プロ野球界に数多くある格差の中で、最もメジャーかつ誰もが内心感じているものといえば、田中将大(ヤンキース)と斎藤佑樹(日本ハム)の格差だ。
このくっきりと明暗が分かれた2人。もはや、この2人を比較することは野暮かも知れないが、改めて2人の現在地とここまでに生じた格差を確認してみたい。
田中と斎藤といえば、2006年夏の甲子園決勝の死闘が有名。“ハンカチ王子”として大ブレイクを果たした新進気鋭の斎藤と、実力十分で「世代最強エース」と呼ばれた田中。
2人は決勝で引き分け再試合を含む、壮絶な投げ合いを繰り広げ、決勝戦2試合の視聴率は29.1%&23.8%。瞬間最高視聴率は37.1%を記録した。
昨夏はオコエ瑠偉(楽天)、清宮幸太郎(早稲田実)のブレイクもあったが、当時の注目度はさらに上。
2人の人気関係を忌憚なくいえば、容姿端麗で“王子”と称された斎藤が一歩リード。対する田中はお世辞にも王子とは呼べないゴリマッチョ系で、人気は自称野球通や北海道民に集中。大スターの斎藤に対し、どこかヒール的なポジションであった感は否めない。
当時は「草食系男子」なるものが流行っていたことも一因として挙げられる。
そして、斎藤が田中を三振に切って取り、悲願の全国制覇を成し遂げるのだった。その後、田中は楽天で1年目から活躍。斎藤は早稲田大に進学し、ここまでもまた「佑ちゃんフィーバー」を巻き起こした。
あの甲子園から4年後の2010年。2006年のドラフトで楽天、オリックス、日本ハム、横浜の4球団が競合した田中に対し、斎藤も日本ハム、ヤクルト、ロッテ、ソフトバンクの4球団が競合。
競合数ではまったく互角で2人はプロ野球という同じフィールドに立った。
しかし、現在の立ち位置は極めて明確に分かれている。
日本球界のエースの座をつかみ取り、最高峰のメジャーに挑む田中。対する斎藤は「今季こそ1軍定着を」と毎年言われる存在だ。
2人のこれまでの成績を比較してみよう。
田中将大
【NPB】175試合 99勝35敗3S 防2.30
【MLB】 44試合 25勝12敗 防3.16
斎藤佑樹
【NPB】 57試合 14勝19敗 防3.97
日米通算124勝の田中に対し、斎藤はいまだ14勝。≪約9倍≫もの差がついている。同じ舞台に立った2011年からだとしても、田中は78勝。実にかけ離れた勝利数になっている。
当然、年俸も当然段違い。(どちらも推定)
田中将大:2200万ドル
(約26億円、1月24日時点のレートで換算)
斎藤佑樹:2300万円
なんとその差は≪約113倍≫。かつてドキュメンタリー番組内で「カイエン(ポルシェ)乗りてぇ」「青山に土地買うってやばいっすか?」と語り、最後に「ビッグになろう…」と呟いた斎藤だが、田中ならば朝飯前レベル。
生涯年収の差も顕著で、契約金も含めて合計で2億3100万円の斎藤に対して、田中はここまでで約65億7000万円。その差は≪約84倍≫。田中は2020年までの長期契約も残し、それを加算すると193億7000万円になる。
しかし、斎藤も数字の上で負けていない点がある。それが1勝あたりの単価。1勝あたり約1650万円の斎藤に対し、田中は約5300万円。コストパフォーマンスは優秀といえるのかも知れない…?
また、数字以外の部分ではタレントの里田まいと結婚した田中に対して斎藤はいまだ独身だ。
献身的な料理やスタジアムでの応援で好感度の高い良妻・里田。今年2月には第1子も誕生予定だ。誰もがうらやむ理想の家庭を作り上げている。
しかし、斎藤はまだ理想の伴侶には出会えていない。その上、2011年にはベッドで眠る斎藤の写真が週刊誌に載り、スキャンダラスな事態になるなど、“女運”でも差があるように感じられる。
……と、両者を比較するとなかなか斎藤に申し訳ない記事になったが、斎藤も田中もまだ28歳。栄光から10年が経った今も斎藤の飛翔を信じる者は多い。伸びしろでは明らかに斎藤が優位だ。
ここから晩成型の伸びを見せ、斎藤は田中に追いつけるのか。ケガでやや停滞する田中との差を詰めるにはチャンスの1年になりそうだ。
文=落合初春(おちあい・もとはる)