プロ野球の世界では35歳を過ぎたあたりからベテランと呼ばれるようになる。それが40歳を超えると大ベテランとなり、現役で戦う選手もぐっと少なくなる。
2020年シーズンは「松坂世代」(1980年4月2日〜1981年4月1日生まれ)が40歳を迎え、大ベテランの域に達するわけだ。ちなみに松坂世代は松坂大輔(西武)、和田毅(ソフトバンク)、渡辺直人(楽天)、久保裕也(楽天)、藤川球児(阪神)と残り5人となっている。
その松坂世代より年齢が上にも関わらず、同じく5人が現役でプレーしている世代がある。松坂世代の一学年上にあたる1979年生まれ世代(1979年4月2日〜1980年4月1日生まれ)だ。
1979年生まれ世代。この世代はサッカー界に有力選手が多いことでも知られている。小笠原満男、高原直泰、本山雅志、中田浩二、稲本潤一、小野伸二…と名前を挙げればきりがない。
気を取り直してプロ野球界を見ると、現役選手は能見篤史(阪神)、五十嵐亮太(ヤクルト)、石原慶幸(広島)、細川亨(ロッテ)、石川雅規(ヤクルト)の5人となる。この年齢まで現役を続けているだけあり、さすがに実績ある選手が揃っている。また、全員がバッテリーというのも興味深い。
この世代が高校生時代には、松坂のような突出した存在がいなかった。
高校3年時にあたる1997年夏の甲子園の優勝校は智辯和歌山。主将はその年のドラフト会議で阪神に1位で指名されることになる中谷仁だった。チームメイトには近鉄に7位で指名された高塚伸幸や、慶應義塾大からロッテに進んだ喜多隆志がいる。
しかし智辯和歌山の面々よりも当時、知名度が高かったのは決勝の相手だった平安(現・龍谷大平安)のエース・川口知哉だ。左の剛腕は同年のドラフト会議で4球団競合の末、オリックスに入団。しかし、話題になるのはほとんどビッグマウスで、結局1軍で結果を残すには至らなかった。
その他にはNPB復帰を目指しているとされる井川慶も同世代。甲子園出場こそなかったが、評価は高くドラフト2位で阪神入り。その後は20勝を挙げるエースとなり、MLBへも移籍。この世代で成功した投手の一人だろう。
現在、現役で戦っている5人のなかで能見、五十嵐、石川の投手3人は今でも主力の働きを見せている。能見は先発から中継ぎへと持ち場を変えたが、昨シーズンはプロ入り後最多となる51試合に登板。強力な中継ぎ陣を支えた。
昨シーズンから古巣に戻った五十嵐は45試合で防御率2.98と成果を出した。日米通算905登板となっており、節目となる1000登板まであと95試合に迫っている。その目標も現実的なものとなりつつある。
ちなみに能見と五十嵐は1979年5月28日生まれで生年月日も同じである。
一方の石川は先発ローテーションの一角を担っている。規定投球回にこそ届かなかったものの、チームトップとなる8勝をマークし健在ぶりを見せた。また、ここまで積み上げた白星の数「171」は現役最多。200勝まで残り29勝だ。
石原と細川は正捕手という扱いではない。しかし、シーズンを通して2軍暮らしというわけではない。石原はジョンソンの主戦捕手として絶大な信頼を得ており、チームに欠かせない存在だ。細川も大部分は1軍で過ごし、31試合に出場。若い捕手たちを支える役割を果たしている。
松坂世代のように大スターは生まれなかった。サッカー界のほうが有名な選手は多いかもしれない。しかし、それでも諦めることなくプレーを続けてきた選手たちが現役でプレーを続けている。
松坂世代の1学年上。そんな1979年生まれ世代に注目したい。
文=勝田聡(かつた・さとし)