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【甲子園100年・その時、歴史が動いた】金属バットがもたらした“超攻撃革命”成就への道

文=山本貴政

【甲子園100年・その時、歴史が動いた】金属バットがもたらした“超攻撃革命”成就への道
 1915年に豊中グラウンドで始まった高校野球の全国大会。戦中の中断を挟み、夏の甲子園は今年で100回を迎えた。この長き時のなかでは、甲子園の歴史を変えるいくつかの出来事があった。週刊野球太郎では2回にわたって、新しい流れを生んだエポックメイキングなトピックを紹介する。まずは高校野球の攻撃スタイルを変えた「金属バット導入」をピックアップ。

金属バットが呼んだ原貢の超攻撃的野球


 打撃自体の向上はもちろん、フィジカルトレーニングとバットの改良により、今や大会通算本塁打が30本を超えるのは当たり前。2017年には、2006年の60本塁打を更新する68本塁打が飛び出し、高校生の平均的な打力アップを知らしめた。

 歴史を振り返ると、木製バットの時代は10本塁打を超えれば上々。ならば、本塁打数の飛躍的な伸びをもたらしたのが、金属バット……であることは容易に想像できるが、すぐに効果が現れたわけではない。攻撃面で高校野球の在り方を大きく変えた金属バットによる“超攻撃革命”はいかにして成就していったのか。

 金属バットが甲子園に導入されたのは1974年夏のこと。折れやすい木製バットを揃えるには、特に予算の少ない公立校には負担になる。その負担を減らすために導入されたと言われている。

 とはいえ、1973年夏の10本塁打に対して、1974年夏は11本塁打。ほとんど本数に変化はない。予算の面もあってすぐに金属バットに切り替えられた高校が少なかったのが理由の一つだが、扱いに慣れた木製バットにこだわった選手が多く、金属バットを手にした選手が6割程度だったのも影響しているのだろう。事実、優勝校した銚子商の主軸・篠塚利夫(元巨人、現和典)も“しっくりくる”と木製バットで臨んだ(ちなみに篠塚は同大会で2本塁打)。

 一方、その“金属バット導入元年”から全員が金属バットで乗り込んだチームがあった。原貢監督が率いた東海大相模だ。1965年夏、炭鉱町の三池工を守りの野球で初出場、初優勝に導いた原監督は一転、超攻撃的なパワー野球を披露。この年に1年生だった原辰徳(元巨人)との親子鷹で、3年連続で夏の甲子園に出場し、ダイナミックな野球で観客を惹きつける。なお、辰徳は「金属バットの申し子」として高校通算43本塁打を放ち、アイドル球児の先駆けとなった。

 このように東海大相模の代名詞「アグレッシブ・ベースボール」は、金属バット導入を源流としているのだ。やがて金属バットは浸透。守りの野球が主流だった高校野球で、思い切りのいいスイングが奏でるカキーンという金属音が、徐々に“甲子園の音”となっていく。

阿波の攻めダルマが高校野球に“攻撃革命”を起こす


 1982年の夏、大会通算本塁打は初めて30本の大台を超える。32本の本塁打が生まれたこの大会で、悲願の初優勝を遂げたのが池田だ。阿波の攻めダルマとして甲子園史に名を残す、蔦文也監督が鍛え上げた大型チームが金属バットを振りまくって頂点に立った。

 池田は1974年春にメンバー11人の「さわやかイレブン」で準優勝していた。しかし、いかんせん山間の小さな町の公立校。エリートが集った全国クラスの強豪私立校に比べると線が細かった。そこで、甲子園制覇に執念を燃やす蔦監督が目をつけたのが“筋力があれば芯を外しても飛ぶ”金属バットの飛距離だった。

 蔦は金属バットを味方にするため、当時としては先進的なウエートトレーニングを練習メニューに取り入れ、選手のパワーアップを図る。筋骨隆々となった選手は、振って、振って、振りまくった。細かい野球を捨て、打ち勝つ豪快な野球を目指した。

 1982年夏、田舎の子たちのさわやか野球というイメージが強かった池田は、マッチョなチームとして再び甲子園の主役となる。そこには線の細さは微塵もなかった。この大会で池田は7本塁打を記録。決勝では緻密な野球の代名詞的存在だった広島商に12対2で圧勝。池田ナインが連ねる“速くて遠くまで飛ぶ”驚異的な打力を、人は“やまびこ打線”と呼んだ。

 心技体の精神野球をモットーとする名門・広島商からの主役交代劇は、あまりにも鮮やかで衝撃的だった。自由奔放な恐ろしさがあったと言ってもいい。ここからウエートトレーニング&フルスイングの流れが、高校野球で注目されていくことになる。

 池田が金属バットの特性を最大活用した1982年夏、甲子園の歴史が新たな幕を開けた。

 余談だが、金属バットが導入される前年にあたる1973年は怪物・江川卓(作新学院、元巨人)が甲子園に唯一現れた年だった。“バットに当たらない剛速球”を投げた怪物が去った次の大会で、打者に大きな武器がもたらされたのは、どこか因縁を感じる……。

文=山本貴政(やまもと・たかまさ)

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