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〈流しのブルペンキャッチャー・安倍昌彦〉2014年ドラフト候補セレクション

※『野球太郎No.007』に掲載されたものと同じです。


 2013年ドラフトの結果は予想通り、その上位を大学生、社会人の投手が占めた。
 2位指名までの24人の中で、大学生投手が4人、社会人投手は8人で、その半数にのぼり、逆に高校生投手は、1位指名の松井裕樹(桐光学園高→楽天)、鈴木翔太(聖隷クリストファー高→中日)の2名だけにとどまって、今季のドラフトに、ある“色”を呈した。

 そして、2014年。

 2014年ドラフトの色もかなり特徴的なものになりそうだ。

 ズバリ、「投手ばかりのドラフト」。

 今季ドラフトは指名選手89人(育成ドラフト含め)のうち、58人の投手が指名され、その比率はおよそ65%。これが来季は、総指名選手100名、そのうち75%の75人が投手であると、ちょっと早いが大胆予想だ。

 2014年ドラフトの主力を成す投手たちの名前を、ざっと挙げてみよう。
 そのほとんどが大学生、高校生である、とそこまで言い切ってしまおう。

 大学生を北から追っていくと、総合力で全国トップクラスの快腕・玉井大翔(東農大北海道)がまず挙げられる。サイドハンドから打者の手元で変化するクセ球がきびしい樋渡涼太(苫小牧駒大)も、今季の成長が著しい。

 スライダーに独特の球筋を持つ左腕・秋山翔夢(八戸学院大)も打ちにくく、同じ左腕の佐野泰雄(平成国際大)は埼玉・和光高当時から140キロ後半の速球で注目され、大学ではリーグナンバーワンの左腕に成長。

 小林慶祐(東京情報大)は体格も堂々と140キロ後半に及ぶ速球とスライダーで真っ向勝負をかけられる剛腕。

 東都大学リーグでは、速球の破壊力ならすでにプロ級の山?康晃(亜細亜大)と入学時から注目の島袋洋奨(中央大)が双璧だが、島袋には今秋の制球の乱れが懸念される。今秋から“投の柱”の一人として緩急の投球を繰り広げる福本翼(青山学院大)に、まだほとんどリーグ戦経験はないものの、素質は太鼓判が押せる田中大輝(國學院大)の両左腕の台頭も楽しみだ。

 東京六大学リーグの有原航平(早稲田大)、山?福也(明治大)、石田健大(法政大)の3人は、“重複”が予想される2014年ドラフトの目玉たちだ。


▲石田健大(法政大)

 北陸では、投手らしい粘っこい速球で詰まらせる江口大樹(金沢星稜大)が光り、関西に下ると、快速球の酒居和史(大阪体育大)に投球術抜群の左腕・大橋直也(大阪学院大)が控える。

 九州には、変則左腕・浜田智博(九州産業大)。この投手の打ちにくさは“商売物”になる。今春リーグ戦ではノーヒットノーランを記録している。

 高校生に移ろう。藤浪晋太郎(阪神)と大谷翔平(日本ハム)を合わせたような大器・安樂智大(済美高)と、夏の甲子園優勝投手・?橋光成(前橋育英高)については、今夏の“激投”に耐え忍んだ体調の立て直しを最優先に。

▲安樂智大(済美高)

 140キロ台の速球に長打力も非凡な松本裕樹(盛岡大付高)に、長身から角度十分の投球の佐藤駿(八戸学院光星高)と石川直也(山形中央高)。しなやかな腕の振りとバネに効いたフォームの大和田啓亮(日大東北高)の東北勢が、まず楽しみ。

 関東では、本格派左腕・田嶋大樹(佐野日大高)に、春夏の甲子園で奮投した小島和哉(浦和学院高)。三輪昂平(日大三高)、佐藤雄偉知、青島凌也(ともに東海大相模高)の剛速球右腕。

 関西に飛べば、右の立田将太(大和広陵高)、左の島原達也(太成学院大高)の140キロコンビ。

 四国には、即戦力でもおかしくない高次元右腕・岸潤一郎(明徳義塾高)がいる。

 今年、ドラフトをにぎわわせた社会人には、今のところ、飯田哲矢、坂寄晴一(ともにJR東日本)、井上翔夢(JR九州)の3投手。いずれも、社会人1年目で急激に変わった左腕たちだ。

 野手は少ない。来春以降の台頭を熱望する。
 捕手は、抜群の野球センスを持つ栗原陵矢(春江工高)。現状に甘んじることなく懸命に心身を鍛えれば、プロでレギュラーも夢じゃない素材だ。

▲栗原陵矢(春江工高)

 内野手ではまず、?原樹(常葉学園菊川高・遊撃手)のプレーに旺盛な生命力を感じる。高濱祐仁(横浜高・遊撃手)、岡本和真(智辯学園高・三塁手)のパワーは超高校級だ。

 大学では、俊足・強打の中村奨吾(早稲田大・二塁手)が頭一つ抜けた存在。外崎修汰(富士大・二塁手)、糸原健斗(明治大・三塁手)の実戦力が、これを追う。

▲外崎修汰(富士大)

 外野手は、すでに今夏時点で高いレベルでの三拍子ぞろいを立証した浅間大基(横浜高・中堅手)。桐光学園高・松井裕樹の速球をライトスタンドに運んだ体の反応の鋭さと見事なバットコントロールは間違いなくプロでレギュラーを望める。大西千洋(阪南大高・中堅手)の俊足とスピードあふれるフィールディングも魅力十分だ。

 社会人の野手で、現状挙げられるのは、稲垣翔太(Honda熊本・三塁手)だけ。今季高卒2年目の新鋭とは思えない落ち着いた所作で、体格のわりに大きな野球をできるのが将来性だ。

▲稲垣翔太(Honda熊本)

安倍昌彦のドラフト1押し
?橋光成(前橋育英高)
188センチ82キロ・右投右打


こいつはただ者ではないと感じたのは、今夏甲子園での囲み取材での受け答え。とってつけたような決まり文句を使わず、自分の言葉で腹から声を出して語っていた。野球については説明の要なし。誰が見ても逸材だ。

安倍昌彦のドラフト2押し
有原航平(早稲田大)
187センチ93キロ・右投右打


ヒジに不安を抱えながら、実戦力に成長の跡を見せながら、4年間投げ通そうとしている。長く世の話題になり、プレッシャーのかかる環境で長く結果を出してきたのは、この上ない非凡さだ。今秋の投球は菅野智之(巨人)クラスだった。

安倍昌彦のドラフト3押し
岸潤一郎(明徳義塾高)
175センチ73キロ・右投右打


投手の“匂い”をこれほど漂わせている投手も、なかなかいない。1年夏に甲子園で快投を見せた時、「こいつは桑田だ」と思った。この体でなんでこの球威!! そんな意外なパワーとマウンドでの殺気。桑田真澄(元巨人ほか)になれるヤツだ。


■プロフィール
安倍昌彦(あべ・まさひこ)/早稲田大学2年まで捕手としてプレーし、3、4年時は母校・早大学院の監督を務める。その後、スカウト的観戦を30年以上に渡って続けるかたわら、2000年秋から「流しのブルペンキャッチャー」として有望投手の球を受け始める。『スカウト』シリーズに続いて、『監督と大学野球 若者が育つということ』(日刊スポーツ出版社)を上梓。twitterアカウントは@abe_masahiko

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