今シーズンの西武は浅村栄斗(現楽天)、炭谷銀仁朗(現巨人)、菊池雄星(現マリナーズ)と主軸が相次いで移籍したこともあり、前評判は決して高くなかった。しかし、序盤こそ苦戦したものの後半戦は持ち前の強力打線を武器とし、パ・リーグ連覇を達成した。
そんな西武の今シーズンを中心とした、ここ数年の編成を本誌『野球太郎』の持木編集長とカバティ西山に話を聞きながら、「日本人選手獲得」「外国人選手獲得」「育成状況」のカテゴリーごとに採点してみた。
(※「日本人選手獲得」「外国人選手獲得」は2018年オフから2019年シーズンが対象)
西武は今シーズン開幕後の補強はなく、新戦力の日本人選手はドラフト会議で指名した10名(育成含む)と、FAで巨人へ移籍した炭谷銀仁朗の人的補償で加入した内海哲也、そして巨人を自由契約となった廖任磊の12名だった。
ドラフト組では1位指名の松本航がローテーションに入り7勝(4敗)。リーグ優勝に貢献した。しかし肺炎で出遅れたこともあり、投球回数は100回にも届かず85回1/3。防御率4.54もいまひとつ。強力打線に守られた感が強い。
ほかの選手たちも、ドラフト7位の佐藤龍世が52試合に出場したのが目立つだけ。全体的に今シーズンの戦力となったとはいいがたい。
また、内海は1軍登板がなく不完全燃焼。廖も3試合のみの登板に終わり貢献できなかった。
この結果に対してカバディ西山は「内海が入団した瞬間は盛り上がりましたけど、蓋を開けたら…。勝ち負けはさておき、先発ローテーションに入ってある程度、投球回数をこなしてくれる、と首脳陣も想定していたのに1軍登板なしは厳しいですね」と辛口評価。
持木編集長も「松本も本来はローテーションに入って回るべき存在だったのに、出遅れというのはちょっと物足りないですね。山野辺翔もセカンドのポジションを争うかと期待しましたけど、叶いませんでした」と同じく渋い表情。
結果的に優勝はしたものの、今シーズンの戦力上積みには至らなかったというのが、西武の日本人選手獲得に対する評価である。
■西武の日本人選手獲得/2018年ドラフト
1位:松本航(投手/日本体育大)
16試合/7勝4敗/85.1回/奪三振65/与四球46/防御率4.54
2位:渡邉勇太朗(投手/浦和学院高)
1軍出場なし
3位:山野辺翔(内野手/三菱自動車岡崎)
9試合/打率.071(14打数1安打)/0本塁打/1打点/1盗塁
4位:粟津凱士(投手/東日本国際大)
1試合/0勝0敗/2回/奪三振0/与四球1/防御率9.00
5位:牧野翔矢(捕手/遊学館高)
1軍出場なし
6位:森脇亮介(投手/セガサミー)
29試合/2勝1敗2H/31回/奪三振24/与四球20/防御率4.94
7位:佐藤龍世(内野手/富士大)
52試合/打率.220(59打数13安打)/2本塁打/7打点/0盗塁
育成1位:東野葵(日本経済大/投手)
1軍出場なし
育成2位:大窪士夢(北海高/投手)
1軍出場なし
育成3位:中熊大智(徳山大/捕手)
1軍出場なし
■西武の日本人選手獲得/その他
廖任磊(投手)※巨人を自由契約後獲得
3試合/0勝0敗/3回/奪三振4/与四球0/防御率3.00
内海哲也(投手)※炭谷銀仁朗の人的補償
1軍出場なし
今シーズン、西武の外国人選手はメヒア、マーティン、ヒース、カスティーヨの4人が残留。新外国人選手はニールひとりだけだった。
そのニールは規定投球回数には到達していないものの、17試合に先発し12勝1敗という好成績を残した。11連勝でシーズンを終えており、投手陣に苦しんだ西武において唯一の“オアシス”。まさにエースの働きをみせてくれた。“1分の1の大当たり”で満点の補強だったと言える。
カバディ西山は「100点というより150点をあげてもいいのでは(笑)」と満点の回答。持木編集長は「打線の強い西武は、外国人野手を補強しなくてもいい、というアドバンテージがあるのは大きいですよね。まさに“一発一中”でした」と、ニールの成功を、外国人野手の補強をしなくてもいい状況を作ってきた編成、育成による賜物だと述べた。
多くの場合、外国人選手は野手と投手の両軸で探すことになる。しかし、現在の西武は日本人選手で強力打線を組むことが可能。実績のあるメヒアでさえ完全なレギュラーではなく、相手先発投手の左右によって下位打線にようやく名を連ねる。
このように外国人野手に頼らなくていい状況をここ数年で作り上げたのである。つまり、昨シーズンのオフに関しては、新外国人選手は投手に集中できる環境だったわけだ。そのなかでニールを獲得したのは編成的に満点と言っていいだろう。
■西武の新外国人選手
ニール(投手)
17試合/12勝1敗/100.1回/奪三振51/与四球15/防御率2.87
今シーズン、頭角を現してきた選手は投手だと平良海馬が筆頭格だろう。高卒2年目の平良はストレートで押し込む強気の投球スタイルで、シーズン終盤には重要な場面を任されたほど。来シーズンもセットアッパー的な役割で起用されることだろう。
持木編集長は「?橋光成、今井達也といった若い投手たちも、なんとかローテーションを守ったので育ってきたと言っていいでしょうね。ここ数年の育成実績を見ると、時間は少しかかりましたが、菊池雄星(現マリナーズ)もしっかりと育てましたしと甲子園優勝投手の名前を挙げた。
一方の野手は今シーズンから目立って活躍した選手はいなかった。とはいえ、今の山賊打線は、ここ数年でドラフト指名した選手たちを鍛えて作り上げたもの。
“ここ数年”という単位で見れば、育成状況は悪くない。
ただ、山賊打線を作り上げたとはいえ、次の野手たちを育成できなければ常勝軍団を築き上げることは難しい。来シーズン以降、どのような育成を見せるのか注目したい。
(※成績は2019年シーズン終了時点のもの)
文=勝田聡(かつた・さとし)