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第24回『砂の栄冠』『新巨人の星』『もっと野球しようぜ!』より

「球言(たまげん)」とは、名作&傑作マンガに登場する野球格言≠フことである。野球というスポーツの真理を突いた一言、技術を磨く名言、駆け引きを制する名台詞の数々は、現実のプレーや采配にも役立ったり役立たなかったりするのだ!


★球言1



《意味》
高校野球の終盤で波乱が起きやすいのは、暑さで体力が奪われ、精神力まで弱体化するから。体力が維持できれば、自ら崩れる心配がなくなり、何もしなくても相手が勝手にコケてくれる。

《寸評》
早稲田実業の斎藤佑樹、駒大苫小牧高の田中将大、横浜高の松坂大輔、PL学園の桑田真澄……。甲子園を沸かせ、結果を残した怪物たちは、その技術もさることながら、皆一様に圧倒的な体力を有していた。メンタルで体力は増やせないが、体力でメンタルはつなぎ止められる、ということか。

《作品》
『砂の栄冠』(三田紀房/講談社)第7巻より


《解説》
秋の関東大会一回戦。埼玉県の公立校である樫野高は、5度の全国制覇を誇る東横浜高と延長15回を戦い抜いたものの、4対3で惜敗してしまう。
キャプテンの七嶋裕之は、来たるセンバツ初出場に備え、練習前の食事を提案する。理由は「東横との延長戦 終盤スタミナが切れて打ち込まれ 自分の体力不足を痛感し」たから。その食事中、彼はチームの個性について部員たちに語った。
「俺達は どういう個性を持ったチームを目指すのか まずひとつは・・・・異常なほどのスタミナ! 信じられないくらい体力のあるチームだ」
なぜなら「スタミナさえあれば、高校野球はなんとかなるからだ」と、七嶋は説明する。
「俺も延長15回 最後はヘバった 自分でも情けない 反省してる だから俺は これから猛烈な体力強化を図る みんなも一緒にやろう」
七嶋の力強い説得に対し、部員たちは真剣な眼差しを向け続けていた。


★球言2


《意味》
速球は、打者の天性で打つもの。たとえブランクがあっても、強打者であれば打ち返せる。一方、スローボールは慣れていないと打てないため、ブランクのある相手には効果的。

《寸評》
星飛雄馬に金田正一が教えたとされる投球術。もうその事実だけでレジェンド。たとえ言葉通りにスローボールを投げて痛打されても、誰も文句は言えない。技術力のあるベテランが、変化球やチェンジアップを上手くサバいている姿を見ると、あながち間違っていない気もする。

《作品》
『新巨人の星』(梶原一騎、川崎のぼる/講談社)文庫版・第4巻より


《解説》
大リーグボール3号で左腕を壊し、プロ野球を引退していた星飛雄馬は、右投げの剛速球投手として再起。1977年シーズンも、巨人投手陣の一翼を担っていた。
飛雄馬と同様、プロ野球を引退していた花形満だったが、彼もまた宿命のライバルの復活に触発される形で現役復帰。花形コンツェルンの御曹司という立場を捨て、ヤクルトへ入団する。
ついに迎えた巨人対ヤクルトの一戦。飛雄馬と花形は、再びグラウンドで相まみえることとなった。
ツーボール・ツーストライクと追い込むも、天才打者・花形満に対し、投げる球がなくなってしまう飛雄馬。そのとき、巨人在籍時に金田正一から教わった言葉が脳裏をよぎる。
「ある打者に故障なんぞでブランクがあり そいつが強打者の場合は スピードボールはあかんで 速球ちゅうのは天性で打つもんやさかい ぎゃくにスローボールがええ これは慣れとらんと打てんもんや」


★球言3


《意味》
「当てる」だけなら、動きの中で捉えるほうが人間の本能により近い。ある実験で、打撃フォームの固まっていない小学生に2歩進みながらスイングさせたところ、ミート率が上がったという。

《寸評》
完全に静止した状態からボールを的確に捉えることの難しさは、ゴルフのスイングを想像してみるとわかりやすい。「静→動」の流れでボールへ正確に「当てる」には、完成されたフォームが不可欠なのである。子どもたちが振り子打法のマネをしたがるのは、理に適っているのかも!?

《作品》
『もっと野球しようぜ!』(いわざわ正泰/秋田書店)第8巻より


《解説》
夏の甲子園準々決勝。一年生の四番打者・小鳥遊天を擁する鷹津高は、豪打の首里城学園と対戦する。
初回、首里城学園の主砲・天童焔ニが放った先制満塁アーチによって、4点のビハインドを負った鷹津高。その裏、二死一塁の場面を作り、四番の小鳥遊に打席を回す。 「彼は…意外性だけなら今大会No.1かもしれませんねぇ」
放送席からの声が聞こえてくる中、小鳥遊が取った行動は「テニス打法」。一回表に、首里城学園の二番・平安山遊人が見せた打ち方だった。
初球。小鳥遊は、テニスの要領で走りながら打ち返し、タイムリーツーベースを放つ。スタンドで見守る記者のチューさんが呟く。
「ある実験では…まだバッティングフォームのかたまっていない小学生に 普通にスイングさせた時より 2歩 歩きながらスイングさせた方が ミート率が数%上がったらしい…!『当てる』という一点においては 静→動より 動→動…!」


文=ツクイヨシヒサ
野球マンガ評論家。1975年生まれ。著書に『あだち充は世阿弥である。──秘すれば花、『タッチ』世代の恋愛論』(飛鳥新社)、編著に『ラストイニング勝利の21か条 ─彩珠学院 甲子園までの軌跡─』(小学館)など。

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