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《野球太郎ストーリーズ》西武2013年ドラフト1位、森友哉。球史に残る打者になれる素養持つバットマン(2)

2018-05-15(火)12:00

《野球太郎ストーリーズ》西武2013年ドラフト1位、森友哉。球史に残る打者になれる素養持つバットマン
即戦力投手への1位指名が続くなか、西武が果敢に単独指名したのは、小柄な高校生捕手だった。その才能を誰よりも買うライターが、思いの丈を書き綴る。(取材・文=谷上史朗)

◎今から抱く4割の期待


 阪神を代表例で書かせてもらったが、一言言いたくなるほど、森が素晴らしい選手ということだ。もちろん、読者からも「そんなことはわかってる!」と声が返ってきそうだが、子どもじみた言い方をすると、思っている何倍も、もしかすると何十倍もすごい打者なのだ。

森の試合は、レギュラーとなった1年秋から練習試合や日本代表のテレビ観戦も含めると、これまで50試合以上は見てきた。何度その打撃にうならされたか。ただ、森自身も自分がどれくらいすごいかを自覚していない。だから取材の時にはつい、こちらの熱が入るのがパターンで、ドラフト後に話を聞いた時もそうだった。

 ある話題から「4割話」になった。「プロで4、5年活躍した頃には、4割の可能性とか言われてそうな気がする」。そんな話を向けると「無理っす。4割なんて夢の世界ですよ」と森は表情を崩し一蹴。現時点の本人とすれば当然の反応だが、言いたかったのは、仮にどこかで「夢の世界の話」が出た時、そこに名前が挙がるような打者になっていてもおかしくない、ということだ。

 プロ入り前からこんな話をすると、森でなくてもほぼすべての人が「何を今から…」と思うだろう。しかし、そう思わない人を1人知っている。大阪桐蔭高の西谷浩一監督だ。

「西岡(剛/阪神)がロッテで首位打者を獲って、じゃあ、森とどっちがとらえる能力が上かって聞かれたら、間違いなく森。今で比べても森の方が上じゃないかって思うくらいです(笑)。その森がこの先どれくらい打つかと考えれば、当然、期待は高くなります。1年目でも、もし守備も何も関係なく、年間通して打席に立ったらどれくらい打つのか…。1ファンとして単純に見てみたい。プロはもちろん甘くないですが、森なら…という気もあります」

◎数字以上に内容がある安打


 少なくとも僕がこの仕事をして約15年、高校野球を見てきた中ではナンバーワンのバッターだ。仕事に就く以前、高校野球ファンとして見ていた頃を思い出しても、清原和博(元オリックス他)や松井秀喜(元ヤンキース他)でもミート力ではこちらが上だろう。甲子園で活躍した面々の当時で言えば、福留孝介(阪神)あたりが双璧クラスか…。

話を広げ続ける僕に呆れ顔の森に構うことなく話題をイチロー(ヤンキース)につなげた。甲子園の活躍がなかったため、高校時代のイチローの記憶は僕の中にほぼ皆無だが、練習試合を含めた3年間の全成績はこの通り。151試合、536打数269安打、打率・501、19本塁打、211打点。数字を眺めるだけで別格が伝わってくる。

 対して森は手元の資料にある主要大会だけだが、こうなる。4度出場の甲子園が、15試合、55打数26安打、打率・473、5本塁打、11打点。夏・秋の大阪大会、秋の近畿大会の2年間、6大会分が、36試合、122打数61安打、打率・500、5本塁打、36打点。さらに2度の日本代表戦が、18試合、63打数23安打、打率・365、2本塁打、17打点。すべて公式戦でのこの数字も見事、以外にない。

 それでも森は「僕はそんな打ってないですよ」と言うが、数字以上に感心するのが、その内容だ。50試合以上見て、完全に外されたスイングや崩れた凡打の記憶がほとんど残っていない。ごまかしの効きやすい金属バットでも、森のヒットはいつもしっかりとらえてのもの。10点満点で言えば8点以上のヒットばかりなのだ。「そうすか…」と半信半疑の森に、じゃあ3年間で自分より上と思う打者がいたかと聞くと「もっとすごいのいたでしょう」と、ぼやかすので、具体的にコイツは…というのがおった? と続けると、少し考え「いてないすかねえ」。少々、無理矢理うなずかせたような気もしたが、森より上の打者は、今年だけでなく、去年も3年前も5年前もいないのだ。


◎森友哉のプロ1年目


 その森が挑むプロ1年目。ドラフトで西武が指名した時、正直なところ「渡辺久信監督だったら…」と思った。思い切った選手起用が持ち味だった渡辺監督なら、森を1年目から使ったのではないかという気がしたからだ。ただ、厳しい面ばかりがクローズアップされがちな伊原春樹監督も合理主義者。必要戦力と感じれば、起用もあると見る。キャンプ、オープン戦で森の打撃を生で毎日見ていけば、誰もが使いたくなるはずなのだ。ただ、捕手としての起用は炭谷銀仁烽烽ィり、さすがに難しい。

 そこでどう考えるか。僕は元から打撃を最大限に生かし、先々までプレーするには、野手がいいと思っている。捕手としての能力に何も問題はないが、素晴らしすぎる打撃ゆえのコンバート推進派だ。たとえば数年後、3割3分、30本、100打点を稼げるところが、マスクをかぶることで3割、20本、75打点になるとする。チームとして見れば、マイナス分以上のプラスを守備面で返してくれればいいが、僕はバットマン森の突き詰めた打撃を見たい。

 西武の育成方針として、一部からは炭谷を1年目から起用した面の反省も踏まえ、ファームでしっかり鍛えて…という声が聞こえる。ただ、原稿の段階で片岡治大とヘルマンの去就が決まっておらず、来年の西武の布陣は流動的。仮に内野からこの2人が抜けたとすれば、さまざまなポジションが動き、そこへ森が入る余地が生まれてこないかとも考える。本人に「1年目からDHがあるかも…」と言うと、「それはないです、絶対ないです」と、やはり笑って流されたが、僕は伊原監督の決断一つで十分あり得ると思っている。思えばこれは、渡辺監督の起用だったが、浅村栄斗の一塁やDHでの起用も当初はまったく「らしい」ものではなかった。

 仮に、1年間1軍戦力として戦かったなら…。1年目から3割、20本を記録しても、森、中村剛也、浅村の大阪桐蔭クリーンアップが実現しても、僕は驚かない。森はそこまでを期待していい、期待されるだけの選手なのだ。

「いやいや期待しすぎです。プロですよ。そんな1年目から無理っす。今はやっていけるか、ほんと不安ばっかりですから」

 最後までこちらの話には乗ってこなかったが、シーズンが始まれば、森自身が改めて自身の能力の高さに気づくはずだ。そして、今回のドラフトで森をあっさりスルーした各球団の関係者は逃した獲物の大きさに1年前のドラフトを思い返し、“あのおっちゃん”は、また酒をひっかけぼやく…。その時、『野球太郎』の読者には、シーズンのどこかでこの号を読み返し、大いにうなってほしい。


(※本稿は2014年11月発売『野球太郎No.007 2013ドラフト総決算&2014大展望号』に掲載された「30選手の野球人生ドキュメント 野球太郎ストーリーズ」から、ライター・谷上史朗氏が執筆した記事をリライト、転載したものです。)

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