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福本豊は「立ち小便ができなくなる」と国民栄誉賞を辞退…。レジェンドたちの変人伝説!

2017-04-18(火)12:00

国民栄誉賞を辞退した福本豊(阪急)

 腕一本で食べていく勝負師が集うプロ野球界。プレーはもちろんのこと、グラウンド外でも「規格外」の男たちが凡なる常識を揺らがせてきた。

 そんなどデカイスケールの「漢」たちの愛すべき変人エピソードを紹介していく当連載。第3回は、さらなるプロ野球史の高みに鎮座する“レジェンド”たちの逸話に迫る。

◎「固執しない美学」福本豊


 プロ野球界が誇る盗塁王と言えば福本豊(元阪急)。

 1969年から1988年までのプロ野球人生20年で積み重ねた盗塁数は1065。これは1992年にリッキー・ヘンダーソン(アスレチックス)に破られるまで世界記録だった。

 1983年にメジャーリーグ記録を超える939盗塁を達成した際には、その功績を称えて国民栄誉賞の話が持ち上がった。しかし、「そんなものをもらったら、立ち小便もできなくなる」と、打診を断ったのだ。

 何とも破天荒な拒否の仕方だが、その裏には「王(貞治、元巨人)さんみたいに、国民の手本になんてなれない」という思いもあったそう。実は奥ゆかしいのだ……。

 ちなみに福本の引退は、1988年、上田利治監督が最終戦でのあいさつの際に、そのシーズン限りで引退する山田久志に触れて「去る山田、残る福本」と言おうとしたところ、「去る山田、そして福本」と言い間違えてしまったことに端を発している。

 本当は引退するつもりなどなかったのだが、「上田監督が言ったなら」と引退を表明し大騒動に。しかし、そのまま拍子抜けするほどあっさりと表舞台から去ったのだ。

 この前代未聞の引退劇について福本は「(発言を)取り消すのが面倒だった」と後述している。稀代の盗塁王が40歳のときのことだった。

◎アウトローが見せた人情


 福本の現役時代とほぼ同時期にあたる1967年から1985年にかけて球界を駆け抜けた「革命児」江夏豊(元阪神ほか)。「一匹狼」「無頼派」というアウトローなイメージが強かったが、それとは裏腹に、退場処分は18年間のプロ生活で1度しかなかった。

 その唯一の退場は1973年の巨人戦でのこと。微妙なコースの球をボールと判定されたことに納得できなかった江夏……ではなく、捕手の田淵幸一(元阪神ほか)が審判に食って掛かったときに起こった。

 「田淵が退場するよりも、俺が退場したほうがチームへのマイナスが少ない」ととっさに判断した江夏は、審判に体当たりをかます。当然、退場が宣告されたわけだが、覚悟の上での行動だったので、江夏はどこ吹く風でコールされる前からベンチへスタスタ。

 一匹狼な雰囲気だが、なかなかの役者ぶりでチームメートを守ったのである。

 なお、この1973年には、中日戦で延長11回を投げ切ってノーヒットノーラン。11回裏に自らサヨナラホームランを放って試合を決めるという離れ業で偉業を達成している。これはプロ野球唯一の延長戦ノーヒットノーランだ。


◎投手もカメラも一撃必殺の「球界のヒットマン」


 「オレ流」で鳴らした落合博満(元中日ほか)も、球界トップクラスの変わり者だった。

 数々の破天荒な伝説を残したが、そのなかでも目を見張るのは、バットコントロールにまつわる逸話だ。

 ひとつはロッテ時代の西武戦でのこと。ビーンボールまがいの厳しい内角攻めがウリだった西武のエース・東尾修から頭部への死球を食らった後に、東尾を直撃する「報復のピッチャー返し」を行ったのだ。

 しかも、これには伏線がある。死球の次の打席で中前安打を放ったとき、落合は一塁ベース上で首をかしげていたというのだ。

 そして、その次の打席で件のピッチャー返しを放つわけだが、このときはベース上で「うんうん」とうなずいていた模様。

 「やられたらやり返す」。確実に狙っていたということが伝わってくる。照準を微調整して、見事なまでに的をとらえたわけだ。

 もうひとつは、カメラのレンズを壊したエピソード。

 打撃練習中に、近くにいるカメラマンに「ボールが飛んでくるから危ない」と注意をうながした落合。しかし、カメラマンが耳を貸さなかったことから「じゃあ、狙う」という一言を残し、1球でレンズを仕留めた。

 破壊したレンズは1000万円とも言われていたが、カメラマンは「いい映像が撮れた」ということで会社から社長賞を受賞。落合にお礼を言いに行ったとか。


◎稀代のマイペース男


 最近まで現役だったOBからトンデモ選手を探すと……、挙げたくなるのは石井一久(元ヤクルトほか)だ。

 日米通算182勝(137敗)、2545奪三振という輝かしい成績を残しながらも、どこか凄みを感じさせないのは、天然風味のユニークな言動によるところが大きい。

 ヤクルトに在籍していた1997年9月2日の横浜戦では、ノーヒットノーラン達成を目前にした8回で自らマウンドを降りようとした。理由は「エースだったけど完投したいという気持ちはなかった。高津さん(臣吾、元ヤクルトほか)がいるし」とのこと……。

 野村克也監督(元南海など)にとがめられたことで無事、ノーヒットノーラン達成。事なきを得たが、このプレッシャーとは無縁の飄々とした心持ちが大記録につながったとも思える。

 また、石井と言えば“荒れ球”が代名詞だった。これに関しては「要求通りのボールがほとんどいかないのに、古田さん(敦也、元ヤクルト)のリードで勝てたと言われるのが気に入らなかった」とコメント。

 自身のコントロールの悪さを認めるとともに、「それでも勝てる俺を認めろ」と言わんばかりのキレ味だ。

 極めつけはFAで西武に移籍した理由を、「新しい友達を作りたかった」と述べたことだろう。実際に涌井秀章(現ロッテ)、岸孝之(現楽天)、菊池雄星(西武)らに慕われ、充実した現役晩年を過ごしたことがうかがえる。

 引退試合ではセグウェイに乗ってファンにあいさつ。こんな選手はそうそう現れないだろう。そう思わせる演出も石井ならではだった。


◎もはや神話レベルのレジェンドたち


 「個性的な選手が少なくなった」と言われて久しいプロ野球界。今回紹介したような選手がゴロゴロいた時代を知っているファンや関係者からしたら、今の選手たちが物足りなく映るのは仕方ないのかもしれない。

 「破天荒」「型破り」が服を着て歩いていた時代。そこで飛び出した「ウソのような本当の話」はなかなか生まれにくいだろうが、だからこそレジェンドたちの個性が尊く貴重なのだと感じる。

 レジェンドの規格外の逸話はほかにもたくさんあるので探してみてはいかがだろうか。


文=森田真悟(もりた・しんご)

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