2020年の東京五輪のメインスタジアムである新国立競技場。当初案の約2520億円もの建設費が問題視され、すったもんだの末に計画変更。最終的に総工費1490億円程度の案に収まった。
しかし、この1490億円という膨大な支出にも市井ではやや不満の声も上がっている。
そこで今回、『野球太郎』編集部では12球団本拠地の建設費を調べてみた。
福岡ヤフオク!ドーム
約760億円(1993年開場)
京セラドーム大阪
約498億円(1997年開場)
札幌ドーム
約422億円(2001年開場)
ナゴヤドーム
約405億円(1997年開場)
東京ドーム
約350億円(1988年開場)
1位〜5位までを並べるとやはり、建設費ではドーム型球場が圧倒的だ。
特にヤフオクドームは1991年の着工だけあって、バブリーな金額。1980年代前半からはじまった「シーサイドももち」の埋め立てウォーターフロント計画の一環で建設された。
しかし、バブル崩壊後、ダイエーは経営不振に陥り、結局2003年に米の投資会社コロニー・キャピタルに売却。2007年にシンガポール政府系の投資会社に所有が移ったあと、2012年にソフトバンクが約860億円で取得。現在は福岡ソフトバンクホークス株式会社の所有となっている。
1997年に開場した京セラドームも単独での経営は苦しかった。大阪市主体の第三セクター・大阪シティドームによって建設&運営されたが、その後、大阪シティドームは経営難に。一時は大規模な売却騒動に発展したが、オリックスが助け舟を出し、安定期になっている。当然、オリックスの“脱神戸”はこのあたりの事情も関係しているだろう。
設備のコストパフォーマンスでいえば、札幌ドームが秀逸に映る。サッカーとの兼用で、野球バージョンとサッカーバージョンの2通りのフォルムチェンジが全自動で行われ、さらにはサッカー場は天然芝を野外で養生し、試合時にはピッチごと内部に移動する超技術だ。
QVCマリンフィールド
約133億円(1990年開場)
MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島
約90億円(2009年開場)
横浜スタジアム
約49億円(1978年開場)
新国立競技場やドーム球場に比べて、やはり開放型球場は安いと感じてしまう。(ひとりが一生で稼げる金額とは程遠いが…)
QVCマリンはバブル時代の費用ではあるが、目を惹くのはマツダスタジアムの安さ。約90億円という低予算で、一時は旧広島市民球場の焼き直しともウワサされたが、結果的に素晴らしい設備を持つボールパークが誕生した。やればできるのだ。
ちなみに脆弱な球場からの改修のため、総工費の算出は難しいものの、楽天、西武の本拠地2球場の改修費は……
楽天koboスタジアム宮城
約107億円(2005年からの改修費)
西武プリンスドーム
約100億円(ドーム化費用:1999年完全ドーム化)
その他もろもろの改修もあり、コボスタ宮城に関しては新築の方が安かったのでは…と思ってしまう。
阪神甲子園球場
約250万円(1924年開場)
明治神宮野球場
約53万円(1926年開場)
球界を代表するレジェンド2球場の建設費はこれだ…!
お察しの通り、大正時代に建てられた2球場は物価が現在とはまったく違うため、超破格。数字だけ見ると神宮球場は下手な中古車よりも安いのだ。
しかし、気になるのは「今のお値段でいうと…」というところ。よく言われているのが、「戦前期の物価は現在の2000分の1」。それに当てはめると甲子園は約50億円。神宮球場は約10.6億円。
大正末期でさらなるレートの上乗せがあるとしても格安感がある。
ちなみに神宮球場の建設にあたっては東京六大学野球連盟が5万円を寄付。それゆえ、90年経った今も神宮球場は“学生野球優先”の義を守っている。
文=落合初春(おちあい・もとはる)