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第4回 『甲子園へ行こう』『ワイルドリーガー』『草野球の神様』より

「球言(たまげん)」とは、名作&傑作マンガに登場する野球格言≠フことである。野球というスポーツの真理を突いた一言、技術を磨く名言、駆け引きを制する名台詞の数々は、現実のプレーや采配にも役立ったり役立たなかったりするのだ!


《意味》
いくら力のある投手でも試合中、「ここぞ」というときには簡単にストライクが取れなくなるもの。9回を何事もなく投げきることができるのは、いつでも普通のストライクをストレートで取れる投手である。

《寸評》
野球解説者の野村克也氏が、外角低めのストレートを“投手の原点”と呼び、困ったときに頼るべきボールとしているのは有名な話。ピンチの場面でも、何食わぬ顔でストレートをストライクゾーンに投げ込める。その度胸と制球力が、エースには求められる。

《作品》
『甲子園へ行こう』(三田紀房/講談社)第1巻より


《解説》
鎌倉西高の一年生投手・四宮純は夏の大会1回戦、自らの連続押し出し四球によって、サヨナラ負けを喫してしまう。
ショックを引きずり、己の投球を見失う四宮に、部長の貞兼利次が声をかける。
「いいか四ノ宮・・・・ 普通に生きる 平穏無事に暮らす・・・・ これが実はとても難しいんだ」
言葉の真意を探る四宮。話を続ける貞兼。
「ピッチングも同じだ 何事もなく無事9回を投げきる いくら力のある投手でも なかなか これができない それはなぜか・・・・
ここぞという時に普通のストライク・・・・ これが取れないからなんだ」
自分の投球を思い返す四宮。続く貞兼の一言は、さらに深く彼の胸に刻み込まれた。
「いいか四ノ宮 本当にいい投手とは・・・・ ストレートで普通のストライクを目をつぶってでも普通に取れる・・・・ “普通のピッチャー”なんだ」



《意味》
細心の注意を払ったリードが求められる捕手は、感覚から切り離した思考が求められる。冷静な思考の積み重ねは、投手の力を引き出し、打者の弱点をこじ開ける。

《寸評》
思考を独立させるのは難しい。人間は、自分に都合のいい情報を優先し、時に事実を歪めて認識しまうからだ。これを「確証バイアス」と呼ぶ。捕手が客観的な情報に基づいて出したつもりのサインも、じつは「内角で三振を取りたい」「四球は出したくない」などの思いから、打者の外角狙いや、打ち気のない仕草ばかりに目がいっている可能性もある。

《作品》
『ワイルドリーガー』(渡辺保裕/新潮社)第2巻より



《解説》
かつての輝きを失ったプロ野球チーム・東京武鉄レッドソックスに、黄金期を支えた投手・浅野夏門が戻ってきた。彼とともに復帰したベテラン捕手・友部蓮司は、打撃練習のとき、打席に入った若き天才捕手・秋葉駿の挑発を受ける。
「死角ないよね───っボク(中略)今シーズン 出番ないっスよ 友部さん…」
秋葉の言葉に、友部は軽い笑いを浮かべながら答える。
「おめでたいな坊や 俺たちなら いつでもお前を討ち取れるがね」
言葉通り、友部はワンボールツーストライクから、意表を突くド真ん中のストレートで秋葉を打ち取る。
「細かい思考を積み重ね 投手の威力ある球で 打者の小さな弱点をこじ開けさせるのが捕手の役目……感覚と思考を分けろ!」
改心した秋葉は、次なるステップへと上がるため、新たな努力を始めるのだった。



《意味》
立って放尿をするとき、男性はスタンスを肩幅に保ち、ヒザを軽く曲げ、肩の力を抜いている。この状態で傘を差した姿勢が、もっともリラックスした打撃の構えとなる。

《寸評》
ムダな力を抜くことに関して、じつに具体的な説明である。確かに傘を差すときも、立ちショウベンをするときも、誰もが無意識にもっともラクな体勢を取っている。登場作品は、“世界の北野”ことビートたけしが原作を書き、“野球マンガの神様”こと水島新司がコミック化するという夢のコラボによって生まれた。

《作品》
『草野球の神様』(ビートたけし、水島新司/講談社)より



《解説》
どこにでもあるような草野球チーム・所沢ブラボーズは練習試合の当日、たまたま土手に座っていたホームレスの男性に審判を依頼する。
試合中の正確なジャッジと、試合後の的確なアドバイス。男性が野球に詳しいことを知ったブラボーズの面々は後日、コーチを要請することに。チームの求めに応じた男性は、守備での構え方に続き、打撃スタンスについても教え始める。
「あれが理想だよ」
男性が目を向けたのは、立ちショウベンをしている選手の後ろ姿。
「あの格好で傘を持ったら それが理想だ 余計な力はどこにも入ってない」
野球の基本について、わかりやすく理路整然と説明する男性の姿に、メンバーたちはいよいよ彼がタダ者ではないことを実感する。
そんなある日、男性が昔、甲子園で初出場初優勝を飾り、プロ野球の世界へ入った梅津修二ではないかという疑惑が持ち上がり……。

文=ツクイヨシヒサ/野球マンガ評論家。1975年生まれ。著書に『あだち充は世阿弥である。──秘すれば花、『タッチ』世代の恋愛論』(飛鳥新社)、編著に『ラストイニング勝利の21か条 ─彩珠学院 甲子園までの軌跡─』(小学館)など。

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