プロ野球ドラフト会議が開催されてから2カ月ほどが経過し、ドラフトに関する話題は来年のドラフト戦線を騒がせる注目選手へと移り変わっている。とはいえ、今年のドラフト指名選手への評価や、各球団の獲得にあたってのポイントが気になるファンも多いだろう。
その両方を同時に読めるのが、本誌『野球太郎No.033 2019ドラフト総決算&2020大展望号』である。先日のドラフト会議の結果をもとにした考察や指名選手のインタビュー、12球団のドラフト採点と近未来の展望、そして来年のドラフト候補生の紹介がこれでもか、と展開されている。
その見どころを紹介したい。
2019年ドラフトの総決算号ということもあり、多くのファンが気にしているのは指名選手たちの評価だろう。もちろん、本誌でも多くのページを割いている。
「ドラフト指名パーフェクト名鑑」と銘打って支配下指名を受けた74名を巻頭から紹介。育成指名を受けた33名は中程で育成ドラフト指名選手名鑑として取り扱われている。
現時点ではNPB入り前ということもあり、これまでの経歴や選手の情報、投手であれば球種、打者であればタイプなどを説明している。ドラフト上位指名選手だけでなく、育成指名選手まで一人ひとりに見出しがついているのも、選手の個性を把握する上で見逃せない。
ロッテ1位の佐々木朗希(大船渡高)は、『野球ファンが夢を託す「国宝」』となっており、期待度の高さを最大限に現している。また、中日5位の岡林勇希(菰野高)は「投打に光る才能の持ち主」となっており、二刀流の可能性があることを示唆しているのだ。
定番中の定番ではあるが、ドラフト指名選手のアマチュア時代の評価をシーズン前におさらいするには抜群の仕上がりとなっている。
37人の選手が登場する恒例のインタビュー企画『野球太郎ストーリーズ』では、彼らが歩んできた野球人生をたどるドキュメントになっている。
この37名は全員が上位指名選手ではない。ドラフト1位はもちろんだが、甲子園スター、将来有望高校生、隠し玉&変わり種、複数指名チームなどカテゴリーに分けられている。ドラフト1位指名選手に偏っていなのが、野球太郎らしい。
その構成も工夫されている。各選手ともにインタビューだけではなく、ターニングポイントが載っているのである。
たとえば、日本ハム3位の上野響平(京都国際高)のページには、『最上級生で主将に就任したことで、自分が成果を出すことがチームの勝利と自らのプロ入りにつながると考えるようになった(後略)』と書かれている。上野にとって主将就任が大きな転機となったわけだ。こういった情報が選手ごとに知れるのは嬉しい。
2020年のドラフトへ向けた情報も抜かりはない。「2020年ドラフト候補名鑑」として80選手を紹介。また「野球太郎的ドラフト候補ランキング《2020始動編》」と題し、野球太郎に寄稿するライター20人のアンケートから注目選手をランキングしている。
また、各種コラムも読み応えがある。なかでも「ブルペンキャッチャー・高森勇旗」がおすすめだ。横浜でプレーした元プロ野球選手である高森勇旗氏が、実際に立野和明(東海理化/日本ハム2位)のピッチングを受け、その後にインタビューを行った様子が描かれている。
その描写が細かい。球を受け、話を聞き、その返答を記すだけではなく、情景が思い浮かぶような、さりげない一文が入っていたりする。また、元プロ野球選手という強みを生かし、ともにプレーしていた選手に例えている部分もある。
ほかにも12球団のドラフト採点や近未来展望、スカウトへのインタビュー、「スカウト的観戦者カルト座談会」、ドラフト会議をめぐるノンフィクション記事、野球太郎主催で行われた「極私的プロ野球ドラフト会議2019」のレポートと魅力は多い。
今年のドラフトの復習、そして来年のドラフトへ向けた予習に『野球太郎No.033 2019ドラフト総決算&2020大展望号』はうってつけだ。
文=勝田聡(かつた・さとし)