順位こそ最下位だったが、終盤までCS出場争いを繰り広げていたオリックス。とくに山本由伸をはじめとした若い投手陣の躍進が目立った。
そんなオリックスの今シーズンを中心とした、ここ数年の編成体制を持木編集長とカバディ西山にうかがいながら野球太郎独自に採点してみた。
オリックスはドラフト(育成を除く)で獲得した7人全員が1軍で起用された。なかでも7位指名だった中川圭太が目立っている。セ・パ交流戦では新人として初の首位打者に輝き、シーズンを通しても111試合の出場で打率.288(364打数105安打)と結果を残した。ドラフト7位指名の選手がここまでの活躍をしたのは予想外だったのではないだろうか。
一方でほかの指名選手たちは2019年シーズンの戦力とはなれなかった。2位の頓宮裕真は開幕スタメンをつかんだものの、コンバートや故障もあり28試合の出場で打率.198(91打数18安打)と結果を残せていない。
ドラフト1位の太田椋は高卒ということもあり、シーズンの大半を2軍で過ごした。終盤に1軍で起用されるも安打は生まれず、初安打は2020年シーズン以降にお預けとなっている。
ドラフト指名選手以外では、FAで阪神へ移籍した西勇輝の人的補償として加入した竹安大知は10試合で3勝をマークした。一方でヤクルトを戦力外となり、テストを経て入団した成瀬善久は0勝1敗、防御率7.32と結果を残せず1年で再び戦力外となった。
シーズン途中に中日からのトレードで加入した松井佑介と松井雅人は、目立った成績を残してはいない。
持木編集長は「頓宮がシーズン序盤の勢いを維持していたならレギュラー! という感じだったのですが…。ケガをした頓宮の代わりに上がってきた中川が活躍したからといって“予定どおり”とは言えません。荒西(祐大)、富山(凌雅)、左澤(優)ら社会人出身の投手が機能しなかったのも痛かったです。トレードで獲得した選手は前のチームと同じような働きでしたね」と即戦力となるべき社会人投手が期待に応えられなかったことが不満のようだ。
カバディ西山は「社会人の即戦力候補が活躍できなかった代わりに、宜保翔や太田椋が1軍出場しましたが、ドラフト時の思惑とは違ったとは思いますが、野手の今後の見通しが明るくなったのはよかったです」と持木編集長と同じく社会人投手が結果を残せなかった部分に言及。一方で高校生の野手が1年目から1軍で起用されている部分を評価している。
■オリックスの日本人選手獲得/ドラフト
1位:太田椋(内野手/天理高)
6試合/打率.000(13打数0安打)/0本塁打/0打点/0盗塁
2位:頓宮裕真(捕手/亜細亜大)
28試合/打率.198(91打数18安打)/3本塁打/10打点/0盗塁
3位:荒西祐大(投手/Honda熊本)
13試合/1勝4敗/51.2回/奪三振42/与四球18/防御率5.57
4位:富山凌雅(投手/トヨタ自動車)
1試合/0勝0敗/2回/奪三振2/与四球0/防御率0.00
5位:宜保翔(内野手/未来沖縄高)
8試合/打率.231(26打数6安打)/0本塁打/0打点/0盗塁
6位:左澤優(投手/JX-ENEOS)
4試合/0勝0敗/3回/奪三振3/与四球3/防御率0.00
7位:中川圭太(内野手/東洋大)
111試合/打率.288(364打数105安打)/3本塁打/32打点/9盗塁
育成1位:漆原大晟(投手/新潟医療福祉大)
1軍出場なし
■オリックスの日本人獲得選手/その他
成瀬善久(投手) ※ヤクルトを戦力外
6試合/0勝1敗/19.2回/奪三振13/与四球8/防御率7.32
竹安大知(投手) ※西勇輝のFA移籍による人的補償
10試合/3勝2敗/54回/奪三振37/与四球17/防御率4.50
松井佑介(外野手) ※中日からトレードで入団
7試合/打率.333(18打数6安打)/1本塁打/1打点/0盗塁
松井雅人(捕手) ※中日からトレードで入団
24試合/打率.194(36打数7安打)/0本塁打/2打点/0盗塁
投手ではディクソン、アルバース、野手ではロメロ、マレーロと最低限の計算できそうなベースとなる外国選手人が残留したのが大きかった。そのためシーズン開幕前に獲得したのはメネセスとエップラーの2人だけだった。
メネセスは開幕前に行われた侍ジャパンとメキシコ代表の強化試合で大当たり。期待を抱かせてくれたが、結果を残すことはできなかった。それだけではなくドーピング規定違反が発覚し、シーズン途中に解雇となっている。
エップラーは24試合に登板し4勝4敗、防御率4.02の成績だったが、安定感を欠いており、期待通りとは言い難い。
その一方でシーズン途中に中日から金銭トレードでやってきたモヤは64試合で10本塁打とメネセスに求めていた部分を埋めてみせた。外国人選手をめぐる全体的なチームの動きとしてはよかったと言えそうだ。
しかし持木編集長は「メネセスはダメですよね(笑)。大きな期待をしていたのに結果を残せないどころか、挙句の果てにドーピング規定違反ですよ…。チームの主力を担う外国人選手がいる広島や中日と比べてオリックスが違うのは、残留しているのが最低限のベースとなる選手なので、新外国人選手には大きな活躍が求められる点です。そのなかで最後に、モヤが期待を持たせてくれたのは明るい点でした」と残留した外国人選手の違いからくる、新外国人選手の役目を指摘している。
カバディ西山も「メネセスは3月のメキシコ戦であれだけ打っていたのに…」と落胆している。
■オリックスの外国人選手獲得
メネセス(内野手)
29試合/打率.206(102打数21安打)/4本塁打/14打点/0盗塁
エップラー(投手)
24試合/4勝4敗3H/31.1回/奪三振25/与四球9/防御率4.02
モヤ(外野手)
64試合/打率.244(242打数59安打)/10本塁打/35打点/0盗塁
これまでのオリックスは社会人出身の選手を多く獲得し、1、2年で彼らを入れ替えながら起用していくスタイルに見受けられた。しかし、ここ数年は高卒を中心に若い選手を多く指名している。
その結果、山本由伸、榊原翼、張奕と若い投手たちが次々に頭角を現しつつある。また野手でも太田や西浦颯大、宗佑磨など若い選手を育てていこうという意気込みが感じられる。日本ハムやメジャーリーグで実績を残したトレーニングコーチの中垣征一郎氏が、2019年から球団本部育成統括GM補佐兼パフォーマンス・ディレクターとして加入したことも大きいのかもしれない。
育成の手応えが感じられるまでにはあと数年かかるだろうが、根気よく若い選手を育ててチーム作りを行う姿勢には好感が持てる。
持木編集長は「これまでは応急処置というか手当て的に社会人の投手を獲得しては、彼らのなかから幾人かが1年だけ活躍して…というケースが多く見受けられました。そのため継続して計算できる投手が少なかったのですが、高卒の投手がようやく育ってきましたね。野手を見ても西浦とか宗とか含め、高卒の選手をなんとかしようという匂いは出てきました。同じようなタイプの選手が多い気はしますが…これからに期待です」と育成に力を入れ始めたことは評価している。
育成の意識が前面に出てきたオリックスでは、前述した中垣氏も若手の成長を底支えする。その成果が現れる今後に期待がかかる。
文=勝田聡(かつた・さとし)