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優勝も不祥事も屈辱の「胴上げジンクス」も。いろいろあった“埼玉西武”ライオンズ10年史

「『埼玉』西武ライオンズ」となって10年目の指揮をとる辻発彦監督

 「“埼玉西武”10周年アニバーサリーシリーズ」。こう銘打たれて行われたのが、5月19日(金)から21日(日)の埼玉西武ライオンズ対福岡ソフトバンクホークスの3連戦だった。

 パ・リーグ各球団が地名を球団名につけて「地域密着」「地元志向」を目指すなか、ようやく西武もフランチャイズ・所沢市のある「埼玉」を名乗るようになったのが2008年シーズン。あれから10年、埼玉西武には何が起きてきたのか。今一度振り返ってみよう。

2008年【順位】優勝&日本シリーズ制覇 【監督】渡辺久信


 “埼玉西武”元年は、さまざまな点において変化があった年だった。まずは監督に「ナベQ」こと渡辺久信が就任。また、「グッドウィルドーム」だった球場名も、命名権を契約していたグッドウィル社に不祥事が起きた影響で、1月9日から急遽「西武ドーム」へと切り替わった年でもあった。

 監督が代われば選手起用も変わるもの。この年、涌井秀章がはじめて開幕投手を務め(前年までは西口文也)、名実ともにライオンズのエースを襲名。入団5年目の中村剛也がはじめて規定打席に到達した。

 この「一新」感が功を奏したのか、ライオンズは開幕から快走。一度も首位を明け渡すことなく、4年ぶりのリーグ制覇。日本シリーズでも巨人を倒し、13回目の日本一を達成。“埼玉”元年を最高の形で締めくくった。

■タイトル獲得者
中村剛也:本塁打(46本塁打)/片岡易之(現登録名:治大=巨人、以下同):最多安打(167安打)、盗塁(50盗塁)/栗山巧:最多安打(167安打)/中島裕之(現登録名:宏之=オリックス、以下):最高出塁率(.410)

2009年【順位】4位 【監督】渡辺久信(2年目)


 前年の日本一から一転、Bクラスの4位と低迷。しかも、この年優勝した日本ハムに敵地・札幌ドームで延長12回サヨナラ負けを喫し、目の前で胴上げされるという屈辱つき。

 ただ、エース涌井が最多勝。また、打率以外の打撃部門(本塁打、打点、出塁率、盗塁)のタイトルはライオンズ勢が独占と、選手個人では気を吐いた格好だ。また、秋のドラフト会議では6球団競合の末、花巻東高校の菊池雄星を獲得。翌シーズンに向けての明るい話題を残した形となった。

【タイトル獲得者】涌井秀章:最多勝(16勝)/中村剛也:本塁打(48本塁打):打点(122打点)/中島裕之:最多安打(173安打):最高出塁率(.398)/片岡易之:盗塁(51盗塁)


2010年【順位】2位 【監督】渡辺久信(3年目)


 開幕早々、新外国人ディー・ブラウンがプロ野球通算9万号本塁打をマークしたこの年、ソフトバンクとの激しい首位争いを繰り広げた。最後までもつれにもつれ、結局、ゲーム差なし、わずか2厘差でのシーズン2位という成績。

 「クライマックスシリーズ(CS)で雪辱だ!」と選手もファンも誰もが思うなか、CS第1ステージで3位ロッテに足元をすくわれ、2連敗。下克上日本一を果たすロッテの引き立て役となってしまった。

 また、この年は大久保博元2軍打撃コーチによる、ルーキー・菊池雄星への暴力騒動が発生。大久保コーチはこの件で解雇。先日、この騒動に関して両者が歩み寄って涙ながらに和解(※裁判上ではなく、個別案件として)したことを大久保氏自身がテレビ番組で告白。ようやく、冷静に振り返ることができるエピソードとなった。

【タイトル獲得者】シコースキー:最優秀救援投手(33セーブ)/片岡易之:盗塁(59盗塁)


2011年監督【順位】3位 【監督】渡辺久信(4年目)


 前年の激しい首位争いとは一転、このシーズンは途中に最下位転落も経験するきびしい展開。優勝したソフトバンクには目の前で胴上げを許してしまった。それでも、夏場以降一気に成績を上げ、最後は4位・オリックスとゲーム差なし、たった“1毛差”で3位に滑りこみ、CS進出。

 この勢いに乗ってCS第1ステージでは2位・日本ハムを2連勝で破り、ファイナルステージへと進出。だが、ファイナルの舞台では1位・ソフトバンクに一矢も報いることができず、3連敗でシーズンを終えた。

 また、この年から導入されたのが曰くつきの「統一球」。各打者の成績が軒並み落ち込むなか、中村剛也がひとりでリーグの10%(48本塁打/454本塁打)にあたる本塁打を放ち、ケタ違いのホームランアーティストぶりを見せつけた。

【タイトル獲得者】中村剛也:本塁打(48本塁打):打点(116打点)/牧田和久:新人王(5勝7敗22セーブ)


2012年【順位】2位 【監督】渡辺久信(5年目)


 8月に一度は首位に立つものの、シーズン終盤、日本ハムとのつば迫り合いに敗れ、シーズン2位でフィニッシュ。CSでは3位ソフトバンクに1勝2敗で敗れ、ファイナルステージには進めなかった。

 なお、この年から中島裕之に代わって栗山巧がキャプテンに就任。オフにはその前キャプテン中島が海外FA権を行使し、オークランド・アスレチックスへと移籍。チームの主軸を失うこととなった。

【タイトル獲得者】中村剛也:本塁打(27本塁打)


2013年【順位】2位 【監督】渡辺久信(6年目)


 この年、涌井に代わって岸孝之が開幕投手を務め、打者ではいなくなった中島に代わって入団5年目の浅村栄斗がブレイク。史上最年少での100打点達成など、ケガで不在だった中村剛也に代わって4番も務める働きぶり。

 ただ、ペナントレースでは破竹の24連勝を成し遂げた田中将大(現ヤンキース)擁する楽天の後塵を拝し、2年連続の2位。しかも、西武ドームで優勝を決められ、またも目の前で胴上げを許す屈辱を味わうことに。CSでも楽天に勝つことができず、シーズン終了後、渡辺監督が辞意を表明。シニアディレクターへの就任を発表した。

 また、シーズンオフには涌井と片岡という投打の主軸がFAで移籍。大きな転換期を迎えた。

【タイトル獲得者】浅村栄斗:打点(110打点)


2014年【順位】5位 【監督】伊原春樹→田邊徳雄代行


 2003年以来の就任となった伊原春樹新監督のもと、新たな船出を迎えた埼玉西武ライオンズ。だが、4月には前身のクラウンライター時代(1978年以来)となる36年ぶりの「7カード連続負け越し」でスタートに大きくつまずいてしまう。

 5月にはエース・岸孝之がノーヒットノーランを達成するなど明るい話題も出始めたが、その後もなかなかチームの成績は上向かず、6月上旬に伊原監督が休養。田邊徳雄打撃コーチが急遽、代行監督に就任。それでも悪い流れは断ち切れず、5年ぶりのBクラスとなった。

【タイトル獲得者】岸孝之:勝率(.765)/中村剛也:本塁打(34本塁打)/メヒア:本塁打(34本塁打)
※同一球団で2人の本塁打王誕生は2リーグ制以降では初


2015年【順位】4位 【監督】田邊徳雄


 前年、代行監督だった田邊徳雄が正式に監督に就任。また、球場名を「西武プリンスドーム」に変更。開幕投手も岸から牧田和久に切り替えるなど、2008年以来の心機一転をはかったシーズンに。だが、なかなか浮上のキッカケをつかむことはできず、終わってみれば69勝69敗5分の勝率5割ジャストで4位。しかも、またしても優勝したソフトバンクに目の前で胴上げを許してしまう。

 そんななか、大きく名を上げたのが、シーズン歴代最多安打記録(216本)を放った秋山翔吾。また、パ・リーグ最多の72試合に登板し、40ホールドを記録した増田達至も注目を集めた。

【タイトル獲得者】増田達至:最優秀中継ぎ投手(42HP)/中村剛也:本塁打(37本塁打)、打点(124打点)/秋山翔吾:最多安打(216安打)


2016年【順位】4位 【監督】田邊徳雄(2年目)


 この年、開幕投手を務めたのが入団7年目の菊池雄星。そして、入団7年目にして初の2ケタ勝利(12勝7敗)を記録するなど、ようやくエースと呼べる存在にまで辿り着いた形だ。

 また、キャプテン・栗山がプロ15年目にして初めてオールスターゲームに出場(監督推薦)。球宴初打席初本塁打と結果を残した。

【タイトル獲得者】金子侑司:盗塁(53盗塁)


2017年【監督】辻発彦


 代行時代も含めると3年連続でBクラスという責任をとって田邊監督が退任。代わって新たに指揮を執ることになったのが辻発彦監督だ。

 前年の盗塁王・金子侑司、正捕手として期待された森友哉が開幕前のケガで離脱という苦しい台所事情のなか、ルーキー・源田壮亮、新キャプテン・浅村の活躍など、明るい兆しもなくはない。

 期待したいのはこの10年、毎年誰かが個人タイトルは獲得している、という「個の強さ」。一方で、“埼玉西武”になって以降、奇数年は「目の前で胴上げを許してきた」という気になるジンクスもある。果たして“埼玉西武”10年目はどんなシーズンとなるのか。

 8月25日(金)から27日(日)のオリックス戦も「“埼玉西武”10周年アニバーサリーシリーズ」として開催される予定だ。


文=オグマナオト

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