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ドラフト候補が楽しみ…じゃない!? 社会人野球の楽しみ方《味あるベテランのプレーを見よ》

 アマチュア野球ではドラフト候補選手が中心に回ることが多い。

 しかし、高校や大学とは異なり、長い期間プレーが可能な社会人野球では、プロと同じように30歳前後から35歳あたりの脂が乗り切った選手たちがドラフト候補を牛耳ることがしばしばある。以前はオリンピックで脚光を浴びることがあったが、それがなくなってしまったいま、「社会人の重鎮たち」の名前が世に出ることはほとんどない。

 社会人野球を取り巻く環境は変わってしまったものの、レベルの高さは変わりない。社会人からプロ入りした選手がすぐに活躍するのは、「重鎮たち」の洗礼を乗り越えたからこそ、プロで順応できた、という見方は過言ではないだろう。そんなドラフト候補だけではない社会人野球の面白さを、『週刊野球太郎』の5月の特集である「格差」に着眼して社会人のルーキーとベテランを紹介したい。

☆名門揃いの中に光るルーキー・源田壮亮
社会人でも強い“松坂世代” 澤村幸明


 若返りに成功したトヨタ自動車打線。2番二塁手・河合完治、3番中堅手・多木裕史、4番三塁手・樺澤健、5番一塁手・瀧野光太朗、6番捕手・木下拓哉と、名門高校・大学出身の大卒2〜4年目のドラフト候補がずらりと並ぶ。しかし、中軸を担う彼らよりも輝いていたのが、9番遊撃手のルーキー・源田壮亮(大分商高〜愛知学院大卒)だった。

 土のグラウンドで前に攻めながら、高いバウンドの打球を難なくグラブに収めてアウトにする。河合も瀧野も樺澤も、外野に回された多木だって、本当は遊撃手でプロに売り込みたいはず。でも、こういうプレーを見せられたら「ショートは源田で決まり!」と言いたくなる。


 「社会人の遊撃手」というと今年35歳の“松坂世代”である澤村幸明(日本通運)に代表されるように、基本に忠実な選手が多い。しっかりと回り込んで、股を割って、捕ると投げるを一体化させる。安達了一(オリックス)が地味に見えるものの、高い身体能力がありながら、東芝時代に培った基本に沿って動いているから。アクロバティックな今宮健太(ソフトバンク)と比べると、印象度では劣ってしまう。


 澤村は以前「僕に身体能力があったら、もう少し違う野球人生になっていた」と話していた。身体能力が足りない分、徹底的に技術を磨いて、社会人で長生きできる遊撃手になったのだろう。源田には高い身体能力と技術の両方がある。2つを持ち合わせているというのは、プロで長く遊撃手のレギュラーを張れる可能性があるということ。源田は野性的なサーカスプレーと基本に忠実なプレーを両立させている。だから華があるのに、雑に見えない。

 俊足を生かしてセーフティーバントを決めるなど、状況を見て立ち回るセンスもある。もう少し体が強くなれば、来年のドラフト上位候補間違いなし。今年の都市対抗あたりで1番を打てるようだと、夢が膨らむ。

☆昨年のセンバツで好投! 田島大樹は
重鎮・片山純一のもとでさらに成長!


 レベルの高い社会人で、昨年は山岡泰輔(東京ガス)が高卒1年目から即戦力のピッチングを見せた。今年は佐野日大高からJR東日本に入った田嶋大樹が、スポニチ大会から順調に活躍している。

 田嶋は変則の大型左腕。インステップからの強烈な腕の振りは魅力的だが、体への負担が大きいからか、高校時代は最後までケガに泣かされた。体力的に社会人でも大丈夫なのか。思い切って腕を振れるコンディションにあるのか。アバウトな制球力で通用するのか。不安な要素はいくつかあった。

 ところが、3月のスポニチ大会から、田嶋は社会人野球に馴染んでいた。予想以上と言っていいだろう。思い切り腕を振って、ストレートで空振りを奪う。左打者をインスラで追い込んだ後、外のスライダーで空振り三振に仕留める。荒れ球の怖さも残しつつ、コントロールもよくなった。高校を卒業したての18歳とは思えない、堂々とした投球内容だった。


 田嶋の投球を見て思い出したのが、JR東日本の絶対的左腕・片山純一。変則気味のフォームから140キロの球速表示以上に打ちにくい球を投げ込む。30歳を過ぎた今でも、プロに入れば中継ぎで即戦力になりうる実力者。大事な場面では必ずと言っていいほどマウンドに立ち、堀井哲也監督の信頼に答えてきた。


 田嶋の完成形は、おそらく片山だろう。「もしも片山がプロに入ったら」は夢物語だが、「今よりも10歳以上若い片山がプロに入ったら通用するか」は、田嶋が検証してくれるに違いない。10年後の自分の「あるべき姿」をお手本にできる田嶋は幸せ者。本当にいいチームに入った。


■ライタープロフィール
久保弘毅(くぼ・ひろき)/1971年生まれ、奈良県出身。元アナウンサーという異色の経歴を持つスポーツライター。得意技は実況風ライティング。ハンドボールライターの第一人者でもある。ブログ「手の球日記(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/handjpn/)」

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