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野球太郎で語れなかった「悲願校」への熱い想い!〜稚内大谷と大商大堺が一番好きな高校かも

 秋や春の大会では好成績を収めながら、甲子園出場を懸けた大会では結果が出ない……。長年、悲願の甲子園出場を! と期待され続ける高校のことを、「悲願校」と呼んでいる。雑誌『野球太郎』での人気企画「悲願校マップ」を作成している、田沢健一郎さんが悲願校への熱い想いを語る。


悲願校の行く手を阻む学校とは?


 やはり各地区で甲子園に何度も出場している「甲子園常連校」でしょうか。常連校ははやり、試合巧者という印象がありますね。個々の選手のレベルが劣っていても、勝負のポイントを知っている。逆にいうと、大事なところでの勝負弱さが、悲願校としての歴史に脈々と受け継がれてしまっているのかもしれません。

 また、前回の記事の冒頭でも触れた長崎日大のように、タレント揃いのチームが甲子園出場を逃し、翌年の代にアッサリ出場を果たすといったケースも見てきました。そういう意味では、悲願校に注目してからより一層、試合の流れやチームの戦力分析に注意を払うようになったかもしれません。

 長年の苦労を重ね、それでも甲子園出場を果たせない悲願校とは対照的に、いわゆる新興勢力の学校が甲子園出場を果たすと、やはり複雑な気持ちになりますよ。例えるならば、クラスで好きだった女子に告白しようか迷っていたところに、イケメン転校生が現れて、彼女を奪われてしまったような(笑)。でも、そのような積み重ねが、初めての甲子園の喜びを強めてくれるので、これもまた悲願校の人生かなって。

日本全国、都道府県でみる「悲願校」


 『野球太郎』に寄稿している「悲願校マップ」は、おかげさまで7年目を迎えることができました。毎年マップを作成していると、やはり都道府県によって悲願校の特色のようなモノが見えてきます。

 ここ最近で注目しているのは京都府です。京都両洋、京都翔英、京都すばる、塔南など比較的新しい悲願校(近年、野球部強化に力を入れてきたものの、甲子園にはあと一歩届かないタイプ)が続々と登場しています。不思議なのが兵庫県。長い間、社が悲願校として君臨していましたが、2004(平成16)年春のセンバツで悲願校を卒業すると、2008(平成20)年夏の加古川北や、昨夏の西脇工など、けっこうノーマークの公立高校が甲子園出場を果たすようになりました。強豪揃いの地区でこうした傾向があるのは、全国的にも珍しいでしょう。

 そして、長野県には諏訪清陵、東京都市大塩尻(旧・武蔵工大二)、上田西という「悲願校御三家」と呼んでいた学校がありました。この3校は秋や春の大会では十分な実績を残していたにもかかわらず、なぜか甲子園出場は松商学園や佐久長聖、長野日大に阻まれていました。しかし、東京都市大塩尻と上田西は悲願校を無事に卒業していきました。残った諏訪清陵には自然と思い入れが深くなりますよ。ぜひ、この夏は!


▲昨夏に出場した上田西に続けるか、諏訪清陵

今夏、注目したい「悲願校」は?


 今夏は生光学園に注目しています。昨秋の徳島大会で優勝、今春の大会では優勝した鳴門渦潮に準決勝で惜敗するなど、今年にかぎらず、甲子園へ出場する実力はずっと持っているはず。また、徳島県は全国で唯一、私立高校が甲子園出場を果たしたことがありません(私立で野球部があるのが生光学園のみ)。その壁を破ることができるのか、といった点でも注目でしょう。

 また何といっても、「キングオブ悲願校」と勝手に呼んでいる大商大堺にも注目です。激戦区の大阪で長年、安定した成績を残しており、秋と春の大会での実績も十分で、近畿大会にも出場を重ねる実力校が、なぜ未だに甲子園に出場できないのか……。強豪揃いでも1回くらいは出場してもおかしくはないと思うのですが、不思議でなりません。

 そのほか、大曲工も面白いですね。過去も秋と春の県大会には強く、昨秋の秋田大会は準優勝、今春は優勝するなど文句なしの成績を残しています。ところが、この学校は夏の大会に弱い。ベスト4にすら勝ち残れないことも多く、今年の夏はどうなるか、今から気になっています。

ここまで心配する!? 「悲願校」の行方


 全国津々浦々の悲願校を調べているうちに、いろいろな高校を発見することがあります。例えば高知の岡豊(おこう)は、1990年代から県内で安定した成績を残しており、あの明徳義塾に勝つこともある、ダークホース的な高校です。石川の寺井も星稜を苦しめた実績があります。このような高校を知ることで、地元の方たちとこうした高校野球話で盛り上がるのが嬉しいですね。

 出張といえばこの前、北海道に行ったついでに2013年のセンバツ出場を果たして、悲願校を卒業した遠軽(えんがる)まで行ってきました。その北海道の悲願校といえば、稚内大谷は外せません。道内10地区で、唯一甲子園出場がないのは稚内大谷がある名寄地区だけ。その稚内大谷はかつて、1980(昭和55)年、1981(昭和56)年、1993(平成5)年に北北海道大会決勝に進むも、3度とも全てサヨナラ負けで甲子園出場を逃しています。

 現在の名寄地区というと、少子高齢化によって、ここ数年の高校生の人数は減少傾向にあると聞きます。閉校した駒大岩見沢の例もありますし、学校経営はどうなんだろう、と考えてしまうこともあります。でも、稚内大谷に関しては、周辺で唯一の私立校なので、助成金が出ているのかな? と、悲願校からまったく畑違いのことまで考えるようになってしまいました。

 今年のセンバツの21世紀枠で推薦された天塩が強くなってきていて、一時期と比較すると稚内大谷の勢いはなくなってきています。でも、悲願校マニアとしては、名寄地区からの甲子園初出場は稚内大谷が甲子園に行ってほしい! 1980年代から雑誌の地区の展望で「名寄地区からはじめての甲子園を目指す稚内大谷は〜」というフレーズが何回も出てきます。この頃からの悲願をぜひ、叶えてほしいです。はじめての甲子園が決まったら、応援に行っちゃうだろうなぁ〜、全然関係者じゃないんですけどね(笑)。


 高校野球の世界では、甲子園に出場できなくても、今回紹介した悲願校のような隠れたドラマを持つチームがたくさんあります。そんなチームを少しでも多くの人に知ってもらい、高校野球観戦のきっかけ、さらに深みある高校野球ウォッチに繋げてほしいと思っています。


▲「キングオブ悲願校」大商大堺の戦いに注目です!


■プロフィール
田沢健一郎(たざわ・けんいちろう)/1975年生まれ、山形県出身。高校時代は山形の強豪校の三塁コーチャーを務める。現在は編集兼ライターとして、様々な媒体で活躍中。マニアックな切り口の企画で特に力を発揮する。共著に『永遠の一球――甲子園優勝投手のその後』(河出書房新社)など。

■ライタープロフィール
文=鈴木雷人(すずき・らいと)/会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。自他共に認める「太鼓持ちライター」であり、千葉ロッテファンでもある。Twitterは@suzukiwrite

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