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「今、公立校が熱い!」が高校野球のトレンド!? 公立校の歴史と今を見れば普通の人々の思いに通じる

文=山本貴政

「今、公立校が熱い!」が高校野球のトレンド!? 公立校の歴史と今を見れば普通の人々の思いに通じる

「公立校」という郷愁を誘う響き


 100回目の夏にふさわしい熱狂で幕を閉じた夏の甲子園。今年は地方大会から戦いの行方が例年以上に注目されるなか、「番狂わせ」「公立校が躍進」という言葉がたびたび人の口に上った。

 2007年の夏を制した「がばい旋風」の佐賀北を例に挙げるまでもなく、「強豪私立に立ち向かう普通の公立校」というのは、高校野球ファン、いや全国津々浦々の「おらが町のチーム」を応援する人々が好む図式。今夏出場の公立校では、2016年まで10年連続して三重大会で初戦負けだった白山が甲子園の土を踏み、大きな喝采を浴びた。そして、準優勝・金足農の熱闘への声援は社会現象となった。

 また一例ではあるが地方大会に目を向けると、新潟大会では新潟が日本文理を破る金星。北神奈川大会では相模原が東海大相模に8対9(サヨナラゲーム)と大善戦するとともに、創部43年目で初のベスト4進出を果たした白山が横浜商大高に1対2(サヨナラゲーム)と健闘。激戦区・神奈川の上位に立つ強豪私立を相手に見せた公立2校の戦いは、敗れたものの「これぞ高校野球」と印象深く刻まれた。

 それほど公立校という響きは、郷愁や判官贔屓をくすぐるのだ。

 なお、今夏の甲子園には金足農(秋田)、高岡商(富山)、白山(三重)、明石商(西兵庫)、丸亀城西(香川)、鳴門(徳島)、高知商(高知)、佐賀商(佐賀)と8つの公立校が出場している。

公立校受難の時代を経て……


 とはいえ、一概に公立校といってもタイプは様々。その歴史や現状を見ていこう。

 かつて大正、昭和の時代、特に1970年代くらいまでは公立校は弱い存在ではなかった。甲子園通算勝利数の上位20校を見ると県岐阜商(87勝)、松山商(80勝)、広島商(62勝)、高知商(61勝)、高松商(58勝)が名を連ねている。むしろ郷土の歴史を背負った古豪、名門、強豪と呼ばれる公立校が甲子園常連校として覇を競っていたのだ。

 やがてトレーニング設備の充実、練習時間を確保するカリキュラム、中学野球もつながってくる球児の進路事情などが重要視されるなか、部活動へ対しての自由度が高い私立高の方がアドバンテージを得るようになる。

 また、新設の私立高にとっては「甲子園出場」は大きな宣伝効果をもたらすため、野球部の活動に力を注ぐ高校も出てきた。実際、1980年代には創立数年で甲子園に登場し、名を売るというミッションを達成した後、野球部への後押しをやめて進学校へと転身した高校もあったくらいだ。

 そんな風潮のなか、時代は平成へと進む。強い公立校は徐々に姿を消し、ある意味、勝利ではなく健闘を期待される存在へとなっていったのだ。

甲子園に残された最大のドラマは公立校優勝


 ここで公立校のタイプを大きく分類してみる。まず、今夏で言えば高知商のように昭和の甲子園で実績を残し、今も地元では上位につける公立校がある。平成でも勝負強さを発揮している他の例を挙げると、全国で唯一私立高が甲子園に出場していない徳島の鳴門、徳島商などだ。

 次は公立校ではあるが、学校や自治体などの方針として野球部に力を入れ、強豪私立に負けない練習環境を備えている高校がある。明石商、静岡、市船橋などはそれに当たるだろう。

 最後は普通の公立高。今夏の白山の佇まいを見ればわかるとおり、小さな町の子が集まる高校だ。甲子園は夢物語と周囲が思うなか、時々、野球の神様は奇跡をもたらす。もちろん、そこには指導者や球児の情熱があってのこと。諦めぬ者にのみ道は開けるということか。

 そんな普通の公立校が甲子園に出るだけで、マニアではない「全国各地の普通の町の普通の人々」は我が子を見るような目で、我が町を誇るような気持ちで彼らを応援する。ただ、今となっては彼らが地域の強豪私立を破り、甲子園という大舞台を踏むだけで周囲からすると大満足、ということなのかもしれない。

 ならば、そこで奇跡がさらに続き、佐賀北のような頂点まで駆け抜ける快進撃が起こると全国が沸き立つのは自明の理だ。古式ゆかしき、という点では、今の甲子園に残された最大のドラマは公立校の優勝しかない。

 公立校を見ると面白い。エリート育成主義のプログラムが確立されるなか、それでもなお甲子園は全国各地の風土に根ざした、唯一無二の国民的スポーツであることがわかる。鞄も看板も資金力も最新のメソッドも我が手にはない……。日々の生活におけるいろんな苦難に歯をくいしばる皆が、スカッとした気持ちになって溜飲を下げる。その役目を担えるのは公立校なのだ。

 このように高校野球が移ろい、変わらぬものと、変わっていくものがあるなか、今、公立高にはある変化が訪れている。強豪私立のOBで指導者経験を積んだ人物が公立校の監督に就任し、レベルアップを図るケースが目につくようになった。少子化が進む状況で勉強もスポーツもできる中学生が学区一番校に集って歯応えのある野球を見せてようにもなった。また、公立校の監督の間では制限の多い部活動にへこたれず、自分たちなりの在り方、勝ち方を模索する動きが広まっている。

 ここから公立校の野球は次のステージに進む。公立校は熱い! そんな気持ちで101回目の夏まで地方大会と甲子園を眺めてみてはいかがだろうか。

文=山本貴政(やまもと・たかまさ)

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