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球場マニア・小野さんの全国野球場ベスト10〜入場した球場数は500超! 恐るべきマニアの野球人生

 東北・宮城にとんでもない“逸材”が潜んでいた! 球場あるところならばどこまでも! 球場行脚に命を捧げる男・小野さんの人生を振り返り、全国のオススメ球場を紹介してもらった。
(取材・文=高橋昌江/球場写真=小野哲弘)

スタジアムを愛する男、見参!

 2014年5月10日。宮城県仙台市のコボスタ宮城では、「仙台一高・仙台二高硬式野球定期戦」が行われていた。1900年(明治33年)から何度か中断されながらも開催されてきた仙台の春の風物詩。この定期戦を、コボスタ宮城のA21列76番から見ていた人がいる。小野哲弘さんだ。

「2時間15分。14−10。7−1で一高がリードしていたけど、7回に6点を取られて同点。二高が8回に逆転して勝ったんだよ。長かったけど、面白かった」

 この日も“指定席”で、心ゆくまで高校野球を堪能したようだ。

「コボスタはね、バックネット裏の傾斜がゆるいからキャッチャーの感覚で試合が楽しめるんだよね。でも、一番スタンドの角度がゆるやかなのは神宮球場。ピッチャーの変化球も全部、わかる。神宮球場の『宮』の字、宮の口と口の間の『ノ』が付いちゃいけないんだよ。ウ冠に口2つが正しい。知られているようで、知られていない事実なんです」

 この人の球場知識はすごい。何と言っても、これまで訪れた野球場の数は577球場。プラス、訪れた高校の野球グラウンドは164。これだけ野球場をめぐっている人はなかなかいないだろう。

 定期戦の後に、小野さん宅で話を聞いた。玄関が開かれると、そこにはなんと、人工芝があった。聞くと、神宮球場の張り替えで不要になった人工芝だという。その上で靴を脱ぎ、お邪魔する。

 小野さんの部屋は一見、何の変哲もないように見えたが、ウオークインクローゼットの中は、さながら「野球博物館」だった。本棚には野球関連の雑誌や本が並び、壁にはペナントやユニホームが飾られている。



きっかけは神奈川の高校野球

 小野さんは青森県むつ市の出身。中学3年の時、「ユニホームがかっこいい」と大湊高に一目惚れし、入学した。1年秋、チームは県大会で決勝に進むも、小野さんは「太鼓を叩きながら、笛も吹いていた」。2年秋からベンチに入り、背番号はずっと20番だった。ケガの多い選手で、両膝を壊したり、ヒジを痛めたり、背中に血がたまったり……。病院通いが多かったことから医療に興味を持ち、卒業後は神奈川県の准看護学校に通って、准看護師の資格を取得した。

 准看護学校時代の2年目は「松坂世代」が躍動した1998年。

「神奈川は高校野球がものすごく盛り上がっていて、横浜高校のグラウンドにも行きました。べらぼうに強い横浜高校を見て、神奈川、すごいな! と思い始めて」

 ここから観戦数が2ケタから3ケタに増え、高校野球を最も観戦した2005年は251試合。なぜわかるかというと、見た試合結果をすべて「球道賽悠紀〜蔦友暁風〜」と名付けられたノートに記入しているからだ。1冊目は1996年7月の武相vs金井(11−1※8回コールド)で始まり、2012年8月6日の東北vs大宮東(8−3)の練習試合の結果で終わっている。今は2冊目に突入している。

 スコアも付ける。最初は簡易的なものだったが、次第に色ペンを使用し、今や観戦前日までに記入できる部分は記入しておくほどの用意周到ぶり。試合中は双眼鏡を片手に選手の表情なども見たりして、スコアを付けて観戦している。

小野さん流細かすぎるスコアブックの書き方(特別バージョンを一部抜粋)
スマホを傾けながらご覧ください。

※学校紹介がやたらくわしく、細かい
※小野さんの通算観戦試合数が細かく記されている


※ユニホームの胸のロゴマークが色鉛筆でキレイに描かれている
※校歌の歌詞がフルで記載されている


訪問数を記録し、アルバムも作る

 神奈川や千葉の洗練された高校野球を中心に、全国の野球を観戦し続けていると、小野さんにある疑問が浮かんだ。

「これまで、自分はどれくらいの球場に行ったんだろう」

 行った球場を思い浮かべ、数え始めた。その頃、ちょうど、100球場目に突入。2002年7月24日の広島大会で訪れた旧広島市民球場だった。正式な球場だけでなく「スタンドが付いたちゃんとした球場になっている」という“小野さんルール”で、大学・社会人の野球場もカウントしている。

 500球場以上をめぐった中で、小野さんが特にお気に入りなのは横浜スタジアムだという。

「原点の球場。構造上、変化球が見えにくいけど。ライト方向からの、いわゆる“ハマ風”、あれに翻弄されて、負けていった球児がいっぱいいるんだよね」

 さらに小野さんは、訪れた球場の「球場アルバム」を作っている。当初は行った順番に並べていたが、現在は地域別に並べている。めぐった球場数を増やすため、大会中の試合開始前に試合が行われていない野球場をはしごしたこともあるそうだ。

キャッチボールでつながる縁

 今後は日本の最北端と最南端の野球場に行ってみたいという小野さん。まだ未踏の、鳥取県の球場を訪れて“全国制覇”することも目標だ。そんな小野さんに高校野球の魅力を聞いてみた。

「大学、社会人、プロも見ますが、高校野球は地域、風土、県民性、あらゆる化学反応がもたらす熱が混在する究極のアマチュア野球だと思っています。また、高校野球を肴に身分や年齢関係なく、いろんな人と話ができますよね。球場では多くの出会いがありました。函館オーシャンスタジアムの横でミットを構える久慈次郎像が、旭川スタルヒン球場前で振りかぶるスタルヒン像の投球を今まさに受け取ろうとしている。まるでキャッチボールをしているみたいですけど、高校野球の人と人との出会いもまた、キャッチボール。いろんなネットワークが、予想しない方向から生まれますから」

 こうした熱い思いを抱いて、この夏も小野さんは球場をめぐり、高校野球を追いかける。


小野さんが選んだ日本の野球場ベスト5+1

1位:富士北麓球場(山梨県)

▲標高1000メートルにある球場。センター後方には富士山が迫る

2位:阪神甲子園球場(兵庫県)

▲高校野球の聖地。いつ行っても心が洗われ、無心で観戦できる

3位:横浜スタジアム(神奈川県)

▲消防法ギリギリの規格で建設された、まさに一等の芸術作だ

4位:明治神宮野球場(東京都)

▲学生野球の聖地。スタンドの角度がゆるやか

5位:藤崎台県営球場(熊本県)



▲球場正面と左中間にせり出したクスノキがすごい

県立鴨池野球場(鹿児島県)

▲一塁側から見える桜島は圧巻。カメラアングルにこだわる

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