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【若返りはどうだ!? 阪神編】北條史也ら若手が失速。「温存・秘蔵」が苦手なチーム風土……

文=落合初春

【若返りはどうだ!? 阪神編】北條史也ら若手が失速。「温存・秘蔵」が苦手なチーム風土……
 「超変革」を合言葉に若手の起用を推し進めてきた金本阪神。だが、今年はややガッカリ感も漂っている。高山俊、大山悠輔、中谷将大らの調子が上がらないことが大きいだろう。

 糸原健斗や植田海が奮闘し、原口文仁も打撃勘を取り戻しつつあるが、まだ継続的な活躍といえるほどではない。チーム全体で見れば、抜けては埋め、埋めては抜けを繰り返している印象も強い。

 週刊野球太郎では『どうなの? 巨人・阪神 チーム若返りはどうだ!?』と題して、チームの若返りを急ぐ巨人と阪神の育成事情に迫る。今回はあらためて阪神の育成事情をチェックしたい。

高卒野手育成はかなり苦手?


 阪神の育成事情を見ると、特に苦手そうに映るのは高卒野手の育成だろう。直近でいえば、1996年ドラフト2位の関本健太郎、同3位の濱中治、2001年4巡目の桜井広大は主力として活躍したが、なかなか逸材が出てこない。2005年の高校生ドラフト4巡目の大和(前田大和)は守備力を高く評価されたもののフル稼働することなく、DeNAにFA移籍となった。

 高卒選手に限ったことではないが、近年の阪神の育成で“あるある”になっているのは「2年目の失速」だ。

 たとえば、北條史也。2016年に122試合に出場し、打率.273を記録。鳥谷敬からレギュラーを奪ったが、2015年までの1軍出場はわずか1試合。高卒4年目のブレイクだったが、安定感はやはり心配だった。その不安は的中し、翌2017年は打撃不振に陥ることになる。昨年は高山俊、原口文仁もともに「ブレイク2年目」で失速している。他の若手では、気がつけば、スラッガー候補として期待された江越大賀も影が薄くなった。

「ブレイクシステム」に異常あり!?


 もちろんそこはプロの世界。成績が伴わなければ出場機会を失うのは当然で、ゲームのように出せば出すほど育つというわけではない。だからこそ、“出し始め”に若手が失速する問題点が潜んでいるのではないだろうか。

 たとえば、北條史也のブレイクと同年に注目を集めたのは横田慎太郎だった。春のキャンプから「今年は横田や!」とブレイク候補に挙げられると、オープン戦から打率.393。期待感は日に日に高まっていった。

 そして開幕スタメンに名を連ねた横田だったが、結果は38試合で打率.190。期待を大きく裏切った…ように見えるが、そもそも前年までは1軍試合出場ゼロ。当時高卒3年目の若手に求めるものが大きすぎたのではないだろうか…。

 阪神はファンからもメディアからも大きく注目される人気球団だけに、大卒選手の起用法を含めて、「いきなりブレイク」が新人に求められる事情がある。ただ、もう少し長い目で見守ることが必要かもしれない。

「もっと見たい」ぐらいがちょうどいい?


 近年の阪神を振り返ると、筆者の個人的な感想だが、「もっと見たい」と思った若手があまりいない。そう思う前に早々と1軍で出場を重ねているのだ。

 他球団の育成と比較してみたい。好例なのは広島の鈴木誠也だ。出世が早かったこともあり、単純に年数では比較できないが、鈴木は高卒1年目から11試合→36試合→97試合と出場数を右肩上がりに増やし、2016年に本格ブレイクを果たした。

 ここで注目したいのは、2年目の36試合、打率.344(64打数22安打)の数字だ。3年目は97試合に出場したが、打席数は238と控えめ。仮に鈴木が阪神で同じ成績を2年目に残しているとすれば、3年目に「我慢」できただろうか。

 ヤクルトの山田哲人もしかり。出場数は1年目から0試合→26試合→94試合と推移し、4年目に爆発した。同様に今季4年目でブレイク中の巨人・岡本和真も「もっと見たい」と言われ続けていたが、昨年までの出場数は少なく、じっくり起用されてきた。

3ステップで期待感を!


 阪神には、鈴木、山田、岡本のような右肩上がりの出場数があまりない。現在は第一捕手に定着しつつある梅野隆太郎は、大卒1年目から92試合→56試合→37試合と出場機会を減らした(4年目の昨季は112試合出場)。この間、やれリードが悪い、キャッチングが悪いと言われ続け、ファンのガッカリ感は募っていった。やはり右肩下がりはネガティブな印象を与えてしまう。

 高山俊も冒頭で「ブレイク2年目で失速」と書いてしまったが、2年目の昨季の成績を見ると出場103試合、打率.250、6本塁打。1年目は出場134試合、打率.275、8本塁打で確かに数字を落としたが、許容範囲だろう。

 それでも大きすぎる期待ゆえに「失速」の印象は強い。1年目にも不調の時期はあった。そのときに「我慢」できていれば、中谷将大の出現があったにせよ、134試合→103試合と出場数を減らすことはなかったし、2年目に「高山、ついに2軍降格」と騒がれることもなかったように思える。

 30歳前後の選手が若手に見える「永遠の若虎」問題からは抜け出したが、今度は「使い過ぎ」がテーマになりそうだ。鳥谷敬のようにプロ1年目から成績を残し続けてきた怪物もいるが、プロ野球界全体で見ると非常に稀な存在だ。

 一概には言い切れない面もあるが、現在の阪神の若手育成は、選手の頑張りとは別に「ガッカリ感」がクローズアップされてしまっている。「出し渋り」、「ちょい出し」、「ついにブレイク」。この3ステップの期待感があれば、ファンの視線も、期待の若手たちの成長も変わってくるのではないだろうか。

文=落合初春(おちあい・もとはる)

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