糸井嘉男、T−岡田ら外野陣に割って入るレギュラー候補としてオリックスが獲得したのは大学日本代表の4番打者。ここ一番の勝負強さは折り紙つきの長距離砲は、ライバルたちに刺激されながら才能を伸ばした。
第1回「オリックスが獲得を決めた瞬間」
第2回「向上した守備」
今回のドラフトでは、大学日本代表で同じ釜の飯を食べ、尊敬し合い、刺激を受け合った選手の多くがプロ志望届を提出し、運命の瞬間を迎えた。
だが当然ながら、その結果は大きく明暗を分けた。
特に、野球に懸けるその姿勢に感銘を受けていた畔上の指名漏れには「ショックでした。あんなに努力していたのに…。苦しく、悲しい気持ちです」と心を痛めており、「畔上と茂木の存在が大きかったので、2人にはすぐ“ありがとう”と言いました。茂木もあの順位には納得してないと思うので、ドラフトは厳しいなとあらためて思いました」と話し、再び同じ舞台で戦うことを誓い合った。
だからこそ、最高評価を得てプロの世界に飛び込む吉田の決意は強い。1年目の目標を尋ねると、まずは「プロの世界に慣れたい」と殊勝に話した。
それは一方で、慣れて手応えや課題をつかみさえすれば勝負できる、という自信の表れのようにも聞こえた。
周囲の人物やできごとから、様々な刺激を受け、それを自らの野球道に、柔軟に注ぎ込める寛容さもある吉田。
その道の先にはどんな栄光が待っているのか。プロでのさらなる活躍に期待したい。
吉田と同じオリックスの10位指名では、青山学院大の2年先輩で、ともにクリーンアップを組んだ杉本裕太郎外野手(JR西日本)が指名された。
ドラフト前に「正尚は、寮ではよく自分の部屋に遊びにきたり、タメ口で喋ってきたり、とても人懐っこくて可愛いやつでした」と杉本が言えば、吉田も「裕太郎さんは誰にでも優しくて、みんなに好かれていました。また一緒にやりたいですね」と話していた。
吉田は、ドラフト会議後にさっそく杉本と連絡を取り合い、「(同じ外野手として)ライバルにもなるけど、また一緒に頑張れたらいいな」と声をかけてもらったという。
大学時代は3本のアベック本塁打を放っている吉田と杉本。長打力あふれる打撃がウリの2人が、2003年5月22日(対専修大1回戦)以来となる4本目のアベック本塁打をプロの世界でも目指す。
(※本稿は2015年9月発売『野球太郎No.017 2015ドラフト総決算&2016大展望号」に掲載された「32選手の野球人生ドキュメント 野球太郎ストーリーズ』から、ライター・高木遊氏が執筆した記事をリライト、転載したものです。)