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千葉茂のカツレツカレー/3杯目

 おかげさまで3回(杯?)目を迎えたこの連載。野球界で「3」といえば、真っ先に浮かぶのは長嶋茂雄。だが、カレー界で「3」といえば、この伝説の男を外すわけにはいかない。

カツカレーを生み出した男、千葉茂

 長嶋茂雄の前に巨人軍の背番号「3」を背負い、“元祖・記録よりも記憶に残る男”と言われた名二塁手は、この世にもうひとつ、「カツカレー」も残してくれた。

 舞台は、銀座の洋食店「グリルスイス」。当時、巨人軍のユニフォームを仕立てていた「銀座テーラー」の側にあったことが縁で、試合の前後や練習の帰りに、青田昇、南村侑広ら巨人の選手がよく通っていたという。千葉もそんな常連客の一人で、カレーライスとカツレツが大好物だった。



 伝説が生まれたのは、1948(昭和23)年のとある巨人・阪神戦の前。お腹がすいていた千葉は、たくさん食べたい、でも試合前だから早く食べたいと、「カレーライスにカツレツを乗っけてくれ!」と頼んだのだ。

 今でこそ当たり前のこの「カツカレー」。当初はあまりにも奇抜なオーダーで店主も面食らったという。しかし、千葉があまりにおいしそうに食べる姿を見てメニューに加えたところ、たちまち人気商品となり、その後、あっと言う間に全国に普及したといわれる。なんだか巨人軍の人気の広がりとシンクロするようでもある。

 アメリカの「ベースボール」が日本的な進化を遂げて「野球」となったように、元々海外の食べ物だった「カレー」が日本人の好みにあわせて変化し、違う洋食の「カツレツ」と出合うことによって日本食としての「カレーライス」が完成した……そんなことまで考えてしまう。

 今でも「グリルスイス」に行けば、この「カツカレー」を食すことができる。初めて頼んだ人は、まずそのボリュームに驚かされるだろう。マウンドのように高く盛られたごはんの山の隣にカツレツの山。2つの山が出迎えてくれる。


 カツの衣はサクっと、でも中は肉厚ジューシー。そして、ごはんの上には溶岩のようなカレールーが。具の形状が完全に無くなるほど煮込んだルーは塩っ気が強く、夏場に嬉しいしっかりとした味わいが魅力だ。

 ちなみにこの店には、「千葉さんのカツカレー」と「元祖カツカレー」、2つのカツカレーが存在する。「千葉さんの〜」はスープ付きで1,365円、「元祖〜」はスープ付きで1,050円。その違いは肉の質。千葉さんのカツは上ロースで、元祖カツは肩ロース。先に「千葉さんのカツカレー」が生まれ、それを大衆化したものとして「元祖カツカレー」が生まれたという流れが面白い。なんだか、プロ野球人気の礎を築いた千葉と、その後を受けて大衆化に成功した長嶋茂雄、二人の野球人生の歩みのようでもある。




◎グリススイス「千葉さんのカツカレー」 1,365円(※スープ付き)
グリルスイス銀座本店

住所:東京都中央区銀座3-5-16
営業時間:11時〜20時(月曜のみ17時まで)、火曜定休


文=オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。また「幻冬舎WEBマガジン」で実況アナウンサーへのインタビュー企画を連載するなど、各種媒体にもインタビュー記事を寄稿している。ツイッター/@oguman1977

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