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ズズッとすするエルドレッド(広島)。マックオンリーの偏食・クルーンらに見る「助っ人選手と日本食」

ラーメンをすすって食べる広島・エルドレッド

 プロ野球の歴史のなかでたくさんの外国人選手が海を渡ってきたが、好成績を挙げた助っ人の多くは、日本に馴染むことができた選手だ。

 「郷に入りては郷に従え」ということわざがあるが、その国、その土地の環境に適応できなければ、野球に集中することもままならない。

 この「適応」という点において、大きな障壁となるのは「食」だろう。

 「母国の好物が恋しい。日本食は喉を通らない」という気持ちはわかる。しかし一方で、そこは男らしく、「何でも食ってやるぜ!」というくらいの強気でバクバク食べてほしいものだとも思う。

 週刊野球太郎の連載『馴染みすぎぃっ!? ニッポンダイスキ外国人選手!』の第2回は、日本の食文化にドハマリし、しかも大活躍した助っ人たち。そして、まったく馴染めなかった1人の助っ人を取り上げる。

ラーメンを上手に食べる男たち


 まず取り上げる日本の食は、日本人のソウルフードのラーメン。

 藤子不二雄の漫画『おばけのQ太郎』に登場する「小池さん」もビックリのラーメン好きとして知られるのが、バレンティン(ヤクルト)、メッセンジャー(阪神)、エルドレッド(広島)の3人だ。

 とんこつラーメンが好みのバレンティンは、ホーム・神宮球場の試合が終わると『伝丸 青山店』に向かう常連客。ただ最近は、体重を気にして食す回数が減ったとか。

 ちなみに、かつての同僚・バーネット(レンジャーズ)も、バレンティンの影響でラーメン好きになり、食後の感想をツイッターにつぶやいていた。

 メッセンジャーはチームの通訳に連れて行ってもらった元祖家系『吉村家』でラーメンに開眼。行列ができていても並ぶほどのファンだという。ほかには『なんつッ亭』、『天下一品』、『丸?中華そば』などもお気に入り。

 「もやしを入れるとダシの味が変わってしまう」との理由で「チャーシューだけラーメン」にこだわっていることをテレビ番組で公言したり、甲子園球場で自らプロデュースしたラーメンを販売するなど、ラーメン熱はそうとうなものだ。

 そして、エルドレッドのこだわりは麺をすすってラーメンを食べること。海外では音を立てて食すのはマナー違反。しかし、エルドレッドは広島の助っ人仲間を誘っては、あえてズズッと音を立てて食べる茶目っ気を見せる。

 テレビ番組でも「ほかの外国人選手はすする音がすると怒るから、僕はわざとやっているんだ」と笑って証言。嫌がる顔を見て楽しんでいるのか、日本流の粋な麺の食べ方を教えてようとしているのか。

 いずれにせよ、箸を巧みに使い、音を立てながら麺をすすれるのはたいしたラーメン愛だ。

 なお、エルドレッドがラーメンをすする音を特に嫌がったのは、2013年と2014年に広島に在籍したキラだったという……。

 また、エルドレッドは釣りも大好き。毎日でも釣りをしたいらしく「野球をやめようかな」と口走ったことも。日本での釣りライフも楽しんでほしい!

いつものアレ、よろしく!


 ホームランを打ったときのパフォーマンスで寿司を握るポーズをするなど、「寿司好き助っ人」の代名詞となったレアード(日本ハム)。

 一方、少し変わった和食のハマり方をしたのが、今季、巨人に新加入したカミネロ。甘辛いうなぎのタレが好物になったという。

 天ぷらにも寿司にもうなぎのタレをつけて食べているとのこと。濃い味だけに、すべて「うなぎのタレ味」になってしまうのではないか……。

 とはいえ、うなぎのタレを通じて日本に馴染んでもらえるならノー問題だ。


三拍子揃った食べ物でパワー満点


 「走攻守」といえば野手の三拍子。「美味い安い早い」といえば牛丼の三拍子。マートンとブラゼルの元阪神助っ人コンビは、『吉野家』フリークとして有名だった。

 マートンは、遠征先に向かう新幹線のなかで特盛り4つをペロリと平らげていたそう。ときには我慢しきれずに駅のホームで食べてしまい、インターネットに目撃情報も挙がったことも。

 一方のブラゼルは、オフでアメリカに帰ったときに「ニューヨークの吉野家を訪れた」という画像をインターネットで公開するほど入れ込んでいた。

 日本とアメリカで牛丼を食べ比べたブラゼルは、「牛丼を語れるプロ野球選手」として、こう答えを出した。「日本のほうが美味しい」。


広島風お好み焼きは最高じゃけぇ


 外国人選手が特に苦手意識を持つのは、日本の郷土料理ではないだろうか。

 しかし、ホーム地の伝統的な味を味方にできれば大きな力になる。それを実践したのは、選手としても、指揮官としても広島に在籍したブラウン元監督だ。

 ブラウン元監督は広島風お好み焼きに目がなかったという。その好きっぷりは、リブジー・ヘッドコーチ(当時)に「尋常じゃない」に曝露されたほど。

 ブラウン監督は年を増すごとに体が大きくなっているように見えたが、どれだけの広島風お好み焼きを食べたのだろうか……。


日本野球はマックでOK


 最後に、日本食を口にせずとも結果を出した助っ人を紹介しよう。その代表格が横浜と巨人でクローザーとして大活躍したクルーン。

 偏食のため日本食が受け入れられず、食事のほとんどをマクドナルドで済ませていたという、体が資本のアスリートとは思えぬエピソードの持ち主だ。

 「無理に日本文化に適応する必要はない」と言わんばかりだが、クルーンほどの実力があったからこそなせる業だったと感じる。

 札幌ドームに遠征に行った際、マクドナルドがなかったというだけで激怒しこともあるが、それは「マックを取り上げられては、本領を発揮できない!」という怒りだったのかもしれない……。


成功の近道は風土を受け入れること、だが…


 「助っ人外国人と食」というテーマでお送りした今回の記事、いかがだっただろうか。筆者的にはクルーンに、フランス革命に散った王妃・マリー・アントワネット的な空気が漂うのを禁じ得なかった。

 飢えに苦しむ民衆に「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」といったベルサイユ宮殿のマリー。「日本食がダメなら、アメリカ発のジャンクフードを食べればいいのさ」と、豪快な投げっぷりで感じさせたクルーン……。

 助っ人外国人が日本で活躍する最善策は「郷に入りては郷に従え」の精神だと思っているが、ダメなときには力技も必要。彼らのプレーの背景にある「食」を探ると、なんとも考えさせられることが多い。


文=森田真悟(もりた・しんご)

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