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今年もドラマチックだった! 栗山英樹監督の采配が冴えた2016日本シリーズを振り返る


 25年ぶりのリーグ優勝を果たし、日本シリーズに進出した広島。日本一を賭けて戦ったマツダスタジアムは、25年の歳月を待ち焦がれたカープファンで球場全体が真っ赤に染まった。

 日本シリーズは、レギュラーシーズンとは球場全体の雰囲気が全く違う。ましてや、真っ赤に染まったスタンドからの熱気は、相手チームに想像以上の威圧感をもたらす。

 大方の予想通り、第1戦、第2戦はカープが地の利を生かし連勝。札幌ドームでもこの勢いのまま勝ち続けるように思えた。しかし、第3戦からは日本ハムが逆に地の利を生かし3連勝。王手をかけてアウェーでの広島の地に再び乗り込んだ。

 ここまでの流れでいくとマツダスタジアムでは広島が逆襲し、「“内弁慶シリーズ”になるのでは?」との声も挙がっていた。

“内弁慶シリーズ”にするはずだった!?


 「内弁慶」とは、家の中ではいばりちらすが、外では意気地のない様を表す言葉。“内弁慶シリーズ”とは、ホームでは強いが、ビジターになるととたんに弱くなること。日本シリーズになぞらえて、こう呼ばれている。

 思い返すと“内弁慶シリーズ”の様相が顕著に現れたのが、2003年の阪神タイガース対福岡ダイエーホークスの日本シリーズだろう。

 この年の阪神は星野仙一監督になって迎えた2年目のシーズン。ぶっちぎりでリーグ優勝し、18年ぶりの日本シリーズ進出を決めた。

 レギュラーシーズンから甲子園球場は連日異様な盛り上がりを見せ、18年間待ち続けたファンはリーグ優勝に涙した。

 今季の広島と2003年の阪神は、ファンが徹底的に後押しするという点が、非常に似通っている。

「甲子園では負けない! いや、負けさせない!!」

 そんな意気込みを当時の阪神ファンの1人1人が持ち続けていた。

「ここで負けるわけにはいかない」

今回も、そんな思いのカープファンが満を持して迎えた第6戦だった。

栗山監督の名采配が光った


 第6戦さえ乗り切れば、第7戦は引退を決めた黒田博樹が登板する。第7戦までもつれれば、マツダスタジアムの雰囲気は想像を絶する盛り上がりを見せるはずだ。

 一方、第6戦で勝負を決めたい日本ハムの栗山英樹監督は、大谷翔平を先発させずにベンチで待機させる戦略に打って出た。

 試合展開を見ながら抑えで大谷を起用すると、栗山監督はメディアに匂わせていた。いわゆる試合前の情報戦である。

 第6戦は、日本ハムがリードする展開で進むも、6回に広島が同点に追いつき、8回表2死までは同点ながらカープの流れで進んでいた。

 しかし、2死から連投を重ねてきたジャクソンが連打を浴び、満塁で迎えた中田翔の打席で事が起きた。

 栗山監督が、ネクストバッターズボックスに大谷を立たせたのだ。

 中田が凡退すれば、大谷に打席は回らない。中田が出塁して勝ち越せば、「代打・大谷」を見せかけにしつつ、大谷で8回、9回を逃げ切る気配を漂わせただけで、実のところ栗山監督には、代打にもマウンドにも大谷を送る気はなかっただろうと思われる。

 まさに、二刀流のプレッシャーを有効活用した栗山監督の名采配だった。

 結局、ジャクソンはコントロールを乱し、中田に押し出しの四球。次の打席に大谷が代打で立つことはなかった。

 栗山監督は大谷をゲームに使わずして、大谷の投手としての、また打者としての威圧感だけでカープを土俵の外に追いやったのだ。


目が離せなかった今年の日本シリーズ


 8回表に日本ハムは一挙6点。このビッグイニングで、カープファンは完全に意気消沈してしまった。

 もはやスタンドを真っ赤に染めたカープファンの威圧感は失せ、その瞬間、“内弁慶たち”は姿を消してしまった。

 初戦は、真っ赤なスタンドの後押しで、見事に大谷を攻略したにもかかわらず、最後は、大谷の雰囲気に呑み込まれてしまった。

 栗山監督が日本一となった直後のインタビューで漏らしたこの言葉が、今年の日本シリーズのすべてを言い表している。

「どっちに転んでもおかしくないゲームの連続だったので、まだ実感が沸かない」

 何か、ふとしたきっかけで大きく動くゲーム。ファンの気持ちの変化で球場の雰囲気も変わり、ここでもゲームが動く。

 目が離せなかった今年の日本シリーズ。やっぱり野球は面白い。


文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。

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