2015年が終わろうとしている。振り返れば、今季のプロ野球も数多くの話題を提供してくれた。
パ・リーグではソフトバンクが圧倒的な力でリーグ優勝。CSも危なげなく勝ち上がって、日本一の座に就いた。
一方のセ・リーグでは、やはり14年ぶりにリーグ制覇したヤクルトを抜きに語れない。好成績の波に乗り、観客動員も絶好調だったスワローズ。前年のホーム試合平均動員数の19,983人から、今年は23,021人と、1試合あたり約3000人ほど動員数が伸びるほどの大盛況だった。
観客が増えれば、何かと問題が増えるは必然。人気の影で、神宮球場ではひとつの問題が生じていたのはご存知だろうか?
その問題とは、外野自由席における観客のマナーである。
実はこの話は、今季に始まったことではなく、以前からファンの間では物議を醸していた。特に問題視されていたのが、過剰席取り問題だ。
一部のファンが、1人で10席近くを確保、団体で占拠するなどし、平等に席が与えられない状況が多発していた。これは由々しき事態と考える。
この事態を一般のファンはどう思っていたのか。今シーズン中、神宮球場に観戦しに来ていたファンに話を聞くことに成功した。その一部を紹介しよう(聞き取り場所・三塁側外野自由席・内野指定席)。
「常識の範囲内での席取りはアリだと思う。例えば、開始前に間に合わない友人のために取ってまってあげるとか。来るか来ないかわからない人の席まで取っておくのはどうかと思う」
「モラルが守れないのなら、ハマスタ(横浜スタジアム)みたいに全席指定にしたほうがいいかもしれない」
「前日から並んでいたり、その待ち時間を考えれば、いい席を取って然るべきだけど、人数分にしてほしい」
と、人数分の席とり自体は容認ながら過剰な確保には否定的な意見が目立つ。横浜スタジアム等はファンの過度な席取りを重要視して、現在の全席指定に変わった経緯がある。
では、なぜここまでモラルに反した席取りが横行してしまったのだろうか? あるファンはこう分析していた。
「昔は空いていたから、 1人で何席も使えていた。その名残ではないだろうか?」
「以前から神宮球場に足を運んでいた人間からすれば、当たり前のことなんだと思う。ただし、今の混雑状況でも(席取りを)やってしまうのは、『自分たちは昔から来てる常連なんだから特別』という思い上がりなのでは? それと観客が増えたぶん、周りを考えられない人も増えたのではないだろうか」
確かに、5年ほど前の神宮球場は空いていてスペースの確保も容易ではあった。しかし、今は違う。野球がテレビから現地で見る時代になったなか、新しいファンも増えてきている。その中で、昔から来ているから特別などという理由は通用しない。
状況が変わった今、ファン1人1人が考えて行動すべきだろう。そして球場側も、ルールを細分化してファンに示すなど、分かりやすい、みんなが平等に観戦できるように環境を整備すべきである。
本来野球は、子どもから大人までが楽しめる素晴らしい娯楽なのだ。一部のファンの行動で野球というスポーツをおとしめることは避けたい。
来季以降も引き続き、ファンのモラル、球団の対応が問われる。
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)