場の西川龍馬がスタメンに定着し、磯村嘉孝は65試合に出場。生え抜きの選手を育て上げ、昨季は3連覇を達成している。この実績は、ここ数年来の育成がうまく機能している証拠だろう。
持木編集長は「そもそもFAなどで他球団の選手を獲得しないので、育てるのがポリシーですよね。アドゥワや遠藤など若い投手が芽を出しつつあり、山口(翔)も出てきそうです。その一方で、塹江(敦哉)や矢崎(拓也)は物足りないところでしょうか。野手ではそれなりの期間をかけて育てようとしてきた堂林(翔太)も期待値に比べるといまいちですね」と育っている選手は多いとしながらも、伸び悩んでいる選手も一定数いるという冷静な評価だった。
カバディ西山は「會澤(翼)の残留も決まり、あとは坂倉(将吾)と中村奨成の2人の若手捕手をどう起用し、どう育てていくか、ですよね」と打てる捕手候補の選手たちの起用法が今後のカギになると予測している。
広島は4連覇を逃し、緒方孝市監督が辞任した。今後、佐々岡真司新監督がどのようにチームを作っていくのか注目が集まる。
文=勝田聡(かつた・さとし)