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【俺はあいつを知ってるぜっ!】飯塚悟史が日本文理時代、甲子園で見せた予想外の男ぶり

文=長嶋英昭

3年目で頭角を現した飯塚悟史(DeNA)。日本文理時代、甲子園で見せた予想外の男ぶり

大逆転で逃した日本一


 2009年夏の甲子園で中京大中京を相手に大逆転での日本一を“仕損なった”日本文理が、4年後には8点差をひっくり返されて日本一を逃すとはどんな宿命だったのだろう。

 2013年明治神宮野球大会・高校の部決勝、6回終了時点で8点リードしていた日本文理は終盤、沖縄尚学に大逆転を許し、8対9で敗れた。

 タイトルを目前で逃した日本文理の大井道夫監督は「ちょっと残念」と小さな声で呟くのが精一杯だった。しかし、エース・飯塚悟史に対するコメントを求められると「これで自分の課題がわかってくれたと思う。春以降はしっかり投げてくれるはず。打つ方も磨いていってほしい」と多弁になったのは、大きな期待の証だったのだろう。

 現在、DeNAで先発投手としての地位をつかみかけている飯塚悟史。今現在の奮闘を目にする度に、当時の記憶が呼び起こされる。

 あの沖縄尚学との決勝、飯塚は2本の特大ホームランを放ちながらも、完投で大逆転負けを喫した。不甲斐ない自分に腹を立てている様子を見て、「より高いレベルの舞台でも戦っていける選手だ」と神宮球場にいた観客たちは感じ取った。

潜在能力の高さとしたたかさ


 飯塚は150キロに迫るストレートと右打者の外に鋭く逃げるスライダーを駆使した本格派右腕。済美・安楽智大(現楽天)、前橋育英・高橋光成(現西武)らドラフト上位指名間違いなしと見られていた2人を追いかける存在として、2013年の秋に脚光を浴びた。

 秋の北信越大会では全4試合完投で533球を投げて優勝を果たすと、翌2014年は甲子園に初夏連続出場。夏の甲子園では全5試合完投で650球を投げ抜きベスト4。その底知れぬスタミナは飯塚の大きな武器に違いなかった。しかし、飯塚の筆者の個人的な最大の見どころだったのは、メディアを利用して心理戦を仕掛けるところだった。

 公式戦、特に甲子園行きをかけた大事な試合の前などで、報道陣から「次の試合の意気込みを」と問われた際、「フォークの精度を上げて、相手打線を打ち取っていきたい」という発言を何度か口にしていた。

 そのコメントは当然、“情報”として相手チームの耳に届く。相手打線にフォークという球種が強く頭に意識づけられる。そうなれば、もう飯塚に軍配が上がったも同然になるのだ。

 試合当日、飯塚はフォークをダミーにストレート中心の組み立てを平然と行なう。はったりだとバレていたとしても、フォークを意識させることで相手の打撃を崩すことに成功していた。このように心理的な駆け引きにも長け、常に自ら主導権を握ることができる稀有な能力の持ち主だった。

劣勢でのベストピッチ


 一方で、自分のシナリオ通りにいかない、予想外のところで真価を発揮するのも飯塚の魅力だった。

 飯塚のベストピッチとなったのは前述した2014年、3年時の夏の甲子園準々決勝・聖光学院戦だ。連投による疲労と、これまでの投球データが丸裸にされたことで、相手打線に主導権を握られる苦しい試合になった。

 ただ飯塚はここで新たな引き出しを開ける。毎回、走者を背負いながらも徹底的にコーナーを突く投球で決定打を許さず、粘り強い一面を見せたのだ。初回に1点を取られるも、それ以降の失点は許さず迎えた終盤、飯塚はここで力勝負のスタイルに変貌。

 思いっきり腕を振って投げたストレートは制球がばらつくものの、いい具合に相手打者に的を絞らせない。あの神宮大会決勝から終盤が課題と言われ続けてきたが、そのままの最少失点で最終回を凌いだ。9回完投で奪三振はたったの1。この数字は飯塚の成長を示すものだった。

予想外の下位指名。必然の1軍デビュー


 高校野球を引退後、飯塚はプロ志望届を提出し、ドラフト会議で吉報を待った。打撃もいい先発完投型投手。そんな特性はプロ球団からの評価をより高いものにするはずだった。

 しかし、飯塚の名前を読み上げられたのは本指名の終盤である7巡目。修正の難しそうな投球フォームが敬遠されたのか、当初の評判よりも下位での指名に驚きを持った人は少なくなかった。

 あれから3年、今季1軍デビューを叶えた飯塚はすでに4度の先発登板を果たした。下位指名の選手としてこの年数での1軍デビューは上出来だが、飯塚のポテンシャルを考えれば不思議ではない。

 まだ勝ち星はないものの、1試合平均5イニングを投げられているのは大崩れしていない証でもある。

 暑さと蓄積疲労で、夏場以降はローテーション投手が悲鳴を上げる時期。飯塚の出番は増えてくるだろう。まずはプロ初勝利を。そして、チームを2年連続のCS出場に導く活躍に期待したい。

文=長嶋英昭(ながしま・ひであき)
東京生まれ、千葉在住。小学校からの友人が、サッカーのU-18日本代表に選出されたことがキッカケで高校時代から学生スポーツにのめり込む。スポーツの現場に足を運びながら、日本各地の観光地を訪れることが最大の生きがい。現在はアマチュアカテゴリーを中心にスポーツ報道の仕事に携わっている。

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