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第20回 『ドカベン』『歯ぎしり球団』『クロカン』より

「球言(たまげん)」とは、名作&傑作マンガに登場する野球格言≠フことである。野球というスポーツの真理を突いた一言、技術を磨く名言、駆け引きを制する名台詞の数々は、現実のプレーや采配にも役立ったり役立たなかったりするのだ!
 祝・連載20回目! 記念して野球マンガに登場する「野球魂のこもった迷言」=略して魂言≠再びお届け!

★球言1



《意味》
鳴門の牙′「飼小次郎が、土佐丸高のチームメイトに浴びせた言葉。甲子園開会式の前夜、「最後の仕上げ」と称し、愛犬の嵐(土佐犬)をけしかけた末に飛び出したワンパク発言。

《寸評》
体罰、ダメ、ゼッタイ! 甲子園まで来て部員が死んだら、出場停止どころじゃないから。間違いなく土佐丸ビクともするから。やがてプロへと進み、四国アイアンドッグスを率いるまでに成長する闘将は、高校時代からリーダーシップが半端ない。

《作品》
『ドカベン』(水島新司/秋田書店)第13巻より

《解説》
第56回を迎えた夏の甲子園大会。開会式前日に姿を現した土佐丸高ナインは、山田太郎の入部した明訓高と同じ、芦田旅館に宿泊する。 深夜、ユニフォーム姿で外出する土佐丸高の選手たち。キャプテンの犬飼小次郎が、空き地でおもむろにベースを投げ捨て、闘犬・嵐を彼らの前に解き放つ。
「おびえるな これをやりとげることによって きさまらはこわいものなど ひとつとしてなくなるのだ」
その光景を見ていた山田たち明訓高ナイン。犬飼の凄まじい気迫を目の当たりにし、「なんという説得力だ」と思わず納得してしまう。
「部員はくさるほどいる おまえが死んだところで 土佐丸はビクともしねえぜ」
嵐の反撃に遭い、左肩を負傷したチームメイトの戸浦へ、犬飼が叫ぶ。非情な彼の態度を前に、明訓高のエース・里中智も「これが野球か」と唸るばかりだった……。


★球言2


《意味》
野球を始めてから十数年、一度もストライクを投げたことのない悲運の投手・後藤手術が、自前で買ったスイス製の塁を抱きしめながら放ったこだわりの一言。

《寸評》
「〜こだわりの一言」とか、それっぽく書いてみたものの、解説する側も「……何だコレ?」と戸惑いが隠しきれません。出典は「小さいころからあまり野球がうまくできず」「プロ野球なんかも別にどうでもよい」という吉田戦車による野球ギャグ。

《作品》
『歯ぎしり球団』(吉田戦車/スコラ)より

《解説》
医師であり、町の名士でもある父の金と権力のおかげで、小・中・高校と投手を続けてきた後藤手術。現在、所属する「歯ぎしり球団」でも、彼はエースを務めていた。コントロールが悪く、まったくストライクを投げられない手術は嘆く。
「ぼくはパパのオモチャだ 野球をあきらめ 医者になったパパの未練人形だ!」
そんな彼はある日、家で父と口論になる。自前で購入した「塁」を巡っての諍いだった。
「いいだろう 父さんにも貸してくれよ」
「だめだよ おれの塁だ! 欲しかったら自分で買えばいいだろ」
塁を死守しようとする手術に、「そんな大事な物なら なぜ試合で使おうとした!」と父が詰め寄る。手術は語気を強め、はっきりと反論した。
「塁は踏まれてこそ塁! 踏まれることで他人の野球エキスがこいつにしみこみ 塁として熟成されていくのよ それを枕にして眠るのだ」


★球言3


《意味》
絶体絶命のピンチに陥ったときこそ、自分の殻を打ち破り、腹を決めて開き直れ、という鷲ノ森高・黒木竜次監督によるアドバイス。土壇場で実力を発揮するための心得。

《寸評》
元気があれば野球もできる。何気にイノキイズムの継承者であるクロカン。カリスマの達する真理は、みんな同じなのか。「バカ足 バカ肩 バカ頭」の三拍子が揃った「バカばっかのチーム」を目指したクロカン野球は、試合終盤に何度も驚異の爆発力を見せつけた。

《作品》
『クロカン』(三田紀房/日本文芸社)第18巻より

《解説》
廃校が決定した鷲ノ森高は、残された2年の13人で野球部最後のチームを結成する。
群馬県秋季大会の一回戦。夏の代表校・桐野高を相手に、六回を終えて7点のビハインド。いきなりコールド負け寸前のピンチに立たされてしまう。
崖っぷちの状況にもかかわらず、いまいちピリッとしないナインに対し、鷲ノ森高のクロカンこと黒木竜次監督が檄を飛ばす。
「普通に考えたら 誰がこんな逆境で野球やるか! しかしお前らは鷲ノ森の野球を選んだ! お前ら まともじゃねえ! 完全におかしい!」
それならば「あれこれ考えるな!」とクロカン。
「苦しい時はバカになれっ! 今こそ正真正銘のバカになれっ!」
バカばっかりのチーム。それこそが、クロカンが求め続けた理想のチーム像だった。
「バカに…バカになるんだ」
五番の田代良治が、打席で念じる。鷲ノ森高の怒涛のような反撃が始まった。


文=ツクイヨシヒサ
野球マンガ評論家。1975年生まれ。著書に『あだち充は世阿弥である。──秘すれば花、『タッチ』世代の恋愛論』(飛鳥新社)、編著に『ラストイニング勝利の21か条 ─彩珠学院 甲子園までの軌跡─』(小学館)など。

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