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見事、メジャー初登板初勝利を飾った田中将大を見る目はメディアよりもニューヨークのファンの方が厳しめ?

◎田中将大のデビュー戦、現地メディアはこう伝えた!

 4月4日(日本時間4月5日)、田中将大(ヤンキース)がメジャーリーグデビュー戦を白星で飾った。

 先頭打者本塁打を浴びるなど、2回で3点を奪われるも、その後、立て直し、4回以降は内野安打1本に抑える投球を披露。終わってみれば、強打を誇るブルージェイズ打線を相手に7回を97球でまとめ、3失点(自責点2)、被安打6、8奪三振、無四球。最速スピードは94マイル(151キロ)をマークした。

 現地メディアはメジャーで対戦した最初の選手に本塁打を浴びる、というこれ以上ないショッキングなスタートを切ったにも関わらず、3回以降、失点を許さなかった点をフォーカス。

「困難を克服し、テンポのいい投球でヤンキースに勝利を呼び込んだ。タナカは簡単には崩れない」と報じたニューヨーク・タイムズ紙を始め、高い修正能力に対する賛美の報道が大勢を占めた。

「大事なのはどうスタートするかではなく、どうフィニッシュするかだ。なぜそれだけの価値があるのか。タナカは自分自身で証明してみせた」(ニューヨークポスト紙)

「完璧ではなかったが、注目の高さを苦にしない投手であることを証明した」(ニューズデー紙)

「素晴らしい幕開け。彼は本物だ」(ESPNニューヨーク電子版)

 テレビ中継の実況を担当していたアナウンサーは下調べのきいたコメントを発していた。

「ピッチャーをやる前はキャッチャーをやっていたというタナカ。野手の気持ちを十分理解できているからか、投球のテンポがいい! 今日は完璧ではないかもしれませんが、かなりいい仕事をしたといっていいでしょう!」

◎メジャーで求められる要素を備えた投手

 ふと「日本ならば7回3失点という結果で、ここまでの賛美の声があがるだろうか?」と思ってしまった。しかし、1週間に一回の登板が標準の日本と異なり、メジャーの先発投手は中4日のローテーションが基本。1試合の投球数のメドは100球前後のため、1イニングあたりの球数が少ない投手の評価は非常に高く、勝ち星の数よりも、クオリティスタート(6回、自責点3以内)の試合をどれだけ数多く作れるか、という点をなにより重要視する。

 そういった背景を鑑みると、7回を97球で収め、与四球がゼロ。立ち上がりの悪い状態から立ち直る高い修正能力をも見せつけた田中の投球は、仮に敗戦投手になっていたとしても、絶賛されて然るべき内容だったといえる。

 スポーツ系オンラインメディアの「Bleacher report」は「3点を失ってからは、速球系の割合を増やした。結果、スライダー、スプリットの効果を高めることにつながった」と分析。

 「もっとも印象的だったのは初球でストライクを奪える能力。この日、対した打者27人中、初球でストライクを奪ったのは実に18人。ストレートだけでなく、どの球種でもストライクをとることができる点も素晴らしい。次回の先発では、この日、後半で見せたピッチングが最初から展開できるに違いない」と結んでいた。


※写真は初登板時のものではないです

◎ファンの設定しているハードルの方が高い?

 ニューヨークポスト紙の電子版の掲示板に「タナカのデビュー戦を見た感想は?」という表題に対するコメントが記されていたので、一部を抜粋して紹介しよう。

「ストレートのスピードは想像していたほどの速さではなかったが、制球力が大変優れていると思った。これは『本物』の出現だ」

「おいおい、たった一回先発しただけであんな大金に見合う価値があるだって? 冗談はよしてくれよ」

「自分の期待値以上だった。これで文句を言う人は、彼が今日ノーヒットノーランを達成していたとしても、文句を言う人なのだと思う」

「シーズンが終わったら彼はサイヤング賞を受賞してるんだろうね。記事を読む限り、どうやら彼はランディ・ジョンソン(元マリナーズほか)やボブ・ギブソン(元カージナルスほか)の再来みたいだから」

「7イニング投げただけで1億8900万ドルに見合う投手であることが早くも証明されたというのか?」

「それはともかく、1億8900万ドルっていう数字はいったいどこからきた数字なんだよ(正確には7年総額1億5500万ドル)」

 高額契約を結んだ選手という前提でコメントされているケースが目につく。現状は野球ファンの心の中の設定されているハードルのほうがマスメディアよりも全体的に高めなのかもしれない。


文=服部健太郎(ハリケン)/1967年生まれ、兵庫県出身。幼少期をアメリカ・オレゴン州で過ごした元商社マン。2児の父で少年野球チームのコーチをしていたその経験をもとにつづった「野球育児入門」を『週刊野球太郎』で連載。堪能な英語力を生かした外国人選手取材と技術系取材を得意とする実力派。

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