新型コロナウイルスの影響でプロ野球はもとより、高校、大学、社会人、独立リーグ、すべてのカテゴリーがストップしている。
本来であれば一冬を越したアマ球界の逸材たちが台頭し、ドラフト戦線に名乗りを上げている頃だが、目に見えた動きはない。
今年のドラフト会議は11月5日に予定されているが、例年どおりにいかないことは間違いない。
アマ球界の公式戦は開催されていないが、秋の段階で「リストアップ」は、ほぼ完了しているだろう。スカウト陣はやはり「プロ」だ。己の人脈を駆使し、冬の間も各地を駆け巡っている。
我々ライターが「春の隠し玉としてとっておこう」と懐に温めていた選手も気がつけば、「この前、〇〇のスカウトが見に来ました!」なんてこともしばしば。メディアへの露出はなくともプロの情報網を甘く見てはいけない。
練習が再開され、自粛要請が解除された時点でスカウトたちは一気に動き出すだろう。今の時点でいかに「越冬良化」の情報をつかんでいるか。スカウトの真の力が試される1年になる。
とはいえ、やはり春の実戦の場が失われたことは大きい。投手はブルペンや自軍相手の登板でも判断材料は揃うが、野手に関しては多くの投手との対戦、特にハイレベルな投手との対戦がアピールポイントとしてほしいところだ。
チームの中にも有力投手が何人もいる強豪大学、社会人強豪であれば、紅白戦やシート打撃でもある程度の判断はできるが、高校生となれば、それは難しい。春と夏でチャンスをつかみたかった高校生を中心に進路の変更が始まっている。
例年、春の実戦で打撃が良化し、ドラフトに滑り込む大学生も少なくない。いずれにしても今年のドラフトは投手中心になる可能性が高いだろう。
ドラフト下位や育成指名の試金石になるのが、秋のプロテストだ。公開、非公開を含め、例年各球団がアマチュアの逸材を生で見て、最終的な合否を判断する重要な場だ。
プロ志望届との兼ね合いもあるのだが、今年は公開プロテストが増えそうな気もする。何が何でもプロ志望という選手は、そこをモチベーションに頑張るしかない。
そもそもの問題だが、プロ側も今年はなかなか指名枠を確保できない可能性が高い。新型コロナウイルス禍で開幕が遅れ、選手たちは実戦の場から遠ざかっている。仮に夏以降、実戦が始まったとしても、今年の状況で秋に「大量戦力外」を生むチームがあれば、選手会も黙ってはいないはずだ。すでに選手会では「戦力外通告の時期」が議題に挙がっている。
今秋、「非情な血の入れ替え」を断行するチームがあるかと言われれば、正直考えにくい。目に見えた逸材だけを抑えて支配下指名は終了。支配下は3位ぐらいで打ち切り、育成で大量に選手を囲い込む球団も出てきそうだ。
逆に言えば、この時期から「育成でもプロ」を明言できる選手はプロ側から見れば、視察しておきたい存在と言えるだろう。
文=落合初春(おちあい・もとはる)