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開幕して1カ月。明暗分かれたアメリカ帰りの“助っ人”の今季の成績を読み解く!

 今季、黒田博樹(広島)、松坂大輔(ソフトバンク)、田中賢介(日本ハム)、中島裕之(オリックス)の4選手がアメリカから帰ってきた。大きな注目を集める中、久しぶりの日本球界でどんなプレーを見せているか。開幕から約1カ月経ったが、それぞれの成績を振り返ってみよう。

 また、『野球太郎 プロ野球選手名鑑+ドラフト候補名鑑2015』(以下『選手名鑑号』)や『週刊野球太郎』での記事で予測した成績が達成されるかどうか、についても触れている。あわせて読んでいただけると、より楽しめると思う。
(成績はすべて4月26日終了時点)

☆メジャー流の投球は健在! これぞプロの技!

 広島の黒田博樹は5試合に登板し、チームトップの3勝(1敗)。防御率2.73。登板したすべての試合で6イニング以上投げ、クオリティスタート(QS/6イニング以上投げ自責点3以内に収めること)も達成している。

 4月18日の中日戦ではゴロアウト6、フライアウト8と日本復帰後では初めてフライアウトのほうが多かったが、25日の阪神戦ではゴロアウトが15、フライアウトが三塁ライナーの1つだけと、アウトの内訳に関する数字では、ゴロを打たせる黒田らしさを発揮した。

 ここまでの通算ではゴロアウト52(うちバントが6)、フライアウト20(うち内野フライ5)、ゴロアウトとフライアウトの比率は2.60。昨季、セ・リーグの平均が1.16、パ・リーグの平均が1.11ということからも、黒田がいかにゴロを打たせているかがわかる。

 『選手名鑑号』の中で、黒田に求める合格ラインの成績を25試合13勝以上、175イニング以上、防御率3.00以下と設定した。勝利数は、打線との兼ね合いなど運もあるため断言できないが、そのほかの数字は十分到達できるだろう。


 ところで、25日の阪神戦で、こんなことがあった。

 バントの構えをしていた黒田に対し、藤浪晋太郎が2球続けて内角への抜けた球を投げた。黒田は倒れながら避けた後、怒りながらマウンドの藤浪に詰め寄り、両チームのベンチから選手が飛び出すなど、一触即発の事態となった。

 これを受け「バントの構えをしていた投手に対し、内角へ厳しい球を投げてはならない」というメジャーの暗黙のルールを藤浪が破ったから、黒田は怒った、と一部で言われた。

 メジャーから日本に復帰した選手に関することで「メジャーではこうだったから」という報道を目にすることが多い。しかし、短絡的にメジャーを持ち出していいものだろうか。2球連続で内角の厳しいところや顔の近くに投げられたら、暗黙のルールと関係なく怒る選手もいるだろう。

 4回の藤浪の打席では、黒田は初球に見事な制球で内角へ速球を投げた。「プロならこうやって内角に投げろ」といった藤浪へのメッセージが込められているようにも感じる。なんでもかんでも“メジャーでは”と結び付けてしまうと、本質を見失ってしまう気がする。

☆共通する注意事項・ケガへの不安

 日本ハムの田中賢介は、21試合に出場し、チームトップの22安打、チーム2位の13打点、打率.278、出塁率は.367。2番で14試合、3番で7試合とチャンスメーカーとしてだけではなく、走者を還す役割も果たしている。

 『選手名鑑号』の中では、田中の合格ラインを120試合、打率.280、5本塁打、40打点と設定したが、問題なくクリアできるだろう。チームも首位と、田中効果が攻守に表れている。右太もも裏の炎症で26日のオリックス戦を欠場したが、これから恐いのはケガだけだろう。

 ケガと言えば、オリックスの中島裕之も右太もも裏の肉離れで21日のロッテ戦から戦列を離脱している。これまで20試合に出場し、打率.216、2本塁打、6打点と中島にしては物足りない成績だが、ケガをする直前は打球が上がり始め、調子も上向きと見られただけに残念でならない。

 『選手名鑑号』の中で合格ラインを100試合、打率.260、15本塁打、60打点と設定した。ケガの回復具合にもよるが、まだ十分に挽回できる。1日も早い戦列復帰を祈りたい。

 右肩筋疲労でリハビリ中の松坂は、21日に約140球のキャッチボールを行い、バッテリー間の距離では力を入れるなど、肩の状態を確かめた。3月29日にブルペンで投げて以降、初めてのキャッチボールとなったが、実戦復帰のメドはまだ立っていない。

 今シーズンの成績については、25試合10勝以上、150イニング以上、防御率3.50以下と合格ラインを設定したが、数字は気にせず、松坂復活の日を楽しみに待ちたい。


 復活を願いながら、松坂に関するデータを1つ書いておきたい。

 2013年シーズンまで、松坂はゴロアウトよりもフライアウトが多い、典型的なフライボールピッチャーだった。ところが、メジャー最後となった昨季、初めてゴロのほうが多くなり、打球全体のゴロ率も増えた。投球を低めに集め、ゴロを打たせる投球術が磨かれたとも考えられる。日本でもそのピッチングを続けられるか、注目しよう。


■ライター・プロフィール
京都純典(みやこ・すみのり)/1977年生まれ。データ関係の仕事を得意とする野球ライター。『プロ野球本当の実力がわかる本2015〜セイバーメトリクスで見るプロ野球〜』 (日刊スポーツ出版社)の監修を務めた。『野球太郎[Special Edition] プロ野球選手名鑑+ドラフト候補名鑑2015』の巻頭ページにて、2015年注目トピックの全データを解析した。中日ファン。

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