各球団が「地域密着」を打ち出して久しいプロ野球。そんな中で、ファンの心をくすぐるのは、球団と同じ地域で生まれ育った「地元出身選手」の存在だ。
他の地域からやってきた選手が活躍するのも、もちろん嬉しい。だが地元出身の選手が活躍するのは、縁を感じる事ができたり、誇らしい気持ちになるので、思い入れという面で一味違うものがある。
そこで今回は、今季の活躍に一層期待したいご当地選手を4人紹介しよう。
本拠地こそ仙台にある楽天だが、球団名は「東北」から始まるため、岩手も地元地域の一つに数えられる。その岩手の北東部にある人口3000人弱の村で育ち、2009年の高校生ドラフト3巡目で獲得されたのが銀次だ。
入団時は背番号が「67」と大きかったため、球団の期待をあまり感じなかったが、順調に成長し、2013年の日本一のコアメンバーになったことで人気爆発。日本代表にまで登り詰めるなど、今や「東北の誇り」というべき存在になった。
松戸シニアで野球を始めた涌井は、横浜高から西武を経て、2013年のオフに地元球団であるロッテに移籍。ただ、一度はプロ野球界で頂点を極めた投手だったが、この移籍は「凱旋」とはならなかった。
なぜなら、西武で先発失格の烙印を押され、中継ぎや抑えに配置転換されていたからだ。しかし涌井はあくまでも先発にこだわり、FA宣言をして、自身の希望を叶えてくれるチームを探した。その時に、手を差し伸べてくれたのがロッテであり、涌井が西武入団時の監督でもあった伊東勤監督だったのである。
中日のお膝元である愛知県名古屋市。そこで生まれ育った大島にとって、中日は幼い頃からの憧れの球団だった。そんな愛しの球団から声がかかったのは、大学を経て入った社会人2年目の2009年。大島が25歳の時だった。
ただ、結婚もして子どもも生まれていたため、そこからの挑戦は「ギャンブル」とも呼べる状況。そんな中、家族に背中を押されて入団した大島は、入団会見で「できるだけ早くレギュラーを獲りたい」と抱負を口にした。1年目から104試合に出場し、3年目以降はほぼフル出場。もはやレギュラーを飛び越えて、チームの顔役になったと言っても過言ではないだろう。
広島の広陵高に進学し甲子園で活躍。明治大を経て、鳴り物入りで広島に帰ってきた野村。出身地こそ隣の岡山だが、広島との縁の深さを考えると、地元選手と言っても差し支えないだろう。
しかし肝心の成績はというと、2年目をピークに右肩下がりで、昨季はプロ入りワーストの5勝に留まった。お世辞にも、カープファンの期待に応えているとは言いがたい。
地元出身選手は、他にもたくさん存在する。しかしこの4人ほど、所属チームの浮沈のカギを握っている地元出身の選手はいないだろう。
もちろん彼らの頑張りだけで勝ち抜けるほど、シーズンは甘くはない。しかし彼らが動くことで、ファンが呼応し他の選手も続く。そしてそれは、いつしか大きな力になる。
目には見えないが、確実にそこにあるもの。今年のプロ野球は、郷土の誇りに注目したい。
文=森田真悟(もりた・しんご)