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「キャンプ恒例! 各球団の『007』がチェックした秘密兵器」ランキング

 12球団がキャンプインして、1週間が経過。この時期のスポーツ紙を賑わすのが、各球団の「007(ダブルオー・セブン)」の新戦力チェックだ。

 読者の皆さんは「007」の意味をご存じだろうか? これは野球マスコミ用語で、各球団の「先乗りスコアラー」いわゆる戦力分析を専門にしたスタッフを指す。007とはイギリスのスパイ小説の主人公であるジェームズ・ボンドのコードネーム。つまり、スパイのように他球団を極秘で偵察し、その戦力を分析するのがプロ野球界の「007」の仕事なのだ。

 いつの頃から「007」と呼ばれたのかは不明で、しかも極秘どころか各スポーツ紙にペラペラと新戦力を喋ってしまうあたり、本当のスパイだったら大変なことになっているだろう。しかし、そこは突っ込まずに、今週は各球団の「007」たちがチェックした、今キャンプの秘密兵器たちをランキング形式でまとめてみた。


「去年とは違う」と007たちが完全復活を予想!
――栗原健太(広島)

 昨季は16年ぶりにAクラス入りした広島。その歴史的快挙に貢献できなかったのが、かつての4番打者・栗原健太だ。長く下位に低迷していた暗黒時代の中軸を担っていただけに、その心中は察するに余りある。昨季は右ヒジ手術の影響というよりも、不振で2軍暮らしが続き、なんと2軍で規定打席に到達するという悔しいシーズンとなった。

 その栗原はここまで順調にキャンプを消化している。5日の特打では45スイング中5本の柵越えをマーク。隣の打席で柵越えゼロに終わった、助っ人・キラと好対照な仕上がり具合を、各球団の007たちに見せつけた。

「良くなっている。当たりを見ればわかるが、去年とは大違い」
「打球の角度とか、バットの軌道もいい」

 と、他球団のスコアラーたちは昨季との変貌ぶりに驚き、完全復活を予想していた。

007を釘付けにした強肩外野手とは!?
――緒方凌介(阪神)

 打撃で他球団の007を驚かしたのが栗原なら、その守備力で007の視線を釘付けにしたのがプロ2年目の緒方凌介。キャンプ中のシートノックでライトから好返球を連発。三塁、本塁にワンバウンドでストライク返球を続け、ノックにもかかわらず観客からも拍手が上がり、巨人・三澤興一スコアラーの視線も釘付けとなったという。

 PL学園高、東洋大を経て2012年ドラフト6位で阪神に入団した緒方。大学4年春に右ヒザ前十字じん帯を損傷、同7月に手術をした影響で、1年目の昨季はファーム暮らしが続いた。しかし、昨年11月の台湾ウインターリーグでは22試合に出場し打率.348を記録。11盗塁(失敗1)で盗塁王に輝くなど、充実のオフを過ごした。昨年の秋季キャンプでは、あの掛布雅之DCから「青木(宣親/ロイヤルズ)になれる」と太鼓判を押された緒方。飛躍が期待される外野手を、007ならずともファンも覚えておいて損はないだろう。

体重だけじゃない! 実力も評価うなぎ登り!
――井上晴哉(ロッテ)

 007たちはもちろん、他球団のドラフト入団選手たちにも目を光らせている。6日には巨人、中日、ヤクルトの3球団のスタッフが、日本生命からドラフト5位でロッテに入団した井上晴哉をチェックした。

 日本人選手最重量級の体重114キロを誇るルーキーの魅力は、なんといっても日本人離れしたパワー。この日の打撃練習でも、逆風をモノともせず快打を連発。
「器用に低めのボールも拾えるし、打席での雰囲気がいい」
「体形からすれば、中西太さん(元西鉄)ぐらいの魅力はある」

 と、他球団007から高評価を得た。
 居残り特打では、200スイングで68本の柵越えを放ち長打力をアピール。チーム待望の長距離砲として、今キャンプでは評価もうなぎ登り。井上は「ホームランもそうだけど、チームに足りないバッティングをしたい」と、チャンスに強い頼りになる打者を目指して、実戦形式が増えていく2次キャンプでも結果を出していく。

▲井上晴哉(社会人・日本生命時代)


他球団007が困惑! バラエティーに富んだ投手リレーが実現か?
――救援投手陣(西武)

 007たちは今季、他球団がどんな戦いを仕掛けてくるのか、戦略を含めてそのチーム構成にも目を光らせている。そういう意味で、他球団の007たちが警戒しているのが西武の救援投手陣だ。ある球団のスコアラーが「リリーフが特殊なタイプばかり」というとおり、今キャンプの西武ブルペンでは、変則投法の投手がズラリ揃って投げ込みを行っている。

 プロ7年目の藤原良平は昨季、イースタンで11勝(7敗)を挙げ最多勝投手に輝いた右腕。その投球フォームはトルネード気味で、サイドから威力あるボールを繰り出す。2011年ドラフト2位の小石博孝は、テークバックが小さい変則投法が売りの左腕。同じ左腕の?橋朋己は、昨季の奪三振率(奪三振数を9回あたりに換算した数字。先発完投した場合、いくつ三振を奪うか)はなんと13.5個を記録した。サイド気味で球の出所が見えづらいフォームと球威あるストレートが特長。さらに昨季は先発で8勝(8敗)をマークしたサイド右腕の十亀剣が中継ぎに配置転換濃厚と、12球団を見渡してもこれだけバラエティーに富んだ中継ぎ陣は他になし、と断言できる陣容だ。

 かつてネット上では「俺達」と呼ばれていた西武若手投手陣。2軍や点差がついたプレッシャーの少ない場面で好投するも、1軍や接戦で炎上し、再び2軍落ちのループを繰り返す投手があまりに多く、ファンからは若干の親しみも込めてそう呼ばれていた。だが、今季のバラエティーに富んだ新しい「俺達」は、その不安を一掃する活躍をみせてくれるかもしれない。

5球団007が騒然となった「石直球」とは?
――呉昇桓(阪神)

 その特異な西武中継ぎ陣をも凌駕する注目を浴びたのが、阪神の新外国人投手・呉昇桓(オ・スンファン)の初ブルペン。セ・リーグの他5球団のスコアラーと、100人近い報道陣の視線が呉昇桓に集まった。変化球を交えた61球は、007たちを震え上がらせる球筋だった。

 あるスコアラーが言う「すごく重そう」というストレートは、韓国時代には「石直球」と呼ばれており、呉昇桓の自慢の球種だ。

「ボールに力があって、キレより重さがある」
「打ったところで重いから飛ばない」
「ボールの力としては(藤川)球児(現カブス)ぐらいある」

 と、他球団007からは絶賛の嵐。本人は「今日は初めてのブルペンだったからバランスを重視した」と、全力投球ではないことを示唆する余裕のコメントを残した。

 昨季まで在籍していたサムスン(韓国)では9年間で444試合に登板。通算投球回数510回1/3で奪三振625個、通算277セーブをマークした韓国No.1ストッパーが、いよいよベールを脱いだ。 抑え不在に泣いた昨季の阪神の救世主になることができるか、これから続く紅白戦やオープン戦での登板も要注目だ。


■ライター・プロフィール
鈴木雷人(すずき・らいと)/会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。"ファン目線を大切に"をモットーに、プロアマ問わず野球を追いかけている。Twitterは@suzukiwrite

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