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斎藤佑樹(日本ハム)へタイツ先生からお節介動画アドバイス〜早実時代のボールをもう一度!

☆高校時代は素晴らしい体の使い方をしていたが……

 高校3年生の夏の甲子園決勝戦で田中将大投手(現ヤンキース)と投げ合い、再試合の末に優勝を勝ち取った斎藤佑樹投手(現日本ハム)。私は当時、「このままプロ入りすれば素晴らしい投手になる」と思いました。なぜかと言うと、投げ腕の振り下げの勢いを、そのままリリースで爆発させていたからです。


 ただ、時が経つにつれて、忘れてしまったのでしょうか? その体の使い方ができなくなり、いい球が投げられなくなりました。それでも、2010年のドラフト会議で指名されてプロ入り。今年で6年目を迎え、後輩投手も台頭しているので、“ドラ1”とはいえそろそろ首が涼しくなっているはず……。しかし、彼は身体能力よりも、体の使い方やコントロールを武器にここまできたピッチャーですから、再浮上の芽はまだまだあります。

 そこで彼がもう一度輝くためにはどうしたらいいかをお伝えしていきましょう。

☆躍動感を取り戻すためにするべきこと

 ピッチャーがいいボールを投げる方法の1つに、「体重移動に合わせながら、腕を外旋させてから内旋させる」というものがあります。腕を振った時に生まれる勢いを無駄なくボールに伝えることができる動きなのですが、斎藤投手はこの動きが自然と身に付いていました。高校時代の左足を上げて、体をよじるフォームが、自然と外旋の動きになっていたのです。

 そして左右の腕を張って胸を開き、「割れ」の体勢に入る。そこから投げ腕を振り子の作用で勢いよく振ることで、強烈なボールを投げていました。とても躍動感のある投げ方だったわけです。

 それがいつの間にか、体を使わず腕だけで投げるようになり、腕を「振る」のではなく「担ぐ」というフォームになってしまったため、腕の動きが鈍くなってしまいました。「担ぐ」というのは腕や肩に力が入った状態。肩にある三角筋という筋肉は力を入れると、肩のラインより腕が上がらないようになっているので、自ずとヒジも下がってしまいます。そのストッパーがかかったような状態で投げても、もちろんいいボールは投げられない……。こうして悪循環にハマっていったわけです。


 この悪い流れを断ち切るためにはフォームの改良もありますが、違う長所ももっと出したほうがいいと思います。それは斎藤投手のクレバーな一面、打者の反応を見ながら投球術に磨きをかける必要があります。そのためにやってほしい練習は「スローボール投げ込み」です。

 マウンドから離れたところに置いたカゴに向けて、スローボールを投げ入れます。この時にゆっくりとしたフォームで投げるようにします。そして背骨をひとつひとつ動かすような意識で練習して、体幹部と下半身の動きと連動させてほしいです。

 プロでも一時期、勝てている時がありました。この時期は投げ腕を振るキレを上げるための下半身にタメを作ることができていました。体に軸ができるからこそ、エネルギーを発揮できる状態になる。それを念頭に置いて徹底的に練習していくと、体幹部が順々に動く運動神経で打者の反応を見ながらの投球術が向上するはずです。


☆目指すは黒田博樹投手!


 また、斎藤投手は非常にクレバーな投球をするという印象があります。ボールをリリースする直前まで、対戦するバッターの反応を見て、投げわけるということができます。

 この投球スタイルは黒田博樹投手(広島)も実践しています。彼はツーシームを投げる際、リリースの瞬間に曲げる方向を決める、という極限の技術を駆使して、バッターを抑えているのです。

 こういった感覚を大事にする投げ方は教えてもなかなかできるものではありません。黒田投手のように最大限に生かすためにも、先の「スローボール投げ込み」で全盛期の力を取り戻してほしいと思います。

■タイツ先生プロフィール
1963年生まれ、栃木県出身。本名は吉澤雅之。小山高時代は広澤克実(元ヤクルトほか)の1学年下でプレーし、県大会準優勝を経験。現在は「自然身体構造研究所」所長として、体の構造に基づいた動きの本質、効率的な力の伝え方を研究し、幅広いスポーツ選手の指導にあたっている。ツイッター:@taitsusensei では、国内外問わず、トップアスリートたちの動きについて、つぶやいている。個々のレベルに合わせて動画で指導を行う、野球の個別指導サービス「アドバンスドベースボール(http://www.advanced-baseball.jp/)」での指導も始まった。

文=森田真悟(もりた・しんご)
1982年生まれ、埼玉県出身。地元球団・埼玉西武ライオンズをこよなく愛するアラサーのフリー編集者兼ライター。現在は1歳半の息子に野球中継を見せ、日々、英才教育に勤しむ。今季はできるだけ現地観戦をしたい。

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