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file#026 近藤健介(捕手・日本ハム)の場合

『野球太郎』ライターの方々が注目選手のアマチュア時代を紹介していく形式に変わった『俺はあいつを知ってるぜっ!』
今回は中学軟式野球ライターの先駆者、『中学野球太郎』創刊に大きく関わり、『野球太郎』でも数々のプロ選手の取材をこなしている大利実さんに書いていただきました! 内竜也(ロッテ)に続いて2回目の執筆です!


近藤と?城の関係


 もしかしたら、キャッチャー近藤健介は誕生しなかったかもしれない。
 東京・修徳中でプレーしていた近藤。中学3年のとき、横浜高校が熱心に誘っていたのは福岡・粕屋フェニックス(ボーイズ)で活躍していた?城俊人だった。九州国際大付から横浜DeNAベイスターズに進んだ?城である。?城の強肩を買っていた横浜高校は、?城を正捕手の有力候補として考えていたのだ。
 一方の近藤も、修徳中時代には駒沢球場のライトスタンドに放り込むなど、名の知れた強打者であった。2年生まではショートで活躍し、2年夏には全中出場。3年生が抜けたあとキャッチャーになり、強豪中学の主軸で活躍していた。
 中学時代のプレーを何度も見たことがあるが、バッティングにおけるインパクトの強さは中学生とは思えぬ迫力があった。チームで約2キロの木製バットを振り込み、バットを振る力を養っていた。




自ら横浜に売り込む


 進路を考えるとき、近藤の頭にあったのは「強い高校で自分の力を試してみたい」ということだった。小学生のときから「プロになりたい」という夢もあり、プロ野球選手を多く輩出する横浜に興味を抱いていた。
 ただ、近藤の活躍は、横浜首脳陣の耳には届いていなかった。硬式と軟式では注目度が違う。横浜は硬式の選手を中心にスカウティングをしている現状もある。
 そのため、近藤は自らのプレーを売り込む形で横浜に入学することができた。同学年に15人以上の推薦入学者がいるが、軟式出身者は近藤ただ一人だった。そして、?城は九州国際大付進学の道を選んだ。
 じつはこの二人、小学6年生のときに同じ大会に出場している。毎年12月に行われるNPB12球団ジュニアトーナメントである。
 千葉に自宅のある近藤は千葉マリーンズジュニア、?城は福岡ソフトバンクホークスジュニアのそれぞれ正捕手として活躍した。近藤に「印象に残った選手は?」と聞くと、「?城です。肩が強かったので印象に残っています」と即答する。



▲上・近藤健介、下・?城俊人(九州国際大付→DeNA)


非凡なバッティングセンス


 近藤は高校入学後すぐに頭角をあらわし、1年春を過ぎたあたりから、ショートのレギュラーを獲得した。横浜・渡辺元智監督が褒めていたのがバッティングである。「ポイントが近いため、手元まで引き付けてスイングができる。バッティングセンスが高い」と評価していた。
 1年夏はベスト8で敗れたが、準々決勝の横浜隼人戦で存在感を見せた。4点ビハインドで迎えた9回表、先頭打者としてレフト前ヒットで出塁。外のボールを手元まで引き付けて、レフト方向へはじき返した。プレッシャーがかかる場面で、結果を残せる心の強さを見せた。



 1年秋からは中学時代に務めていたキャッチャーにコンバート。その後、バッティングを生かすために内野手に戻ったこともあったが、最終的にはキャッチャーに落ち着いた。捕ってから2.0秒を切る二塁送球は、肩の強さだけでなく、ベース上に投げられるコントロールも安定。しばしば、イニング間の二塁送球だけでスタンドをわかせていた。
 もし、?城がいれば、正捕手争いはどうなっていたか興味深い。


目標は阿部慎之助


 近藤が本気でプロを意識したのは、2つ上の先輩・筒香嘉智(DeNA)がプロ入りを果たしたときだった。つまりは1年秋である。
「ドラフト1位は無理でも、筒香さんが行けたらのなら、自分もプロに行ける」と思ったという。飛距離では負けているが、バッティング技術では負けていないという自負があった。キャッチャーとしても、甲子園に3度出た中で「こいつ、やるな」と思うライバルには出会わなかったという。
 プロでは1年目から、1軍のスタメンマスクをかぶり、クライマックスシリーズでも打席に立った。
 目指すは打てる捕手だ。高校時代に語っていたのは、阿部慎之助(巨人)への憧れだ。顔もすこし似ているような気がする。
 今年の開幕戦、DeNAのスタメンマスクをかぶったのは?城だった。小学生時代から知るキャッチャーに負けてはいられない。





文=大利 実(おおとし・みのる)/1977年生まれ、神奈川県出身。中学軟式野球ライターとして草分け的存在で、現場からの信頼も厚い。著書に『中学の部活から学ぶ わが子をグングン伸ばす方法』(大空ポケット新書)がある。有料メルマガ『メルマガでしか読めない中学野球』も配信中。

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