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191センチ、日本人離れした体格の大砲の再生ポイントは“ダルマ落とし”の脱力法だった!

 191センチ98キロ。芯を食えば、抜群の飛距離を繰り出す“幕張のロマン砲”、“幕張のゴジラ”こと神戸拓光は、今季限りでロッテから戦力外通告を受けた。背番号55に込めた球団の期待、和製大砲の本格化を願うファンの思いは届かなかった。

 日本人離れした体とパワーを持ちながら、なぜ、プロの世界では通用しなかったのか。どこに欠点があるのか――



 その謎を解明するために、『野球太郎』でも活躍中のタイツ先生(「自然身体構造研究所」所長・吉澤雅之氏)が登場。再生のヒントになるよう、神戸のフォームを分析してもらった。さらにタイツ先生直伝の「弱点克服トレーニング」も動画で掲載。それでは早速、紹介しよう。
(※記事公開直前に神戸は現役引退することがわかった)

★ピッチングマシンなら打てる打撃フォーム!?



 簡単にいえば、神戸選手の打撃フォームには、捕手側の足、つまり軸足の粘りが足りません。変化する可能性があるボールに対して、左足の大腿四頭筋に力が入ってしまい、軸足がしっかりと“ハマっていない”状態のままスイングしています。これでは、緩急に対応できないバッティングを繰り返すだけでしょう。

 人間の動きは全て、位置エネルギーを利用する、体重移動によって成り立っています。神戸選手の場合、軸足から踏み出す前足への体重移動にスムーズさが足りないのと同時に、軸足側の左股関節に体重を乗せることができないまま、スイングを始動しています。これでは、変化球でタイミングを狂わされた場合、腕力に頼ったバッティングしかできません。

 だから、この動画にあるように引っ掛けたような打球しか打てない。追い込まれた後は内野ゴロか、もしくは大きな体に似合わないチョコンと当てただけの打球が増える打ち方ですね。

 ただし、スイング自体はそれほど悪くありません。緩急のない、マシンを使った打撃練習では、ガンガン打てる打ち方です。非常にもったいないですが、恵まれた体躯を生かしきれず、腕力だけに頼った打撃フォームになっています。

★軸足の粘りと正しい体重移動をマスターせよ!



 神戸選手の一番の問題点は、軸足の使い方。欠点を修正する練習法を、順を追って説明しましょう。まずは軸足の入り方に注意。捕手側の足の付け根にあたる左股関節をグッと外旋させて、パワーを貯めると同時に、変化球にも対応できるような、しっかりとした軸足の粘りを作ります。

 次に、踏み出す右足を意識的に大きく踏み出す練習をしてみましょう。大きくステップした後に、バットをスイング。その際に、踏み出す右足の股関節と、軸足のほうの左股関節の両方の力を同時に抜きながら(脱力しながら)、スイングすること。これを繰り返せば、スイング時のスムーズな体重移動を体得できます。

★ダルマ落としのように“ストン”と脱力せよ!



 神戸選手は、スイングの軌道自体は悪くありません。日本人離れした体躯と、恵まれた筋力を持っている神戸選手は、バリー・ボンズ(元ジャイアンツほか)のような、パワフルなスイングを実現できるはず。スイングする際に、両股関節をダルマ落としのように“ストン”と落とす、「脱力する感覚」を掴むことで、正しい体重移動が身につきます。

 下半身が安定すれば、スケールの大きなバットスイングが生まれます。背中側で振り抜くようなイメージで、大きなフォロースルーを再現できるでしょう。そうすれば、立派な体躯を持つ神戸選手独自の、魅力的なバッティングスタイルが完成するはずです。


 第1回トライアウトでは、時折小雨が降る草薙球場の三塁側スタンドに2人組の男性が陣取り、神戸が打席に立つ度に、神戸拓光を応援する横断幕を掲げていたのが印象的だった。しかし、再契約に向けた動きはなく、11月20日に行われた第2回トライアウト参加者に、神戸の名前はなかった。そして、ロッテのファン感謝デーが行われた翌日の23日に現役引退と伝えられた。野球に一区切りをつけるという。残念ではあるが、夢とロマンを与え続けてくれた神戸のこれからの道も、陰ながら応援したい。


■プロフィール
タイツ先生/1963年生まれ、栃木県出身。本名は吉澤雅之。小山高時代は広澤克実(元ヤクルトほか)の1学年下でプレーした。現在は「自然身体構造研究所」所長として、体の構造に基づいた動きの本質、効率的な力の伝え方を研究している。ツイッター:@taitsusensei では、野球、サッカー、バスケットボールなど国内外問わず、トッププロ選手たちの動きについて、つぶやいている。


■ライター・プロフィール
鈴木雷人(すずき・らいと)…会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。"ファン目線を大切に"をモットーに、プロアマ問わず野球を追いかけている。Twitterは@suzukiwrite

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