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オリックス・中島裕之、復活のカギは“ライト方向に滞空時間の長い打球”が打てるかどうか!

 『週刊野球太郎』の4月特集・出戻りメジャー選手のフォームを徹底分析する、このコーナーも最終回を迎えた。

 今回は低迷するオリックスの中でも、目立って調子が上がってこない中島裕之にクローズアップ。タイツ先生(「自然身体構造研究所」所長・吉澤雅之氏)が以前より提唱している、打者の分類方法に当てはめて、その打撃フォームを検証すると、中島が日本在籍時代からアメリカに渡って、どのような変化をしたか、より一層理解が深まるだろう。


軸の発生場所で、打者は3つに分類できる


 いきなりで恐縮ですが、私が以前から提唱している打者の分類法があります。「軸がどこで生まれるのか」によって、3つのタイプに分類できます。

1.後脚軸発生型
(後脚の延長線上近くに頭を置いた状態で回転する)

2.中心軸発生型
(身体の中心を軸に回旋してスイングする)

3.前脚軸発生型
(前脚を脱力させ、軸として体重を乗せる打法)

 2012年シーズンまで、西武在籍時の中島選手は、日本人選手に最も多いタイプである【中心軸発生型】の打撃フォームでした。身体の中心に頭を置いて回旋(スイング)することで、中心に軸が発生します。


 このタイプは、どちらかというとライナー性の当たりを生み出すことが多いです。球場の右中間や左中間の間を抜くような打球で、ホームラン打者特有の滞空時間の長い「アーチ状」の打球を打つことには適していません。日本在籍時の中島選手が、中距離打者だったことからも、【中心軸発生型】のタイプであるとわかるでしょう。

 ちなみにイチロー選手(マーリンズ)は、1〜3全てのタイプで打つことができる希少な選手です。身体の自由度が高く、使い方が上手いからこそできる技。私はイチロー選手を「軸に奥行きがある」と表現しています。

投球をギリギリまで近づける打法


 今季から日本球界に復帰した中島選手の打撃フォームは、【後脚軸発生型】に変化しているように見えます。この変化は、それまでのタイプ【中心軸発生型】のままだと、メジャー独特の“動くボール”に対応できなかったからだと推測できます。

 【後脚軸発生型】は後脚に軸が生まれる分、投手との距離を取ることが可能になり、ボールをギリギリまで引きつけて打つことができます。日本人投手と比べて、アメリカの投手たちは、ボールを動かして打者を打ち取るのが一般的。打者は、その動くボールを身体のギリギリまで引きつけて、対応しなければなりません。つまり中島選手は、トップから実際に身体を回転させるまでの時間を、短縮させる技術が必要だったといえます。中島選手はその必要性を感じて、【中心軸発生型】から【後脚軸発生型】の打撃フォームに、変化したのではないでしょうか。


滞空時間が長い打球が出てくれば……


 この【後脚軸発生型】のフォームは、後脚(軸足)の粘りが必要で、自然と打球に角度がつきます。極端に言うと、投球に対して差し込まれ気味でも、ボールを引きつけて後ろの手で押し込むことで、飛距離が出ます。

 この打ち方を自分のモノにできれば、逆方向(ライト方面)に滞空時間の長い打球を打つことができるはず。今シーズン、中島選手がライナー性の打球よりも、大きな弧を描く打球が飛ぶようになったら、この打法をモノにしたといえるのではないでしょうか。

一本歯の下駄を履いてもフルスイングできる!


 【後脚軸発生型】のフォームを、もう少し詳しく説明しましょう。

 ポイントは、後脚を軸に、頭の重さとバットの遠心力を利用して、スイングする点。さらに打つ瞬間は、軸足に力を入れて“蹴る”のではなく、脱力を利用してその反動で(極端に言えば)身体を宙に浮かせた状態で、軸足でバランスをとるのが、「軸足回転打法」です。


 このコツを掴めば、足元が不安定になる「一本歯の下駄」を履いても、これだけ力強い打球を打つことができるのです。さらに体幹を利用して、力強くバットを振ることが可能となり、打球をより遠くへ飛ばすことが可能になります。


 タイツ先生の動画解説はいかがだっただろうか。また、どこに軸をおいてスイングするか、という観点で打者のタイプを3つに分類すると、ミッドランドから帰ってきた中島裕之の打撃フォームの変化について、詳しく理解できただろう。

 現在、開幕前の予想に反して苦戦を強いられているオリックス。中島自身も不調だった上に、4月19日の試合で肉離れを発症し、現在は2軍に降格中。「痛い」ことには変わりがないが、いい意味でリフレッシュと、打撃フォームの調整ができることに期待したい。

 そして、晴れて1軍に復帰して以降、中島がガンガン打つようになるかどうかは、その“打球の行方”に注目してみよう。


■プロフィール
タイツ先生/1963年生まれ、栃木県出身。本名は吉澤雅之。小山高時代は広澤克実(元ヤクルトほか)の1学年下でプレーした。現在は「自然身体構造研究所」所長として、体の構造に基づいた動きの本質、効率的な力の伝え方を研究している。ツイッター:@taitsusensei では、野球、サッカー、バスケットボールなど国内外問わず、トッププロ選手たちの動きについて、つぶやいている。

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